三田佳子さん・82歳「54歳でステージ4の子宮体がんに。それでも悲観的になりません」

NHK大河ドラマで2度主演を務めた唯一の女優、三田佳子さん。2014年7月号にご登場いただいてから9年。その間、2度の大病を乗り越え、82歳とは思えないほど若々しく美しい。とはいえ「75歳を過ぎたら、頑張っても美もオーラも出ません」と清々しいほどきっぱり言い切りました。今回は三田佳子さん(82歳)から美しき40代へのメッセージを伺いました。

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お話を伺ったのは……女優・三田佳子さん(82歳)

《Profile》みた・よしこ
‘41年生まれ。高校を卒業した’60年、東映に入社し映画デビュー。独立後は舞台、テレビにも活躍の場を広げ、NHK大河ドラマに2度主演、NHK紅白歌合戦では2度司会。近年の主な出演作は、ドラマ「プロミスシンデレラ」「ゆりあ先生の赤い糸」、映画『約束のネバーランド』『天間荘の三姉妹』。NHKドラマ「老害の人」(5/5~放送予定)、映画『湖の女たち』(5/17公開)に出演予定。オフィシャルブログ「佳子のガラパゴス遊歩」も好評。

種類豊富にまんべんなく。食生活が私の健康の秘訣

今朝はうな重を食べてきました。ステーキを食べるときもあって、撮影中は食事をしないから、その分エネルギーをキープできる高タンパク質のものをしっかり食べます。他に夫が作ってくれた具だくさんのお味噌汁に納豆も。お味噌汁は塩分が気になるので、スープくらいの薄味にして、野菜をたくさん入れます。60歳を過ぎてから徐々に料理をするようになって、70歳になった頃にはほぼ何でも作れるようになりました。今はぱっぱとできちゃう。早いです。料理本は見ず、ずっと外食してきたから味はわかっているので、即興でアレンジもします。ハンバーグとか面倒なことはしないの。なにしろ野菜をいっぱい使います。オリーブオイルで炒めて黒酢で味つけしたり、お魚なら焼き魚やムニエルに。お味噌やお豆腐もよく食べています。

学生の頃から母のお弁当には何種類もの食材が入っていて、日常的にあらゆるものを食べてきました。それが習慣になっていて、今も冷蔵庫にはたくさんの種類の食材が入っています。卵焼きにも、細かく切ったオクラ、小魚、ゴマなどを入れて、ウスターソースとおいしいケチャップを混ぜたソースをかけたり。量をたくさん食べるより、少しずつ種類豊富に食べています。甘いものも好きだし、好き嫌いなく何でも食べます。栄養は食事で摂るのでサプリは飲みません。食生活が私の健康の秘訣ですね。気をつけているのは昼以降はカフェインは飲まず、ヨモギ茶やおいしい水を飲んでいます。

運動も特にしません。日頃から億劫がらずに立ったり座ったり、上の棚の物を取ったり、意識して動きます。掃除だけは週に何度か来ていただくお手伝いさんにお願いしますが、洗濯はします。というのも、自分でするのが一番きれいに仕上がるから。雨の日は乾燥機に入れますが、ピンと伸ばして太陽に当てて干すのが好きですね。

54歳でステージ4のがん、76歳、79歳でも大病を

40代は人生の中でいちばん充実していました。仕事、子育て、主婦、すべてやってもまだエネルギーが余って、元気がありました。夫婦共々忙しく、朝イチに家族で伊豆の別荘に出かけ、遊ぶだけ遊んで、遅くに帰宅して、次の日は早朝から仕事というスケジュールを平気でやっていました。学校にもよく行って、ママ友と旅行したりも。楽しかったですね。

ところが、54歳でステージ4の子宮体がんに。その少し前からほっそりして、カッコいいファッションが似合うようになったと喜んでいたのですが、仕事疲れで胃腸の調子が悪かったので胃腸科を予約したんです。すると、4日連続で「胃腸科に行くな」と夢を見ました。たまたまその後、婦人科の医師との食事会があり、「婦人科の検査を受けたことがない」と言うと、「50代でそれはダメです」と、検査していただくことに。

そこでがんが見つかり、肺にまで転移していることが発覚。死ぬのか生きられるのかと聞くと「五分五分」との答え。「即、抗がん剤を打ちましょう」と言われ、副作用があることも知らないまま、その日に投与。数日後に決まっていたコマーシャル撮影を終えてから、入院しました。入院前に美容院でシャンプーをしてもらうと、ごそっと髪の毛が抜けてしまって。後でわかったことですが、その最初の1回の抗がん剤が効いて、進行をくい止めることができたそうです。

その後、子宮全摘の大手術。でも絶望感はなかったです。休める喜びのほうが大きくて。舞台、ドラマとかけ持ちしてましたが、スタッフが初めて「どうぞ休んでください」と。後ろめたさもまったくなく、自由になれて最高に幸せでした。

退院後、自宅の窓から木の葉の揺らめきや、庭のトマトをカラスがもぎ取って行く瞬間を見たりして、何気ない幸せに浸っていました。手術から約1年後、舞台『鶴女夢物語』で復帰。死にもの狂いで演じて、「三田佳子の芝居はすごい」と絶賛されました。それまで演技派なんて言われたことがなかったけど、初めて認められて嬉しかったですね。

がんを乗り切ったと思ったら、76歳で頸椎硬膜外膿瘍に罹患。ハンマーで殴られたような激しい頭痛が続いて死ぬかと思いました。四肢の麻痺が残る可能性もあり、引退も覚悟しましたが、難しい手術は成功。そのときにぐらぐらしている骨を自分の大腿骨の骨でつなげていただいたんです。おかげで頭がすっきりして、病気自体が治ったと同時に記憶力が増して、台詞も覚えやすくなりました。

79歳のとき、撮影直前に左肩に激痛が続き、左化膿性肩関節炎で手術が必要になり、チューブ6本で肩に入った菌を抽出しました。さすがに降板を申し入れたのですが、監督から「この役はどうしても三田さんにやってほしい」と言われ、頑張ってリハビリをし、退院と同時にロケ先の北海道に赴いて撮影をこなしました。病気になるたびに、何かしら副産物があるんです。

この30年間、大病もしましたが、どんなときも悲観的にはなりません。いつも思っていることは、「こだわらず、とらわれず、偏らず」。あとで弘法大師の言葉と知りましたが、知る前から私の芯にある生き方です。あれこれ言われたからどうしようと思わないし、どうしようもないことが起こっても、事実を受け止め、解決方法を考え、反省するときはとことん反省。

仕事も、あの人嫌い、この仕事嫌というのはなくて、82歳の私には「今度ね」はもうないから、どのご縁もすべて大切にしたいと自然に受け入れてきました。私を望んでくださり、感謝しかありません。大好きな仕事が途切れず、本当にありがたい。だから答えを出すために一生懸命やっています。なぜそこまで役作りをするのかと驚かれますが、楽しいから。表現することが好き。台詞覚えは大変だけど、やるっきゃない。少しは甘くしてね、と時々甘えています(笑)。

75歳からは表情や仕草、声音や言葉で美を補う

元気で頑張れるのは同い年の夫の存在も大きいかもしれません。夫は仕事を辞め、逆に私はしてるから、「もっと労わってよ」って言いたくなる。なのに、私のことお母さんと間違ってない?って言うくらい頼るので怒るんです。だんだん私のほうが強くなってきました(笑)。一緒に人生を重ねて、大変なことも乗り越えた今は、幸せだなと思います。

年齢を重ね、人生を重ねました。シワもいっぱいあって年取ったと思います。若い頃は怒っても可愛かったけど、ただ怖いだけになりました。70歳までは、美しさもオーラもあったけど、75歳過ぎたら、頑張ってもオーラは出ません。出ないなら自然体で楽しくいる。それが今の私です。だから、仕草、言葉、声音、表情、感情のすべてで美しさを補っていると思っています。先日油断をして、夜、犬の散歩にすっぴんで眼鏡もかけずに出かけたら、「あら、三田さんですか?」ってそんなときに限って言われたの。思わず、「違います」って誤魔化しちゃった。ごめんなさいね(笑)。

私、1日中家にいても、横になることがないから、夜ベッドに横になったときが、はーってリラックスしてすごく幸せ。でもそこから夜更かししちゃうんです。その幸せ感に浸りたくて。本を読んだり、台詞を覚えたり、自分の世界にいると気力が生まれて、3時間くらいあっという間。毎日寝るのは3時過ぎてます。これも私の元気の源。瀬戸内寂聴さんも、憑依したように夜中まで文章を書いて99歳まで生きられましたから、私もやりたいことをやって自然のまま過ごしたいですね。

40代のころの私

内モンゴル自治区の映画祭に参加した49歳のとき。よく共演させていただいた高倉健さんもいらしていて、娘に戻ったような若返った気持ちの写真です。

1989年に出した初めての著書『てとテと手』で篠山紀信さんに撮っていただきました。いちばん忙しかった頃ですね。

三田さんが40代に伝えたいこと

40代の声を聞くと、ふっと我に返り、「このままでいいのかな」と恐れを知るとき。でも、人生でいちばん華やぐ時期ですから、恐れを抱えながらも、華やかに人生を歩んでください。

《衣装クレジット》
ジャケット¥104,500 シャツ¥57,200 スカート¥90,200 イヤーカフ¥72,600 リング(左手薬指)¥220,000 リング(左手小指)¥137,500 靴¥74,800(すべてYohji Yamamoto)リング(右手薬指)¥12,600(ABISTE)ロングネックレス¥37,400 ネックレス¥48,400 イヤリング¥18,700 (すべてLa Chiave/DRESSUNREVE)

2024年『美ST』5月号掲載
撮影/下村一喜 ヘア・メーク/森田光子 スタイリスト/村井 緑 取材・文/安田真里 編集/和田紀子

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