中嶋朋子さん(53)が、更年期を乗り切るうえで大切にしているものとは

ドラマ「北の国から」の蛍役を22年にわたって演じ、大勢の国民から親近感を持たれている中嶋朋子さんも現在53歳。幼い頃から自然の中で過ごしていた彼女が見つけた〝プチ自分空間&時間〟の作り方が、更年期を乗り切る味方になってくれたと言います。

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中嶋朋子さんprofile

東京都生まれ、53歳・俳優。1981年から2002年まで連続ドラマ「北の国から」で蛍役を演じたほか、映画や舞台などで活躍。昨年はドラマ「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)にも出演。チェリスト・四家卯大氏とのデュオライブにはファンも多い。2025年3月7日〜16日、舞台「イノック・アーディン」(新国立劇場小劇場)に出演。Instagram(@tomokonakajima0605)も好評更新中。


ホットフラッシュで「こんなはずじゃなかった」

俳優は体が資本。2歳からお芝居のお仕事をさせていただいているので、体とメンタルのケアやバランスにはかなり気を使い続けてきました。

自分というものが〝変わってきたな〟〝こんなはずじゃなかったのに〟と感じ始めたのは2〜3年前。舞台に立っている時に汗が噴き出るような感覚がありました。舞台では緊張感から汗をかくのはいつものことだから、あまり気にしていなかったんですが、それにしては量が多いなと思い始めたのがホットフラッシュ(*1)に気づいたきっかけ。周りの同年代や先輩方に聞くと「更年期はそういうものよ」「いろいろ来るよ〜」と言われて、「こういう年齢になると年齢なりのことになっていくんだな」と思うとなんとなく自分の中で腑に落ちました。

【*1・ホットフラッシュ】

更年期に起こる代表的な症状のひとつ。ホルモンバランスが崩れることにより、発汗と心拍数のアップから来るほてりが起こることも。日常生活に支障をきたすようであれば婦人科の更年期外来を受診するのがおすすめ。

無心になれる趣味で、心と体の声をすくいあげて

— ドラマ「北の国から」で1981年から長年にわたって黒板蛍という役を演じられた中嶋朋子さん。蛍の成長をリアルタイムで見てきた私たちにとって彼女の年齢の重ね方もリアルに感じられます。今も多方面で活躍される中嶋さんは自然体でありながら、その時々で自分が興味を抱く対象に対してとても敏感。好奇心や探究心を研ぎ澄ますことで、体の変わり目や不調をうまく乗り越えてこられたと言います。特に「北の国から」の撮影で9歳くらいから長い間富良野にいらしたので、自然物を観察する習慣ができたそうです。

症状としてはホットフラッシュくらいですが、全体的に自分というものが変化してきているなというのは感じます。でも、メンタル的な不調はあまりないかな。2歳から仕事を始めたので、自分のメンタルと向き合うことがとても重要。そのメンテナンスの術は心得ていたのでメンタル不調で戸惑うことは、今のところはありません。

でも、更年期は「今日から始まりますよ」という宣言をどこからも受けず、気づくといつの間にか「なんだか、前とは違うな」という感覚が少しずつ忍び寄ってくるもの。また人によって不調に対しての感じ方も違うと思うので、はっきり定義もしづらいものだと感じます。私の場合も、ふと気づくと、それまで当たり前だった通常の体調から外れているような感じがしてきたので、自然とそれに対して徐々に対処するようになりました。

いちばん役に立ったのが、私にはリフレッシュ方法がいくつもあったこと。小さいころから働いていたので、自分の場所を保つことが難しい環境にいました。そこで一瞬で自分の空間、時間を作れるような、ちょっとした工夫を絶えずしてきました。例えば香りをさっと身に纏ったり、コットンなどに含ませて近くに置くだけでマイフィールドを作って気分転換ができますし、大好きな鉱物をルーペで見て、石の中に無限の世界を感じることもできます。一時期はカゴ編みにもハマって無心になれる時間も作りましたし、日常に欠かせないお茶も大好きで、お茶を淹れる時間もいいリフレッシュになります。

私がいちばん好きなのが「岩茶」。世界遺産で育まれるお茶で、岩の豊富なミネラルを含んでいるので、〝長寿の仙薬〟なんて言い伝えられるほど、古来から尊ばれてきたお茶。「岩韻-がんいん」と言われる豊かな香りと深い味は本当に美しくて、飲むと、心も身体も芯から癒されます。岩茶との出合いは時々参加しているお茶会。そのお茶会では茶師の方が毎回、岩茶とお菓子をペアリングしてくださって、それが素晴らしいんです。そこで魅了されて自分でも淹れたりするようになりました。

〝好き〟のアンテナだけは常に敏感に

想像力や好奇心というものは自由で制限がないので、どんな環境でも自分次第。興味を惹かれるものを日々、少しずつ心の中にストックしておいて、自分の時間を豊かにすることを心がけています。感性が動いた瞬間を覚えておくと、ほんのちょっとした出合いがきっかけになって、のちのち素敵な展開があったりする。贅沢をするというわけではなく、〝好き〟のアンテナだけは常に敏感にしておいて、キャッチする能力を磨いておく。そうして仕事やお家のことをする時間の中に、自分の好きなことを少しずつ〝差し込んでいく〟んです。

実際にノートに気になった写真をコラージュするのもいいし、スマホの中にメモしておくのもいい。可視化して寝かしておくことで自分の中にいい感じに熟成され、次の行動に繫がったりする。クリップしたものを日常の隙間時間に細かく試していくことが、結果的に自分の気持ちをリセットさせ、次の行動の手助けをしてくれると思います。

最近は音楽に対するモチベーションが高まっています。楽譜はぜんぜん読めないし(笑)、楽器には無縁だったのですが、ハンドパンという楽器の音色に魅せられてしまい、京都の専門店まで行って手に入れて、夢中で練習しています。ハンドパンはスティールパンの親戚みたいな金属製の打楽器。叩く人によって表情の異なる魅力的な音を出してくれるから、比較的演奏しやすく、寝室に2台置いて、そばを通るたびにポンポーンとつい叩いちゃうんです。プロデュースしている朗読劇などでハンドパンもちょっと演奏したりしています。

自分のペースを変える勇気のキッカケに

— 中嶋さんの知的好奇心の枯れることのないパワーを感じると、こちらの好奇心の種まで芽吹いてきそう。俳優として多忙でありながら、中嶋さんと同じく演技の道に進んだ26歳の息子さんの子育てにも全力で取り組んでいらっしゃったことを考えると、「忙しいし、時間もないし、年だし、今さら何かを始めても…」というネガティブな思考は一掃されそうです。

好きなものにはビビッドでいたいけれど、頑張っているつもりは全くありません。逆に、ぜんぜん頑張っていないかも(笑)。ゆるい一瞬を見つけることだけは意識していますが、リラックスしなきゃ! と思っているわけでもありません。心がけているのは「自分を許してあげること」。その気持ちが根底にあれば、日常のふとした時間の中にエアポケットみたいな瞬間、宝物のような瞬間が必ずふっと湧いてくるのではないでしょうか。

更年期というのは、自分のことがだいぶん分かってきている時期。とはいえ、みんな忙しいし、頑張りすぎちゃうから、体や心の変化に気づかずに、意外にその時の自分の限界がどこにあるか知らずに無理していることも多いはず。そしてある時、急に壊れてしまうこともあるかもしれません。自分を責めちゃったり、こんなはずじゃなかったのに、自分は一体どうしてしまったんだろう? とぐるぐる考えてしまうかもしれません。でも、もしかしたら変調を感じる更年期って、実はチャンスなのかも。体と心から「ちょっと立ち止まってペースを変えてみて」というサインが送られているのではないでしょうか?

私はこんなんじゃない、と否定して無理するよりも、自分からのアラームにちゃんと反応してあげて、勇気を持って一時停止してみる、怠けることも許してあげる。それに気づく、ペースチェンジのいいタイミングを与えてもらったと思えば、更年期も悲観的にならずに過ごせるのではないでしょうか。

〈TOP写真〉オーバーブラウス¥52,800 パンツ¥47,300(ともにスズキ タカユキ)七宝焼イヤリング¥39,600 レースチョーカー¥27,500 バッグ¥39,600(すべてシリ シリ)スリッポン 参考商品(que)メガネ/本人私物〈末尾写真〉ブルーブラウス¥41,800(スズキ タカユキ)ビーズイヤリング¥36,300(タマス/タマス青山店)切子ガラスバングル¥110,000(シリ シリ)

撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/氏家恵子 スタイリスト/轟木節子 取材/柏崎恵理 撮影協力/イルピアット カチャトラ ※情報は2025年3月号掲載時のものです。

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