松雪泰子さん(53)、40代後半から身体の取り扱いに工夫が必要に「若さと体力でカバーできなくなって」

ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍する松雪泰子さんが、岩松了さん作・演出の舞台『危険なワルツ』に出演します。美しい妻(松雪さん)と嫉妬深い夫(岩松さん)の前に若い男(坂東龍汰さん)が現れたことから、3人の危険な関係が動き出す……というスリリングな新作です。透明感あふれる松雪さんに、詩情漂う岩松作品の魅力や普段の生活で大切にしていることなどを伺いました。

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松雪泰子さん、嫉妬心はもうない「気持ちがぐちゃぐちゃするくらいなら、楽しいことをやっていたくて」

演出家若松さんの稽古場は、演じるということに純粋に迷いなく向き合える現場

――『シダの群れ 純情巡礼編』(2012年)、『そして春になった』(2020年)、『カモメよ、そこから銀座は見えるか?』(2023年)に続いて、今回出演される『危険なワルツ』が4本目の岩松作品となる松雪さん。岩松さんの稽古場は、やはり他の演出家とはだいぶ違いますか?

圧倒的に違います。“岩松組”の先輩俳優さんと、よく話をするんですけれども、岩松さんとお稽古をしていると、セリフの言葉自体にももちろん意味はあるんだけれども、そこが大きな問題ではないんだなと、すごく感じるんです。それよりも、「その背景にある何を捉えていくべきか」ということや「関係性の中で、時間と空気をどう捻らせていくか」といったところのディティールを見ていらっしゃるんだなと。そういったことをセリフとともにやらせてもらえる稽古場はとても贅沢で、構築しがいがあります。もちろんその分、厳しくもあり、高度なことを求められますが、演じるということに純粋に迷いなく向き合える現場だなと、いつも感じます。

――松雪さんの場合は、そんな岩松さんのお芝居と対極にあるような、ケレンミたっぷりの劇団☆新感線の作品にも何本も出ていらっしゃいますね。そういう俳優さんは、他にはあまりいないのでは?

言われてみれば、そうかもしれません(笑)。とはいえ、どんなお芝居をする時も自分のベースにあるものは同じなんです。ただ、たとえば劇団☆新感線のお芝居の時は“開く”ような状態になりますし、お芝居のテイストや演出家さんのスタイルによって、その積み上げ方はちょっと違ってくるように思います。

40代前半は30代のエネルギーで進めましたが、後半は身体の取り扱いに工夫が必要でした

――STORYの主な読者層は40代前後の女性です。松雪さんは40代をどう過ごされましたか?

40代になった頃は、充実していたと思います。特に気負うこともなく生きられたといいますか、30代のエネルギーがある感じのまま、進めたような印象がありますね。ただ40代も後半になって、さらに50代に入ってくると、やっぱりどうしても身体にいろいろな変化が出てくる。身体の取り扱い方にも、やっぱり工夫が必要になってきますよね。

――女性の場合は、やはり更年期がありますから。

そうですね。私の場合は、わりと早い段階から準備をして、自分の身体のことを知るようにしていたので、うまく移行していけそうな気がしていたんですけれども、同じようなルーティンでコンディショニングしても、なかなかうまくいかないタイミングが、40代の後半あたりにありました。そこから、だんだん変化が出てきましたね。それはそれで向き合いながら、より丁寧にコンディショニングしていかなきゃいけないんだなと思っています。

――具体的にどんな変化があって、普段の生活ではどんなことに気をつけていらっしゃるのでしょう?

私の場合はすごく変化があった方で、化学物質もお酒も全く受け付けなくなってしまったんです。食べられる食材もすごく限られてきてしまって、今は糖分と乳製品、小麦も控えています。要は、自分のエネルギーや栄養として、効率よくちゃんと取り入れて回していける食材がとても限られていて、食べる順番や食べ方を間違えると、その負担が身体に出てしまうんです。それがわかったのが40代後半ぐらいなんですが、調べてみたら、若さとか体力でカバーされて症状に気付かなかっただけで、もともとそういう体質だったみたいです。

――そうだったのですね! お食事はどうされているのですか?

普段は100パーセント自炊をしています。もちろん仕事で誘われたりして、食事に行くこともあるんですが、それ以外は、出掛けても1回戻って自分でランチを作って食べてから、また出掛けるような感じです。そのほうが身体が軽やかに回りますし、化学物質を摂らないようにしただけで風邪をひかなくなりました。ただ、調味料も使えないので、とても不便ではありますね。どうしても中華やイタリアンを食べたくなった時は、オーガニックのものを使って工夫して、その味になるような調理法を編み出したりしています。

――大変そうではありますが、不調の原因がわかったからこそ、対処もできるというもの。自分の身体を知るって大事ですね。ルーティンにしているリフレッシュ法があったら教えてください。

朝日が見える家に住んでいるので、基本的に朝日とともに目覚め、朝の太陽を浴びながら瞑想すると、とてもリフレッシュできます。その分、寝るのも基本的に早いですね。

老いることは恐怖ではなく、変化していくことを受け入れること

――素敵な習慣ですね。もとからお綺麗ですが、色っぽさは以前よりも増しているように感じます。今回の舞台『危険なワルツ』で演じる、夫・龍臣(岩松さん)の嫉妬をよそに、若い男(坂東龍汰さん)に惹かれていく吟子役も見事にハマりそうです。

自分の中では、よりサバサバした性格になってきちゃっているなと感じているので(笑)、そういう風に言っていただけて嬉しいです。

――儚げな役から、コミカルな役やパワフルな役まで演じていらっしゃる松雪さん。そのエネルギーの源は、やはり演じるお仕事への情熱ですか?

そうですね。自分にはもうこれしかできないですから。それに、作品に向き合っている時間がやっぱり何より好きなので、それがエネルギーになっているんだと思います。

――吟子役の注目ポイントを教えてください。

人は年齢を重ねていくことで失くしていくものもあれば、逆に、若い時には気づかなかったものを得ることもありますよね。そんな日々の暮らしの中で、きっと誰もがいろんな瞬間に“老い”を感じて、何か切ない気持ちになったり、抗いたくなったりすると思います。かつてアウトローな生き方をしていた吟子さんは、夫の龍臣さんの姿に、自分も老いていくことを見せつけられているような気がして、若さと悪へと傾いていく女性で、今はまだ物語がどんなふうに帰結していくかわからないんですが、そういった“若さ”や“老い”の視点でご覧になると、共感していただけるのかなと思います。

――松雪さんご自身は、老いへの恐怖みたいなものをお感じですか?

老いることに対する恐怖はないですね。誰もが老いるわけですし、老いる=「こういうふうに変化していくんだな」ということを、一つ一つ受け入れていく作業だと思っています。ある先輩の方が「老いていくことの悲哀を受け入れなきゃいけないんだよ」とおっしゃっていたんですね。確かに、そういうものなんだろうなと思います。

――ありがとうございます。最後にSTORY読者の皆様にエールを込めたメッセージをお願いします。

40代の方々だと、ちょうど子育て中だったり、もう少しで手が離れるぐらいの時期ですかね。大変だと思いますが、今振り返ってみると、私はその頃が一番楽しくて充実していた気がします。高校生の息子に、毎日お弁当を作って持たせたり、受験の伴走をしたり……。その時は、毎日毎日ただ一生懸命でしたけど、それが永遠に続くわけではない。限りがある時間だったりするので、そういう時間を思いっきり楽しんで欲しいなと思います。

【公演情報】

M&Oplays『危険なワルツ』

若い頃アウトローな生き方をしていた龍臣(岩松了)と吟子(松雪泰子)夫婦の家に、配管工事を機に出入りするようになった前田一寿(坂東龍汰)。美しい吟子は、嫉妬深い龍臣をよそに一寿に惹かれていき、夫婦が計画する悪事に一寿を引き込むが……。

作・演出/岩松了 出演/松雪泰子 坂東龍汰 谷川昭一朗 中村加弥乃 但馬智 岩松了
3月6日~22日/新国立劇場  小劇場。大阪、富山、宮城公演あり。

https://mo-plays.com/waltz/

【プロフィール】

まつゆき・やすこ/1972年、佐賀県生まれ。91年に女優デビュー。以降、ドラマ、映画、CM、舞台など幅広く活動。2006年公開の主演映画『フラガール』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞など、2008年公開の『デトロイト・メタル・シティ』『容疑者Xの献身』で同優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作は、ドラマ『最後の鑑定人』『照子と瑠衣』、配信映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』、音楽劇『エノケン』など。連続ドラマ『北方謙三 水滸伝』が2月15日よりWOWOW、Leminoで放送・配信中。

取材・文/岡﨑 香 ヘアメーク/石田絵里子 スタイリスト/飯田恵理子(CORAZON) 撮影/柴田フミコ

<アイテム/価格(税込)/ブランド名(カナ表記)>
ブラウス/¥46,200/Room no.8 BLACK(ルームエイト ブラック) パンツ/¥57,200/ADORE(アドーア)ピアス/¥57,200/PRMAL(プライマル) リング(ブラックパール)/¥176,000/PRMAL(プライマル) リング(Wフィンガー)/¥244,200/PRMAL(プライマル)

<お問い合わせ先>
◎Room no.8 BLACK(ルームエイト ブラック)
Otto design(オットデザイン)TEL 03-6824-4059
◎ADORE(アドーア)
ADORE六本木ヒルズ店/03-3475-5915
◎PRMAL(プライマル)/support@prmal.com

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