コンビニで買った豆苗に聴かせたら…?東儀さん親子が驚愕した雅楽の力

奈良時代から1300年にわたって雅楽を受け継いできた楽家(がっけ)に生まれ、雅楽器の持ち味を生かした唯一無二の表現や、ジャンルを超えたコラボレーションで活躍する東儀秀樹さんが、今年デビュー30周年を迎えます。今秋には30周年を記念したコンサートツアーがスタート。“ちっち(CICCI)”の愛称でSNS等にもよく登場している愛息・典親さんも参加します。仲良し親子のお二人に、東儀家の流儀や雅楽の魅力、コンサートへの意気込みなどを伺いました。

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古いけれども、いつでも新鮮なところが大きな魅力

――雅楽は、日本固有の音楽と1400年ほど前から伝来した古代アジア諸国やシルクロードの芸能によって生まれ、平安時代中期に完成したままの形で現存している世界最古の音楽芸術とのこと。お二人は、そんな雅楽や雅楽器のどんなところに魅力をお感じですか?

秀樹 千数百年前と変わらない音を提供できるのに、いつでも新しい気持ちになるところですね。古いものなのに、古さを感じないどころか、まだまだ可能性を感じます。たとえば、笙の和音構成は、最新鋭のジャズピアニストが弾きたがるような和音だったりするんですよ。しかもそれは1300年前から日本にある。そう伝えると、ジャズの人に驚かれます。だからこそ、そこからまた何ができるかという方向性はいくらでも見えてくる。古いけれども、いつでも新鮮なところは、僕にとって大きな魅力です。

典親 僕は、古来の姿を変えずに残っているところです。宮中の儀式だったからこそ、唯一の存在として古来のまま守り伝えられてきたもので、だから今も実際に、1300年以上昔と変わらない楽器や演奏方式で、同じものを聴くことができる。それは、時を超えた古代の感覚とのコミュニケーションとも言えるのではないかと考えています。

――素敵な表現ですね。以前、東儀さんを取材させていただいた際に、中央アジアなどでは、新しい支配勢力によって、それまでの芸術文化が繰り返し破壊されてきたので、古い時代の楽器や演奏法が残っていないと伺いました。そういう意味でも、雅楽は非常に貴重な存在だと。

秀樹 ええ。そして、それは日本らしさの表れでもあると思うんですよ。日本にも戦国時代があったりして、戦はたくさんあったわけだけれども、お互いの文化や相手が持っている大事なもの、素晴らしいものは、結構活かして引き継いでいるんです。だから物をちゃんと残してくれているんだろうなと。雅楽をやる身にとっては、それはとても嬉しいことですし、日本では楽器一つとっても、精神性みたいなものを大事にしますよね。そういうところにも惹かれます。

雅楽を聞かせると植物がよく育ち、動物が寄ってくる?二人で実験してみました

――精神性といいますと?

秀樹 たとえば、管楽器は息がかかっている間だけ音がするけれども、弦楽器は弦を弾いた後も音が残る。古代の人はそこに霊性を感じて、弦楽器は管楽器よりも霊力が強い高尚な楽器だと考えていたんです。そういった古代人の発想があってこその音楽だと思うと、今の僕が作るポップスやロックな曲は到底かなわないような、何かものすごく秘めたものを感じます。

典親 雅楽では、音の一つひとつにも、たとえば、この音は東の方角に作用するとか、人間の臓器のこの部分に作用するというふうに、体系的に結びつけられているものがあるんです。なので、きっと曲を作る時も、単にメロディーを紡ぎ合わせるのではなくて、目的とする作用を生み出すために、音の流れを作ったりしていたのかなと。そういった感覚がちりばめられているかと思うと、本当にロマンを感じます。

――なるほど。音楽療法のような使い方もされていたのですね。

秀樹 そうなんですよ。雅楽を聞かせたら植物がよく育つとか、動物が寄ってくるというのはよく言われていることなんですが、実は僕とちっちで、それを実験したことがあります。僕の部屋と彼の部屋は、広さも窓の向きも大きさも同じなので、コンビニで買ってきた豆苗を真っ二つに分けて、それぞれの部屋の同じ位置に置いたんです。で、僕の部屋では、エンドレスで雅楽のCDをかけっぱなしにして、彼の方は何もしなかった。そしたらもう2日で芽の伸びが全然違うんですよ。1週間も経つと、僕の部屋の方は、これが豆苗なのか!? っていうぐらい伸び放題の植物になっていてびっくりしました。そんなこともあって、昔の人が考えた、僕らには得体の知れない何かがちゃんと織り込められているんだなというのは、実感としてあります。

――面白いです。確かに、笙を聴くと、天から降り注ぐ和音に包まれたような心地がしますし、篳篥(ひちりき)の独特の音のゆらぎには癒しを覚えます。10月から始まるデビュー30周年記念コンサートは、やはり雅楽器を中心としたものになるのですか?

秀樹 そうですね。せっかくの節目の公演なので、2部構成にして、第1部では、たとえば、もう途絶えてしまったシルクロードで使われていた楽器も登場させて、それによって雅楽がどう育っていったかというような歴史も伝えたいと思っています。音楽には、ずっと守り伝えていくものと、時代によってどんどん変わっていくものがあるので、第2部では、それが進化した形を提示しようかと考えていて。

――具体的にはどんなことを?

秀樹 ロックをやろうかなと。たぶんそれは、世界でこの二人にしかできないことだと思うから。ちっちは笙も吹くし、琵琶も弾くけれども、実はギターが一番得意なんです。なので、雅楽の特徴はちゃんと消えないようにしつつ、ポップなものやロックなものを表現して、第2部はもうジャンルに関係なく、「音楽って、めちゃくちゃ楽しいものだな」と感じてもらえるような内容にしたいですね。

大概のことは先入観が邪魔している、「もう40歳だから無理」なんて考えるのも、先入観のしわざ

――まさにお二人にしかできないコンサートですね。今度の展望をどのようにお考えですか?

典親 僕は基本的に、未来のことはあまり考えずに、今を楽しむという感じではあるんですけれども、やはり音楽的にもっと、自分なりの表現が広がるような場が増えていくといいなという気持ちはあります。今回のツアーの間に20歳になるんですけれども、これを機会に自分なりの表現がさらに広がるといいなと思います。

秀樹 僕も先のことは特に考えていませんね。本当にマイペースで、いつもその時見えていることに夢中になっているだけなんですよ。そうすると、次に何か現れるから、現れた時に考えて身を振っていけば、なんとかなると思っていて。もちろん、それができていること自体、幸せなことだとわかっています。でも遠くの目標を掲げたところで価値観は変わっていくので、その瞬間、瞬間、何か見つけていければいいと思っています。

――最後に、子育て中の皆さんに、東儀さんから一言メッセージをお願いします。

秀樹 とにかくワクワクを忘れないことが大事だと思います。自分がワクワクしていると、周りもワクワクして、いいことしか生まれない。僕はそう考えています。もう一つ大事なのは、先入観を持たないこと。大概のことは先入観が邪魔しているんですよ。新しいことにチャレンジする時に「もう40歳だから無理」なんて考えるのも、先入観のしわざです。そんなこと言わずに、やってみればいいのにと、僕は思います。たとえば今回のコンサートも、「雅楽って堅苦しいんでしょ」なんて先入観を持たずに来てもらえれば、きっと楽しい時間を過ごしてもらえるはず。先入観を捨てて、毎日をワクワク楽しんでもらいたいですね。

――典親さんからは、改めて今回のコンサートツアーへの意気込みなどをお願いします。

典親 音楽の変遷を感じていただけるような、古代から現代の音楽を網羅したコンサートツアーになると思いますし、一つのショーとして、とにかく楽しいものになると思います。雅楽には、音を聴くことで、ちょっと気持ちが軽くなったり、いい気分になったりする感覚がきっとあると思うので、ぜひ気軽に体感しに来ていただけたら嬉しいです。たくさんの方のお越しをお待ちしています。

東儀秀樹さん・東儀典親さんprofile

とうぎ・ひでき/1959年、東京都⽣まれ。奈良時代から今⽇まで雅楽を代々受け継いできた楽家(がっけ)に生まれ、宮内庁楽部在籍中は、篳篥(ひちりき)を主に、琵琶、太⿎類、歌、舞、チェロを担当。宮中儀式や皇居や海外での雅楽演奏会に参加する一方、雅楽器とピアノやシンセサイザーによるオリジナル曲の制作に情熱を傾け、96年にアルバム『東儀秀樹』でデビュー。国内外で演奏活動を展開し、雅楽器の持ち味を⽣かした唯⼀無⼆の表現とジャンルを超えたコラボレーションで、雅楽の新たな可能性を切り開いている。2024年度⽂化庁⻑官特別表彰を受賞。

とうぎ・のりちか/2006年、東京都⽣まれ。ギター、ピアノ、ベース、ドラム、笙、舞、作曲などを得意とする。19年9⽉に仁和寺での「⾳舞台」で初舞台を踏み、数々のステージに加えて「ハマスカ放送部」「千⿃のクセスゴ︕」「沼にハマってきいてみた」といったTV番組にも出演。⾃⾝のロックバンドではギターボーカルと作曲を担当。東儀秀樹アルバム『NEO TOGISM』にギタリストとして参加するほか、メディアでの親⼦共演も注⽬を集めている。

『東儀秀樹 30th アニバーサリーツアー ~悠久と革新のTOGISM~』
2026年10月11日/福岡・FFGホール 12月12日/京都コンサートホール 大ホール 12月27日/石川・金沢市文化ホール 2027年2月23日/宮城・日立システムズホール仙台 シアターホール 3月6日/愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 5月14日/東京・国際フォーラム ホールC 5月23日/大阪ザ・シンフォニーホール
出演/東儀秀樹 東儀典親 〆野護元(龍笛) 中村華子(笙) Keiko (ピアノ) 内田義範(ベース) 天倉正敬(ドラム)※公演により一部メンバーが変更になる場合あり ゲスト/三浦一馬(バンドネオン)※愛知・東京・大阪公演のみ
◎連動イベントとして『東儀秀樹×野村萬斎トークショー ~東儀秀樹デビュー30周年記念スペシャル企画~』を8月5日に東京・草月ホールで開催
https://www.bsfuji.tv/event/togihideki30th/

取材・文/岡﨑 香 撮影/沼尾翔平

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