【徹底解説】「インターナショナルスクール」基本のキ!選び方や受験、学費etc.

「英語で探究的に学ぶ力をつけさせたい」そんなママ、パパの需要増加でインターナショナルスクールは今開校ラッシュ。そしてVERY読者にも我が子のインター進学に興味がある人、実際にインターへ通っている人もこの数年とても多くなってきました。でも、いざインターを検討するときに、何から調べれば…?そんな人のために、基本のキから解説します。

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インターナショナルスクール、
基本の「キ」
インターナショナルスクールタイムズ
編集長・国際教育評論家

村田 学さんに聞きました


PROFILE
国際教育評論家として各メディアにも寄稿。プリスクールの元経営者であり、現在インターナショナルスクールにスクールオーナーとして経営参画し、カリキュラム、教職員の採用、生徒募集や保護者対応など現場対応も。国際バカロレアの教員向けPYPの研修を修了。

Q1

そもそもインターナショナルスクールって?

文科省のHPによると「一般的には主に英語により授業が行われ、外国人児童生徒を対象とする教育施設である」とあります。約150年前に日本に住む外国人のための学校、特定の宗教・理念を学ぶ民族学校として成り立ちました。その後、無宗教でどの生徒も受け入れる方針のインターナショナルスクール(国際学校)が生まれ細分化し、1960年代後半から現在のインターナショナルスクール(以下インター)が出現しました。例えばアメリカ人のためのASIJなどは前者で、海外から日本に駐在するアメリカ人と帰国生のための学校が後者です。1980〜90年代になると、インターで学ぶ日本人の子どもが少しずつ増加。歌手の宇多田ヒカルさんがアメリカから帰国しインターで学びながら歌手活動をしている姿が注目を集めたのもちょうどその頃です。同時期に、英語を使う環境で未就学児の保育を行うプリスクールも誕生し、東京だけでなく全国に開校しました。

現在のインターは老舗校、新興校と大きく2つのカテゴリーに分けられます。外国人学校が土台の老舗校は日本人の枠がそもそも少なく、新興校は日本人が多くいるという特色があります。また、国が認めた数校の「一条校(※注:学校教育法第1条に規定される学校)」のインターは、多様性と国際化を目的として全国に設置されています。これらは基本的に日本人を対象とし(一部帰国生のみ入学可能)日本の学校教育を受けたと認定されます。一方、それ以外のインター(通常のインター)は国からの助成金が少ない各種学校や株式会社として運営されています。いわゆる老舗のインターのみならず、最近増えているイギリス系のほか、インド系、シンガポール系、カナダ系、フランス系ほかプリスクールから設立される学校があります。

注意点として、日本の国籍を保持し国内に住んでいる親は、子どもを小学校、中学校に通わせる義務があります。ということは、全国に数校しかない一条校のインターでない限り、保護者の就学義務を履行したことにはなりません。例えば、一条校でないインターの小学部を終えて、中学校から一条校への入学を希望しても認められないことがあります。

Q2

インター受験までの理想的なスケジュールって?

理想的なのは2、3歳でプリスクールに入り、小学1年生の前段階、年中で老舗インターの幼稚部(キンダーガーデン)でチャレンジしてみること。年中から幼稚部がある老舗インターが多く、最も入りやすいという情報もあるほどです。また、4歳の段階では子どもより親を見るという利点もあり、親が対策をしっかりしていれば倍率が低い状態で受験できる良さもあります。ということは、逆算すると2歳ぐらいまでにプリスクール選びをしておくことが理想なのかもしれません。

ただし、上記が正解ということではありません。あくまで子ども自身の成長やご家庭の方針もあるので、インターへの進路を検討し始めたら、興味のある学校の保護者や関係者から話を聞き、準備を始めましょう。

ちなみに、いわゆる老舗のインターは翌年度の日本人の募集人数を学校内のアドミッション担当者のみが調整しているので、説明会で日本人比率を言ってくれるところもありますが、インターは外国人が優先のため日本人はマイノリティであるという考えで受けるのが良いと思います。日本人が最後の枠を分けてもらえるということです。新興校はまた別で、広く門戸を開けている印象です。そういったことを知るうえでも早めの対策を講じることをおすすめします。

Q3

何を基準に選べばいいのでしょうか?

国際バカロレア(IB)やケンブリッジなどの教育プログラムを導入しているインターや、学校全体を認定する機関の評価プログラム(WASC、CISなど12年間通えば日本の大学の入学資格を得られる)の認定を有しているインターなどもあります。そういったものを参考にするのもひとつ。

ただし、最も大切なのは学校と家庭の教育理念が合っているかどうかをしっかりと確認すること。世界の平和に寄与する人物に育ってほしいのか?はたまた日本で活躍する人物が良いのか?など将来像を見据えるのもひとつです。5校、6校ぐらいを比較すると徐々に見えてくるものがあるはずです。そのためには実際にフェスティバルやフードフェア(HPや各インターのSNSに情報公開されます)に足を運ぶのが望ましいと思います。フェスティバルでは実際に生徒さんや保護者、先生方が時に売り子さんになるなどして、立ち働いて接客してくれます。その様子を観察していると、ご自身のお子さんの先の姿に重なるか?あるいは保護者の方々の雰囲気がご自身に合っているか?先生とは上手にコミュニケーションが図れそうか?など様々なイメージが湧いてきます。もちろん学校の説明会に行くのも重要なこと。ただし、学校側はあまり小さなお子さんが来るのを良しとしない傾向にあるので、入学の1~2年前、5歳~6歳の適齢期になってから行くようにしてください。また、実際に通っている方のリアリティある話を聞くのもひとつです。

比較検討していると、日本文化を大切にしているバイリンガル教育を目指している学校、のびのびと情操教育を大切にしている学校、探究的な学びを追求している学校、などさまざまな特色が見えてきます。最近では学びの環境作りが上手なインターも多く、通うことが楽しくなるような視覚的な誘いなど、各インターの工夫も見えてくると思います。さらにインターの興味深い点は、その時の情勢によって人気が上下すること。だからこそ常に、最新情報をチェックしてください。最近ではHPだけでなく、インスタグラムなどのSNSでの情報発信も盛んになっています。

Q4

インターに通うことでのデメリットは?

学費の高さは、大きなデメリットです。年間授業料は、毎年値上がりをすることが多く、施設費なども高く、学校にもよりますが、年間300万円はかかります。

また日本の国籍があり、国内に住んでいる親は、子どもを小学校、中学校に通わせる義務があります。インターナショナルスクールの小学部、中学部は、多くの場合、義務教育を履修したとみなされません。もし子ども本人がインターへ入学したものの通いたくない、不登校になる、という場合は子どもの学ぶ権利を含め、各自治体の教育委員会などに相談しましょう。

また、母国語の揺らぎは中高生で顕著になってきます。聞く、話すという部分の母国語力は表面的にはできても、意味の深さや語彙の少なさなど読み書きは小学生のレベルのまま、というケースもあります。読み書きなど家庭でケアすることが重要です。ただその一方で、私がインター卒業生の母国語力として興味を持つのが、彼らが日本で働き始めてからです。メールや電話、会話もかなり社会人としてしっかりした母国語に育つことがあります。会社の社員研修の賜物かもしれませんが、社会人になると必要に迫られ母国語力が伸びるケースも多々あります。

Q5

村田さんが感じる、インター生の未来や可能性って?

日本におけるインターがますます増えているのが現状です。イギリス系のインターもさらに近年中に増えるという話も耳にしています。そんな中、2000年ごろから制度改正が行われ、インター卒業生が高等学校卒業程度認定試験を受けなくても受験できるよう日本の国立大学、公立大学含めて受験制度が整い始め、選択肢も増えてきました。国内大学進学への可能性が広がってきたほか、国内外の大学を卒業後、外資系企業やIT企業に就職、さらにその後MBAあるいは博士号を取得しに海外大学や大学院へ、など世界でも闘える人材になっていく傾向があります。例えば、英語で学べるコースがあり学費がかからないドイツの大学院へ、アメリカの大学院へ…など、グローバルな視点で学ぶ場所を選ぶ人が増えている印象です。いずれにしても国を超えた活躍をする人材が育成され、自身の目標や志次第でさらにグローバルに生きていく力が培われるのではないでしょうか。

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イラスト/masashi takeda 取材・文/金沢由紀子 編集/中台麻理恵 画像/AC
※一条校のインターナショナルスクールでない限り、保護者による就学義務を履行したことになりません。インターナショナルスクールへの就学についてはご自身、ご家族で判断ください。また、読者の体験談はすべてのケースに当てはまるものではありません。お住まいの自治体などへの確認をお願いします。
※VERY2024年10月号「インターナショナルスクールの最新が気になる」より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。