「あそこがかゆい…」性病?夫の浮気?40代50代が知っておくべき【性感染症】Q&A

40代、50代の女性の多くが、デリケートゾーンにかゆみなどの悩みを抱えています。原因がわからないと、昨今では性感染症の患者が急増しているというニュースを耳にすることもあり、不安に思う人も少なくないのでは。場合によっては「パートナーの浮気で性感染症にかかってしまったのかも…」と疑心暗鬼になることも。そこで今回はローズレディースクリニックの石塚清子先生に、性感染症の基礎知識やデリケートゾーンのトラブルについてお話を伺いました。

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Q .陰部に違和感…。これって性感染症?40代50代になると性感染症のリスクは上がるの?

A .陰部にかゆみなどのトラブルが起きた場合、「性感染症かもしれない」と考える方がいるかもしれませんが、多くの場合は自浄作用が弱まることで引き起こされる細菌性腟症や腟カンジダ症が原因です。
本来、腟内にはラクトバチルス菌(乳酸菌の一種)という善玉菌が常在しており、腟内環境を守ってくれています(自浄作用)。しかしアルカリ性の強い石鹸で洗いすぎたり、疲労やストレスなどによる免疫力の低下があると、ラクトバチルス菌が弱まり、表皮や腸管などに常在している菌や真菌というカビが増え、細菌性腟症や腟カンジダ症を発症します。
自浄作用は、加齢によって女性ホルモンの分泌量が低下することでも弱まるといわれていますので、40代50代になると、こういった一般細菌や真菌の感染が増える可能性はあります。
さらに閉経後は、女性ホルモンの分泌量の低下によって、腟や外陰部が萎縮・乾燥し、炎症を引き起こす(萎縮性腟炎)こともあります。

一方で、基本的に性交渉をして感染するとされている、淋菌やクラミジア、梅毒などは、自浄作用で予防できるものではないので、加齢によって自浄作用が落ちても、感染の確率・リスクに影響はありません。

陰部で何か症状が出た場合は、産婦人科や婦人科の受診をお勧めします。

Q .性感染症にかかっていた!原因はやっぱり、パートナーの浮気?

A .性感染症というのは、基本的に性行為とそれに準ずる行為で感染します。セックス、オーラルセックス、アナルセックスなども含めて、感染者の体液が粘膜に濃厚に接触した時に感染するものがほとんどです。

ただ、そういったことを大前提としても、潜伏期間というものがありますから、感染原因が「直近のパートナーか」ということは確実なものではありません。以前から持っていた感染症が、免疫が下がったことで症状として出てくることもあるため、医療機関に相談する前に「カップルの問題」と決めつけてしまうのは早計かもしれません。

Q .最近、流行している性感染症って?

A .40代50代に限らず、増加傾向にあるのが梅毒です。それまで年間1000人を下回っていた梅毒患者数は、2013年に1200人を超え、コロナ全盛期の頃に一度減少しましたが、ほぼ右肩上がりで爆発的に増加しており、最近では12000人を超えています。
梅毒は、感染をするといったんは症状が出るのですが、しばらくすると消えて潜伏するという経過を繰り返すため、初期のうちに診断されず、多くの人に移してしまうことがあります。

初期症状としては、原因となった性交渉の3週間後くらいから、感染したところ(陰部や口の中)に固いしこりができます。その後しこりの真ん中あたりが潰瘍を形成しますが、治療をしなくても症状が治まってしまいます。

その後3か月程度で、全身に病原体が広がり、体幹や手のひら、足の裏などに皮疹が出てきます。バラの花びらのように見えるピンク色のバラ疹(ばらしん)や、皮膚が盛り上がる丘疹性梅毒、フケのようなものが付着した梅毒性乾癬、喉や扁桃の腫れである梅毒性アンギーナなど、様々な症状が出現します。
最近では、この段階で大半の方は診断を受け治療されますが、無治療であっても症状は自然に消失してしまいます。
そして3年ほど経過すると、骨や皮膚、筋肉にゴム腫と呼ばれるしこりができます。そこでも治療をしないと、神経や心臓、血管などに重い障害が出ます。

自身の体を守ることはもちろん、感染を広げないという視点からも、予防と、初期に治療するということがとても大切です。「なにかおかしいな?」と思ったら、放置をせずに産婦人科や婦人科、内科にかかることを強くお勧めします。

Q .妊活中です。性感染症は妊娠にも影響があるって聞いたけど…。

A .子宮とつながっている卵管は「精子と卵子の出会いの場」であり、蠕動運動をしながら子宮の中に受精卵を送る働きがあります。しかし、例えば淋菌やクラミジアなどの性感染症にかかるとこの働きが弱まり、卵管や卵巣に妊娠してしまう異所性妊娠(子宮外妊娠)を引き起こす確率が上がってしまいます。さらに感染が長期に渡ると、卵管に癒着を起こすことがあり、出会いの場そのものがなくなり、不妊症の原因になることがあります。

妊娠中に注意する性感染症としては、淋菌感染症やクラミジア感染症はもちろん、他にも梅毒や、尖圭コンジローマという陰部にイボができてしまう疾患、ヘルペスウイルスによるヘルペス外陰炎などにも注意が必要です。これらに罹っていると、お母さんから赤ちゃんに移してしまうことがあります。

最近では性感染症の絶対数が増えたことにより、「私は性感染症の危険は絶対にない」と思われている方からも検出されるケースが増えています。また、性感染症は男性よりも女性の方が、症状が弱いことも多いです。
陰部に何かしらの症状がある場合、不安がある場合は、お近くの婦人科にお気軽にご相談ください。

ローズレディースクリニック・石塚清子先生

日本産婦人科学会認定産婦人科専門医。東邦大学医学部卒業。東京医科歯科大学 産婦人科 後期研修。現在、順天堂大学とローズレディースクリニックにて多くの婦人科、不妊患者の治療にあたる。ローズレディースクリニックhttps://roseladiesclinic.jp/

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取材・文/星子 編集/根橋明日美 イラスト/PIXTA

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