【四十肩、五十肩】はなぜ起こる? 自宅でできる予防法も!
肩周りを動かすと、肩や二の腕に痛みが……。この「特に何もしていないのになぜか肩や二の腕が痛い」現象は、四十肩や五十肩が原因かもしれません。四十肩・五十肩を悪化させやすくする要因や、自宅でできるセルフケアをご紹介します。
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1.その痛み、実は四十肩(五十肩)?

「四十肩」「五十肩」は発症年齢によってそれらの名で呼ばれることが多いですが、正式には「肩関節周囲炎」といいます。加齢に伴い肩周辺の筋肉や靱帯などの組織が老化し柔軟性が低下することで、炎症が起こるのが原因です。
症状としては、肩や首などの筋肉のこわばりや痛み、動きの制限などがあります。肩から腕にかけてのびる筋肉や靱帯などにも炎症が起きて痛みが生じるため、肩だけでなく二の腕に痛みや違和感を覚えることもあります。
四十肩・五十肩は、男女問わず加齢に伴い発症する可能性があります。
特に女性は更年期に入ると、女性ホルモン「エストロゲン」の分泌が急激に減少することで発症しやすくなります。
エストロゲンには、関節や筋肉をしなやかに保ち、体の中で起こる“プチ炎症”を自然と鎮める役割があります。ところが、更年期になるとそのバランスが崩れ、体内の炎症反応をコントロールしにくくなります。その結果、今までは何でもなかった軽い刺激や疲労が引き金となって、肩や二の腕などの関節周辺に痛みが出やすくなるのです。
2.四十肩・五十肩の発症、悪化につながる要因

四十肩・五十肩は日頃の姿勢や生活習慣などによって発症、悪化しやすくなります。具体的な要因を3つ解説します。
①猫背や巻き肩などの不良姿勢
日常生活の中で知らず知らずのうちに陥ってしまいがちな「猫背」や「巻き肩」。この姿勢が続くと、肩甲骨の動きが制限され、肩関節周辺の筋肉や腱に偏った負荷がかかってしまいます。
②運動不足による筋肉や腱の柔軟性の低下
加齢とともにどうしても減りがちな運動量。体を動かさない生活が続くと、筋肉や腱の柔軟性がどんどん失われ、ちょっとした動きでも肩関節に負担がかかるようになります。
その結果、肩周辺の組織に炎症が起こりやすくなり、「痛くて動かせない」という悪循環に陥ってしまいます。
③生活習慣病による血管の老化
高血圧や高血糖、脂質異常症といった生活習慣病は、血管を老化させる原因になります。血流が悪くなると、筋肉や関節に十分な栄養が届かず、回復力が低下。炎症が慢性化しやすい状態に。
特に更年期以降の女性は、ホルモンバランスの変化で血流の調整機能も低下しがちで、影響が出やすくなります。
3. 四十肩・五十肩は病院に行くべき?
四十肩・五十肩の経過には、突然激しい痛みがあらわれる「急性期」、その後にぶい痛みが続き肩周りの動きが制限される「慢性期」、さらに少しずつ動きが改善する「回復期」という3段階があります。
個人差はありますが、急性期は約2週間、慢性期は約6カ月続き、回復までに約1年、人によっては2〜3年の時間を要します。
自然に治ることもありますが、放置すると悪化して回復に時間がかかる恐れがあります。「四十肩(五十肩)かも……」と感じたら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
治療法としては、急性期は安静にして痛みを抑えることを心がけ、慢性期や回復期には肩関節の動く範囲を広げるための内服や運動などを行います。
また、四十肩・五十肩は、基本的に片側に発症し、再発することはほとんどありません。ただし反対側が発症したりまれに再発したりする可能性があるため、治ったあともセルフケアで予防しましょう。
4.自宅でできるセルフケア
そんな四十肩・五十肩の痛みを和らげたり再発や反対側での発症を防止したりするために、今日からすぐに取り入れられるセルフケア方法をご紹介します。
①マッサージ
二の腕や肩の痛みは、周囲の筋肉が硬くこわばっているサイン。まずは緊張をゆるめてあげましょう。
やり方:
両手で二の腕を軽く包むように持ち、下から上へ、やさしく円を描くように撫でるだけ。ゴリゴリ押す必要はありません。手のひらの温かさと圧で、血流がふわっと巡り出します。
ただし、肩や腕などの痛みが強い場合にはマッサージはNG。痛みが和らいでいるときでも自己判断で行うと症状が悪化する可能性があるため、医師に相談のうえ行いましょう。
②ストレッチ
「腕が上がりにくい」「肩甲骨がガチガチ」そんなときこそ、軽いストレッチで体を“開いて”あげましょう。
おすすめのポーズ:
(1)両手を腰の後ろで組み、肩甲骨を寄せるように胸をゆっくり開きます。
(2)組んだ手を少しずつ下に伸ばしていくと、二の腕や肩甲骨周りがじわーっと伸びるのを感じられるはず。
呼吸を止めず、5秒ほどキープして3回ほど繰り返してみてください。テレビを見ながら、キッチンでお湯を沸かしながらでもOK!
ただし、マッサージと同じく、痛みが強いときに無理にストレッチをすると悪化につながる恐れがあります。医師の指導のもと、無理のない範囲で行いましょう。
③お風呂で血行を良くする

温めは、最大の味方!ぬるめのお湯にゆっくり浸かることで、筋肉がほぐれ、肩関節周辺の血行も改善します。
効果的な入り方:
38~40℃のお湯に15分程度が目安。肩までしっかり浸かる「全身浴」がおすすめです。入浴中に肩や二の腕をゆっくりさすったり、円を描くように腕を回したりするのも◎。
アロマの力を借りて:
ラベンダーやユーカリなど、筋肉の緊張をほぐす香りを取り入れれば、リラックス効果が倍増します。
④タオルで肩を支えて安眠する
夜、寝返りを打つたびに肩に違和感が……という方も少なくありません。そんなときにおすすめなのが「タオル支え寝」。これで、寝ている間の負担を軽減できます。
やり方:
バスタオルをくるくる巻いて筒状にし、痛みのある側の腕の脇にそっと挟むようにして眠ります。腕の重みがタオルに預けられ、肩関節への負担が和らぎます。
または、枕の下にタオルを重ねて高さを微調整することで、自然な姿勢で首から肩が安定します。眠りの質もよくなるのでおすすめです。
⑤体質に合わせた漢方薬

セルフケアにもうひとつプラスしたいのが「体質に合った漢方薬」。特に、先述したとおり更年期の体はホルモンバランスの変動により炎症が起きやすくなったり血流が悪くなったりして、四十肩・五十肩になりやすくなります。
炎症や血流を改善するために、例えば、以下の漢方薬がおすすめです。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血流を改善して体を温めるとともに、水分代謝を整えて余分な水分を排出し、肩こりやむくみを改善する効果が期待できます。疲れやすく手足が冷えやすい方に向いています。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血液循環の滞りを取り除いて血流を改善することで炎症を取り去るとともに、女性ホルモンの変動による不調や肩こりなどの不調に働きかけます。上半身はのぼせやすいのに足が冷える方に向いています。
漢方は、単に症状を抑えるだけでなく「巡らせて、整えて、根本から和らげる」のが得意分野。信頼できる薬局や漢方医に相談して、自分にぴったりの処方を見つけてください。

薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。
編集/根橋明日美 写真/PIXTAほか
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