芳根京子さん(28)「髙橋海人くんは“型破り”で面白い」撮影中一番笑った瞬間【映画『君の顔では泣けない』インタビュー】

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「もし、自分の人生を“誰か”が歩んでいたとしたら?」

映画『君の顔では泣けない』は、“入れ替わったまま戻れない”という大胆な設定のもと、15年間、お互いの人生を生きることになった男女の姿を丁寧に描いています。「この人生は、誰のもの?」という問いかけが、静かに心に響いてくる物語。

主演を務めた芳根京子さんに、繊細な役作りの背景、髙橋海人さんとの印象的な共演エピソード、そしてご自身の人生が大きく動き出した“あの夜”について、お話をうかがいました。

Profile

1997年東京都生まれ。2013年に女優デビュー。NHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロインを務め、一躍注目を集める。繊細な感情表現と柔らかな存在感を武器に、映画『累』『散り椿』では日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。YouTubeチャンネル「芳根京子の〈生〉旅」では、飾らない素顔やライフスタイルも発信中。話題作への出演が続く、注目の実力派女優。

“入れ替わり”と聞いて想像していた展開を、いい意味で裏切られました

――映画『君の顔では泣けない』は、中身が入れ替わったまま戻れない男女の15年を描く物語ですが、芳根さんが最初に台本を読んだとき、この設定についてどう感じましたか?

思わず「そう来たか!」って声が出そうになりました。“入れ替わり”と聞くと、「こうなるのかな」「ああなるのかな」っていろいろ想像しますよね。でもこの作品は、それをいい意味で裏切ってくれたんです。

たとえば、入れ替わりって“元に戻ること”がゴールになることが多いと思うんです。けれど今回は、「15年も経てば、戻らないという選択肢もある」と気づかされて、すごくハッとしました。リアルさのある地に足のついたファンタジー。「もしかしたら、こんな人たちが本当にいるかもしれない」と思ってもらえたら嬉しいです。

――芳根さんが演じるのは、外見は“まなみ”だけれど、中身は陸という男性。非常に繊細な役どころでしたが、所作や内面の演じ分けなど、役作りで意識されたと思います。

今回、「私は陸と向き合えばいいんだ」と早い段階で気づくことができて、すごく気持ちが軽くなりました。

“男性”というより、“ひとりの人間”として陸をどう生きるかを考えることで、自然と役に入り込めた気がします。リハーサルではキャストの皆さんとたくさん話し合えたことで、「ああ、そうだよね」と腑に落ちる瞬間も多くありました。

所作や仕草は、内面の延長線上に自然と表れるものだと思っているので、だからこそ外側よりも“どこまで内側を詰められるか”を大切にして演じました。

髙橋くんの“動物的な感覚”にすごく助けられました

――入れ替わった設定で髙橋さんと、まるで会話劇のような喫茶店のシーンは印象的でした。初共演となった髙橋さんとのやりとりの中で、印象に残っていることはありましたか?

そうですね…。とにかくワンシーンの尺が長くて、ほとんどが二人だけの会話でした。だからこそ、この空間をどう魅力的に見せるか、リハーサルを重ねながら現場でもたくさん試行錯誤しました。

最終的には、髙橋くんの“動物的”な感覚にすごく助けられました。何が返ってくるかわからないからこそ、やり取りにハッとさせられる瞬間があって、それがとても面白かったです。「彼の投げる球を全部受け止めたい、ちゃんと返したい」──そんな気持ちで臨めた現場で、改めて「お芝居って楽しい」と感じられた時間でした。

――髙橋海人さんとのお話は、すでに多く語られていると思いますが、まだあまり話していない“マル秘エピソード”があれば教えてください。

今年のはじめ、たまたま同じスタジオで別の撮影をしていて、偶然バッタリ会ったんです。その瞬間、髙橋くんが私の顔を見て「…あ、もう一人の俺だ」って言ってくれたんです(笑)。

思わず「ちょっと!違うから!目を覚まして!」って返しました。それくらい、彼にとってもこの作品が大きな存在だったんだなと感じて、すごく嬉しかったです。でも、もう私たちはそれぞれの人生を歩んでます(笑)。

――現場での髙橋さんの印象はどうでしたか?

いい意味で、“型破りな面白さ”を持っていると感じました。車の中のシーンでは、「名言っぽいことを言うゲーム」とか、「会話が成立してる風に見せかけるごっこ」とか…もう支離滅裂なんですけど、それがものすごく面白くて。真顔で全力でおかしなことを言う彼を見て、「こんな一面もあるんだ!」と驚かされました。あの瞬間が、撮影期間中でよく笑った時間だったと思います。

テレビで見ていたときは、なんでもそつなくこなす多才な方という印象だったんですが、現場では「どうしよう…」と悩んでいる姿を目にすることもありました。。お互い、弱い部分も見せられるような関係になれたからこそ、ああいう空気が生まれたのかなと思います。まなみと陸の関係そのもののようで、一緒にお芝居していて本当に楽しかったです。

朝ドラのヒロインに決まったことは、サプライズで知ったんです

――まなみは、15歳から30歳までの15年間で、進路の決断、結婚、出産など、人生のさまざまな転機を経験します。芳根さんご自身も、演じながら共感した「転機」はありましたか?

はい。私自身にとって一番の転機は、やっぱりこの世界(芸能界)に入ったことです。そして、その中でも「人生が本当に変わる」と実感したのは、朝ドラのヒロインが決まった日の夜でした。

実はその発表、サプライズだったんです。スタッフさんに突然「ヒロインです」と伝えられて、すぐに「明日会見だから衣装合わせしてね」と、バタバタと準備が始まりました。

ホテルの部屋に戻ったときに、それまでずっと厳しくしてくれていたマネージャーさんが、そっと手を差し出して握手してくださったんです。その瞬間、「ああ、本当に人生が動き出すんだな」と強く感じました。

―まさに、あの日から人生が動き出したんですね。

もちろん、朝ドラのヒロインを務めたからといって、それだけでこの世界で生きていけるわけではないと思います。けれど、あの夜は間違いなく、私にとって今の人生のスタートラインだったと思っています。

あの時感じた高揚と戸惑い、すべてが今も心の中に残っています。その気持ちを大切にしながら、これからも前を向いて進んでいきたいです。

この作品を通して、“今の自分の人生をもっと大切にしよう”と思えました

――入れ替わりの“その後”を描いた今作は、観る人それぞれの「自分らしさ」や「人生の選び方」に問いかけてくるような作品だと思います。芳根さんがこの物語を通して伝えたいことは何ですか?

『君の顔では泣けない』は、“入れ替わったまま戻らない”二人の15年を描いた、ある意味少し攻めた作品だと思います。「自分をどう受け止めるか」「相手をどう受け入れるか」─そんなテーマが、しっかりと描かれている物語です。

この物語が成り立っているのは、やっぱり“思いやりのある二人”だったからこそだと思っっています。私自身もこの作品を通して、「今の自分の人生をもっと大切にしよう」と思えました。後悔のないように、ちゃんと“今”を生きたい─そんな気持ちにさせてくれる映画です。

観る人の視点によって感じ方が大きく変わる作品なので、いろんな声を聞けたら嬉しいです。それぞれの人生に、そっと寄り添える物語になっていたらいいなと思っています。

Information

映画『君の顔では泣けない』(11月14日公開)

芳根京子と髙橋海人が初共演。君嶋彼方の話題小説を映画化。高校時代に起きた“入れ替わり”のまま、15年。初恋、就職、結婚、そして親との別れ—互いの人生を生きてきた二人が、「この人生は誰のものなのか?」と手放したくないものとの間で葛藤しながら、30歳の夏に選ぶ未来とは。

衣装協力
シャツ¥77,000スカート¥99,000(ともに3.1 Phillip Lim) リング¥30,600 イヤカフ¥30,600(ともにBONEE) 靴/スタイリスト私物

【SHOPLIST】
EDSTRÖM OFFICE 03-6427-5901

撮影/You Ishii ヘアメーク/猪股真衣子(TRON)スタイリスト/杉本学子(WHITNEY) 取材/池田鉄平 編集/越知恭子