夫婦で伝える【0歳からの性教育】一体何から?どうやって?専門家が詳しく解説

性教育は小さい頃からはじめるべき。そんな話をよく聞きますが、私たちは家庭での性教育経験が少ない世代。でも、子どもの成長とともに向き合わなくちゃいけないことも増えるのが「性」のこと。夫婦の性教育ユニット『アクロストン』のおふたりに、0歳から始められる性教育について聞きました!

こちらの記事も読まれています

▶︎【性教育】は何歳から? 何歳の子にどう話せばいいの?

「その子がその子らしくいられる」
まずは人権を教えることから

夫婦一緒にはじめる
「0歳からの性教育」

\夫婦の性教育ユニットに聞きました/

アクロストン

夫婦ともに医師として働きながら、性教育を広げるユニット〝アクロストン〟としても活躍。『10歳からのカラダ・性・ココロのいろいろブック』(ほるぷ出版)など、著作も多数。https://acrosstone.jimdofree.com/

まず親が理解しておきたい「3つのこと」とは?

まず親として

「相手をひとりの人として
尊重する」ことから

子どもに教える前に
大人が理解して習慣に

「性教育」という言葉にすると、つい身構えてしまいますが、自分の体、自分の生き方をより幸せなものとしていくために、必要な知識(科学的に正しい知識)を身につけることが性教育。たぶんみなさんが思っているそれって、子どもの作り方やプライベートゾーンの話など、ほんの一部のことなんです。根底となるのは、子どもの人権を尊重すること。性や体に関することで言うと、自分の体について知る権利や自分の体のことは自分で決める権利、自分の意思を表明する権利、安全にすごす権利など、が挙げられます。この権利は0歳でも同じ。これを尊重することがスタートなんです。「性教育」という言葉に刷り込まれた概念を取っ払って、ゼロから学んでみてください。

親と子どもにも境界がある。
体に触るときは声をかける

人と人の間には境界があって、それを越えるときには同意が必要。この境界と同意のことを暮らしの中で伝えていくことが一歩。たとえば、お風呂になかなか入らないからと力業で脱がせず、「脱がしていい?」と聞いてからなど、生活の細かいシーンでも同意を取ることを忘れずに。この積み重ねがお互いを尊重する意識に繋がっていきます。

夫婦として対等の関係でいるべき

どんなに子どもに言葉で伝えていても、両親が対等でないと説得力はありません。金銭的な部分や性格的な違いなど、いろいろ夫婦間にもあるとは思いますが、子どもはその姿を見て育ちます。ジェンダーギャップも多いからこそ、大人がその関係性にもがくことも大事。難しいけれど、当たり前なことを改めて夫婦で見つめ直してみて。

お互いを尊重できる
環境を整えてあげる

家庭の中での性教育で大切なのは、子どもと大人の関係性。子どもをひとりの人として尊重し、子どもも大人も対等である、というのが大前提。支配的にならないで、きちんと大人も「ごめんね」を言うとか、単純なことです。もちろん子どもの言いなりになるのではなく、意思を尊重して何でも話せる関係作りを心がけてみてください。

0歳から始められる!子どもに伝えたいこと5選

子どもには

「人と人との間には境界があって、
そこに入るには同意が必要」から

親に対しても、友達に対しても
同意はもちろん必要

人と人の間にある境界線を越えるときには、相手が誰であれ同意を取る必要があります。それは親でも友達でも同じ。「手を繋いでいい?」「ギューしていい?」などを相手に尋ねることは「そのおもちゃ貸して」と同じなんです。逆に、同意を求められたとき、自分が嫌だなと感じたら「イヤ!」と答えていい。〝境界〟と〝同意〟の習慣を徹底して。

0歳からは「心地よいタッチを
教えてあげる」ことを

まずはオムツを替えるときには、「オムツを替えようね。お尻をキレイにしようね」など、声をかけてからにしましょう。これだけで、〝同意をきちんと取る〟という性教育をしていると言えます。また、触れ合いを数多くすることもポイントです。心地よいタッチがどんなものなのか、というのを知る経験をたくさんさせてください。

子どもの性の疑問には
あいまいに答えないこと

性の話は恥ずかしいもの・隠すものと捉えず、サイエンスと考えて、ごまかさずに教えてあげましょう。「赤ちゃんはどうやってできるの?」と聞かれたら「赤ちゃんのもと同士がくっつくと赤ちゃんになるんだよ」とか。すぐに話すのが難しい場合は、「わかりやすく伝えたいから週末まで待ってね」などと時間をもらって、整理するのも◎。

男女の違いより
「その子がその子らしくいられるか」

3歳くらいで自分の体に興味を持ち始めたら、お風呂に入っているときに、パーツを口に出して教えてあげましょう。自分で洗えるようになったら、ケアの仕方も教えられますね。無理に男女の違いを教えることはありません。それぞれみんな違う、みんなそれぞれ素敵なんだよ、と自分らしさを誇れる基盤を作ってあげることが重要です。

子どもが「嫌なことを嫌と言える」、
それを受け入れてもらえる体験を

特に2歳前後からはじまるイヤイヤ期に大切なのが、イヤイヤを尊重してあげること。嫌と言えることって本当に重要なんです。なんでもかんでもイヤイヤされると親もゲンナリしてしまうのもわかりますが、できる限り「嫌なんだね」といったん受け入れてあげて。頭ごなしにしてばかりだと、嫌と言うことが無力に感じてしまうように。

\パパには/
まずは子どもの体の
ケアに関わることから

子育てをママと一緒に頑張っているというパパでも、細かい体のケアまでやっている人って案外少ないもの。たとえば、お風呂に一緒に入ったとしてもお風呂あがりにクリームを塗ったり、爪を切ったり……、細々したことはママがやってはいませんか? 体に触ることが多ければ、性教育って自然と巻き込まれるものなんです。椅子に座って話すことではなく、日々の生活の中でコツコツ伝えていくもの。まずは巻き込まれることからはじめてください。

受精から妊娠、出産はもちろん
人権や多様性まで網羅

ようこそ! あかちゃん
せかいじゅうの家族の
はじまりのおはなし

「赤ちゃんが生まれる仕組みを科学的に書いていて、わかりやすい1冊。同性、異性、パートナーやいろんな家族の話など、さまざまなことを包括的に学べます」
¥2,420(大月書店)

体のパーツについて
絵を見ながら一緒に学べる

あっ! そうなんだ!
わたしのからだ
幼児に語る性と生

「裸の絵があって、体のパーツの話をするときにぴったり。子どもにどう話せばいいかについても書いてあるので、悩んでいるならはじめの1冊としてもオススメ」
¥1,980(エイデル研究所)

同意と境界について
わかりやすく可愛く教えてくれる

はじめにきいてね、
こちょこちょモンキー!
同意と境界、はじめの1歩

「人との関係性について、おもしろくわかりやすく読めます。子どもも盛り上がる内容なので、大人の意図を気付かずに楽しく読んでくれると思います」
¥1,540(子どもの未来社)

“子どもと性”にまつわるQ&A8選

こんなときどうしよう!?

日常でいつ起こるかわからない
突発的事件、正解はあるの?

Q

保育園でチューしちゃった!

先日、娘に「今日〇〇くんとチューしたんだよ!」と無邪気に報告されました。愛情表現は悪いことではないけど、「よかったね!」とも言えず……。何が正解でしょうか。(R・Kさん/4歳女の子ママ)

A. お互いの同意を得たうえでの行為であれば問題ありません。ただ、強い子に言われると嫌とは言えない場合も。否定も合意もせず事実を受け入れてから、相手に同意を求めたのかなどを聞きましょう。また、力関係についても含め、一度、保育園に報告をしたほうが〇。

Q

パパのおちんちんでふざけてる!

お風呂に入るとき、パパのおちんちんを叩いて「やめて」「きゃはは」みたいなやり取りをしていて困ります。男の人の体のことをパパから話したほうがいい?(S・Mさん/3歳女の子ママ)

A. 「やめて」と言われたらすぐにやめる、ということをまずは伝えて。もし、おちんちんについて興味を持っているのであれば、体のパーツについて教えはじめてみてはいかがですか? 教えるのはパパでもママでも!

Q

おっぱいを触りながら
寝る癖があります

娘がおっぱいを触りながら寝る癖があって、必死に手を繋いで寝る毎日です。本人は落ち着くそうですが、この癖はやめさせたほうがいい?(A・Sさん/3歳女の子ママ)

A. 自分の体のことは自分で決めていいこと。ただ、性器やプライベートゾーンを触ることはOKだけど、人に見せていいことではないということを教えてあげて。無意識な行為を注意すると、むしろ癖になることがあります。特別視せずに見守りましょう。

Q

パパとママの仲よしは
どこまで見せていい?

〝おはようのハグ〟や〝いってきますのチュー〟など、息子の前で当たり前のようにやっていますが、だんだんお友達に真似するかも……と不安になってきました。(Y・Wさん/4歳男の子ママ)

A. 家庭の中で毎日の挨拶と同じようにしていることであれば、いいと思います。ただ、いちいち同意を取らないのは、長く一緒に暮らしている人だから。お友達は別問題。もし、「パパとママはいちいち聞かないじゃん!」と言われたら、境界と同意を教えるチャンスですよ。

Q

「パパには内緒ね」と言われたら?

「今日〇〇ちゃんと手を繋げてうれしかったの。パパには内緒ね!」と言われたのですが、パパにも即共有した私。夫婦揃ってほっこりしちゃいました。(J・Fさん/4歳男の子ママ)

A. 夫婦間で子どもの話を共有することはとてもいいことなのですが、「パパには内緒ね!」と言われたらパパには言わないこと。子どもにも内緒にしたい話はあって、それを尊重することは子どもの人権を守ることと同じ。常に意識することを徹底してください。

Q

トイレを覗いてくるお友達がいる!

保育園で息子が用を足しているときに、「お友達が何人も『まだー?』と見に来て嫌だった」と聞いてモヤッと。保育園に相談すべき?(R・Oさん/3歳男の子ママ)

A. 一緒に入って用を足すならOKですが、覗くのはNG。明らかに同意なしで境界を越えています。まずは「教えてくれてありがとう」と伝えて。話を詳しく聞くときに「なんで?」という言葉を使うと、責められていると感じることもあるので避けましょう。もちろん保育園には報告を。

Q

「おままごとは女の子がするんだよ」と
言う娘に…

おままごと中に「パパも一緒に」と誘ったら、娘に「女の子がすることなの!」と言われました。「男の子も女の子も関係ないよ」と諭しましたが……。(H・Eさん/3歳女の子ママ)

A. その通り! 人が何を好きか、何をやりたいか、というのに男女の違いはありません。よく「男の子なんだから」とか「女の子なんだから」と言う人がいますが、それはNG。ジェンダーや見た目などで決めつけず、その子らしさを大切にする重要性を教えてください。

Q

保育園やほかの親御さんと
認識が違いすぎる

お友達の家に泊まりに行くとお風呂はみんなで入っていたり、保育園ではみんなでパンツを見せ合いっこしてお着替え。なんだかモヤつきます。(R・Sさん/4歳男の子ママ)

A. 下着姿や裸を誰に見せるかという〝境界〟のあり方はそれぞれ違うもの。「お風呂にみんなで入るのが好き」という人もいれば「他人に裸を見せるなんて!」という人も。親として気になる場合は、親同士や保育士さんと話し合いを。意外と「やっぱり気になりますよね」なんていうことも多いんですよ。

あわせて読みたい

▶︎ゲイパパが教える!子どもに伝えたいはじめての「性教育」

▶︎【性教育】赤ちゃんってどうやってできるの?と聞かれたら

▶︎【性教育】子どもから急に性の質問…そんなとき使える「魔法の言葉」

撮影/須藤敬一(人物)、五十嵐 洋(静物) モデル/カワゴエ・シェリー、タカギ・ルイ 取材・文/矢﨑 彩 編集/井上智明
*VERY2024年1月号「夫婦一緒にはじめる「0歳からの性教育」」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。