小島慶子さん、きょうだいの関係は 「近いからこそ難しい。自分だけのせいにしないこと!」

エッセイスト、メディアパーソナリティの小島慶子さんによる揺らぐ40代たちへ「腹声(はらごえ)」出して送るエール。今回は「親きょうだいとの関係」について。

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小島慶子さん

1972年生まれ。エッセイスト、メディアパーソナリティ。2014〜23年は息子2人と夫はオーストラリア居住、自身は日本で働く日豪往復生活を送る。息子たちが海外の大学に進学し、一昨年から10年ぶりの日本定住生活に。

『近いからこそ難しい。自分だけのせいにしないこと!』

きょうだいとの関係、うまくいっていますか? 揺らぎ世代のSTORY読者には、悩んでいる人も多いようです。

関係が近いからこそ、お付き合いが難しい。幼少期にしんどい関係だった場合は尚更です。いい年をして親に腹を立てたり、きょうだいにわだかまりを感じてしまう自分は人間として未熟なのではないか? 器が小さいのではないか? と悩んでいる皆さん、どうか罪悪感や自責の念を持たないで。そんなの自然現象です! 人としてナチュラルな反応なので、まずは安心してください。

私も、そんな親きょうだいとの関係に悩んだ一人です。子どもの頃からいろいろあって、10代で摂食障害(過食嘔吐:食べ吐きを繰り返して、やめたくてもやめられない状態)になり、働き始めてから家族との関係に原因があるのかもしれないと気づきました。

きっかけは、入社3年目ぐらいの時に会社の診療所で受けた精神科のカウンセリングです。望んで就いた仕事でしたが、当時のテレビ業界の雰囲気や若い女性アナウンサーに求められる役割に馴染めず悩んでいました。加えて、愛が強すぎて過干渉気味な母が、私の出演番組を熱心に見ては感想を送ってくるのです。帰宅すると母からの長い手書きファクスの感熱紙が一反木綿のようにベローンと吐き出されていて、読むとネガティブな言葉が頭を離れなくなりました。良かれと思っての親心なのですが、あれは本当にきつかったなあ。他人と比較されるのもつらかったです。

当時見ていたアメリカのコメディドラマ「アリー マイ ラブ」では、弁護士事務所に勤める登場人物たちがしょっちゅうカウンセリングを受けていました。悩むとすぐにカウンセラーのところに行くのです。それを見て、しんどい時にはカウンセリングを受けるといいんだな! と素直に学習した私は、会社の診療所でもカウンセリングが受けられると知って、半ば好奇心から早速受診することに。ドラマのおかげで精神科に対するネガティブなイメージがなかったのが幸いしました。

「あの、親との関係が苦しいんです」とまずは母娘関係から相談してみました。先生の話を聞いて、目の前がパッと開けたような気がしました。専門家が見て問題があると分かったのなら、解決のしようがあるのかもしれないぞ! と思えたのです。

それまでは、親きょうだいをしんどく感じる自分をただ責めていました。自分の根性が悪いからこんなに苦しいのだと。でも人間関係という文字通り、相手との関わり合いの中で苦しいのですから、客観的に関係を把握し、自分と相手を研究することが不可欠なんですよね。それには安心して思いを話せる場所と、手助けしてくれる専門家が必要です。

過食嘔吐は30歳の出産をきっかけにおさまったものの、夫婦関係の問題と2度目の出産が重なって、33歳で不安障害という精神疾患を発症。投薬を受け、症状は半年ほどで落ち着きました。今でも病気とは二人三脚です。疲れたり環境が変化したりするとパニック発作や不安の症状が出やすくなるので、いつも薬を持ち歩いています。メンタルの病気は辛いですが、私の場合は発症した時にすでにカウンセリングを受けていたのは幸運でした。すぐに医師の診察を受け、治療を開始することができたからです。

結果としてカウンセリングは、先生を変えながら断続的に20年以上続きました。30代の10年間は親きょうだいとの問題を解明するのに費やし、40代では夫婦関係について考え続けました。ときには、相手と距離をとり時間をかけることも必要です。苦しい気持ちは相手に対する怒りや憎しみ、悲しみや痛みなどが複雑に絡み合っています。専門家の助けを得てそれを解きほぐし、整理し、客観的に眺めてみることは、回復する上でとても助けになりました。今は親きょうだいとは適度な距離をおいて、負担にならない交流をしています。

もし今ちょっと心が重い人は、まずは本を。できればネットの匿名の文章よりも、書籍化された体験談や臨床心理士など専門家の本を何冊か読んでみてください。辛い時には我慢しないで専門家に相談しましょう。相性がイマイチならなら先生を変えるのもありです。私も何人目かで良いご縁に恵まれました。心の悩みは脳の悩み、つまりは臓器の悩みですから、健康管理の一環です。問題に気づいて早めに受診した自分を褒めてあげてください! これも上手に揺らいで人生の波を乗りこなす、知恵の一つかもしれません。

文/小島慶子 撮影/河内 彩 ※情報は2025年3月号掲載時のものです。

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