申真衣さんがウィンジー・シンさんと語る「女性起業家同士のコミュニティの力」とは?【カルティエ ウーマンズ イニシアチブ】

『VERY NaVY』で、現代における女性活躍のアイコンとして期待される申 真衣さんのエンパワメント対談連載。2025年10月号では、『カルティエ ウーマンズ イニシアチブ』グローバル プログラム ディレクターのウィンジー・シンさんと対談しました。

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ウィンジー・シンさん × 申 真衣さん

様々な分野の女性リーダーと“女性のエンパワー”を目指す

「自分の経験のフィードバックが次世代のための課題」ーー申さん
「挑戦を諦めないためにロールモデルの存在は重要」ーーウィンジーさん

女性が輝けば、人類・社会全体が輝く。カルティエは2006年に、社会課題に取り組む女性インパクト起業家を支援する国際プログラム『カルティエ ウーマンズ イニシアチブ(CWI)』を創立。今年5月22日、これまでのフェローたちの功績を称え表彰する、第2回『カルティエ ウーマンズ イニシアチブ インパクト アワード』が大阪で開催されました。VERY NaVYは、申真衣さんとともにその授賞式に参加。挑戦を諦めない受賞者たちの力強いメッセージから感じたのは、様々な分野の女性リーダーと申さんのクロストークによって“女性のエンパワー”を目指す、この連載との親和性。ということで、今回はCWIのグローバル プログラム ディレクターを務める、ウィンジー・シンさんをゲストにお迎えしました。

申さん:お会いできて光栄です。今日は授賞式の前に、今回受賞された9人のフェローの方々のラウンドテーブルにも参加。ビジネスの着想のきっかけやCWIの支援について、貴重なお話を聞かせていただくことができました。

 

ウィンジーさん:お忙しいなか、ありがとうございました。フェローたちへ積極的に質問をしてくださったそうで、おかげで活気のあるセッションになったと報告を受けています。

 

申さん:こちらこそ、ありがとうございました!ラウンドテーブル以前に私が気になっていたのは、CWIが“資金の援助以外にもたらすもの”でした。フェローの方々のエピソードから伝わったのは、それぞれが支え合うコミュニティの力。女性起業家としての悩み、障壁について共有し、励まし合う心強さは資金以上のインパクトがあると感じました。

 

ウィンジーさん:そうなんです。多くのフェローたちがCWIに応募したきっかけは、ビジネスをサポートしてくれる助成金の存在だったと思います。スタートアップビジネスにおいて、資金調達は最も重要なニーズ。CWIはそれに加え、ビジネスの成長に必要な知識やスキルを習得するプログラムによって成功を支援しますが、最終的にフェローたちが最も価値があったと振り返るのは、CWIを通じた出会いやネットワーク。女性のアントレプレナーたちが“ひとりではない”“みんなで一緒にサバイブしていく”と、起業の段階で感じる孤独や困難を分かち合える仲間がいることはとても大切で、アントレプレナーシップを高めるものだと思っています。

 

申さん:女性の起業家が孤独に陥りやすいのは、やはりまだその総数が少ないからですよね。子育てを担っている父親が、ママたちのコミュニティに入りづらく、孤独を感じてしまいがちなのと、きっと同じ。異性にビジネスの相談を持ちかけると別な意味が生まれてしまう懸念もあり、日本でも女性起業家へのハラスメント被害が問題化されました。私自身の起業のケースだけでは評価しにくい部分はありますが、日本のスタートアップにおいては女性のほうがファイナンスしにくい、同様の会社でもバリュエーションが低いといった問題はあると感じています。今後の前向きな変化のために、次のジェネレーションの女性起業家に対して、私なりの経験や意見を積極的にフィードバックしていくことは課題にしています。

 

ウィンジーさん:素晴らしいですね!あなたのように実際に起業を経験した人たちのフィードバックこそ、次世代の女性起業家に勇気とエネルギーをもたらします。女性に限らず、男性もアントレプレナーシップの在り方を追求し、社会に変化をもたらすためにも、ロールモデルの存在はとても重要です。

申 真衣さん
『理想を追いながらも必ず「利益を出す」。ビジネスの持続に不可欠』

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「トリニティ」ネックレス[WG×YG×PG×DIA]¥1,980,000イヤリング¥555,500リング¥990,000[ともにWG×YG×PG](すべてカルティエ/カルティエ カスタマー サービスセンター)ジャケット¥195,800パンツ¥122,650(ともにトーテム/トーテム クライアントサービス)トップス¥25,300(アモーメント)

―――ウィンジー・シンさんと、申真衣さん。おふたりはお名前だけでなく、ともにゴールドマン・サックス出身というキャリアの共通点もあるんですよね。

 

申さん:そうなんです。直前にそのことを知って、初対面の緊張がちょっとだけ和らぎました(笑)。そこでお聞きしたかったのは、金融からCWIに活躍の場を移した経緯です。

 

ウィンジーさん:金融での最後のキャリアはファイナンシャルセキュリティに関わるもので、シリコンバレーの多くのスタートアップ企業と交流がありました。でも、そこで目の当たりにしたのは、こんなにも多くのスタートアップがありながら、女性創業者、女性投資家が圧倒的に少ないという現状。同時に世界ではSDGsの目標にかなり遅れが出ていて、インパクトビジネスは経済的に持続がむずかしいという問題も明らかに。それでは未来をアンロックできない……。女性のインパクト起業家を支援するCWIとの出会いは、とても運命的だったといえます。

 

申さん:必然ともいえるキャリアの転機だったのですね。ちなみに女性起業家においては一般のビジネスでも資金不足という問題が立ちはだかっていますが、CWIが社会課題に取り組むインパクト起業家の支援にフォーカスするのはなぜでしょうか?

 

ウィンジーさん:大変興味深い質問ですね。今、世界の女性に大規模な富の移転が始まっています。現在、運用可能な資産のうち女性が管理する資産は約30%と言われていますが、富の移転が終わる頃には50%になるとも言われているんです。女性が力を持つことにより、女性のアントレプレナーの環境も、在り方も変わっていくことでしょう。そして女性たちは、歴史的に環境問題に関心を示すことがわかっています。女性が富を持ち、よりよい未来に貢献したいと考える……。CWIが女性のインパクト起業家にフォーカスするのは、社会をよくするためにビジネスがとても重要な力を持つということを信じ、示していくためです。

 

申さん:納得です。インパクトビジネスの力を持続するためには「ビジネスで利益を出すことが必要」とラウンドテーブルでフェローの方が語っていたのが印象的でした。私も同意です。

ウィンジー・シンさん
『世界の富が女性に移転。女性起業家の在り方も社会も変わっていく』

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ウィンジーさんがこの日着用していたドレスはCWIのフェローが手がけたものだそう。

大阪・関西万博でのウーマンズ パビリオン オープニングセレモニーの翌日に開催された「カルティエ ウーマンズ イニシアチブ インパクト アワード」の授賞式。インパクト拡大に焦点を当てたこのアワードの受賞者たちには助成金、ビジネスプログラムなど、1年間のフェローシッププログラムを授与。

ウィンジーさん:そうですね。ビジネス自体の持続可能性は、収益のみ。起業当初の収益が少ない頃、ビジネスと社会貢献のバランスをどうとるか、フェローたちがジレンマに陥ってしまうケースはよくあります。でもそれは、PMF(製品適合市場)を見つける初期段階にはよくあることで、自分たちのビジネスのスイートスポットを見極めるための乗り越えるべき調整の時間だと考えています。

 

申さん:フェローの皆さんからは、すでにいろんな壁を乗り越え「これからも闘うぞ!」といったエネルギッシュさを感じました。創立19年目を迎えたCWIですが、これまで330人のフェローをサポートしてきたなかで、ウィンジーさんの記憶に残る、それこそ強いインパクトを与えた方はいらっしゃいますか?

 

ウィンジーさん:日本にちなんだお話をさせていただくと、日本人で過去に最終候補に残った方がいらっしゃいます。CWI応募の申請書は英語での作成が必須ですがその方の申請書からはビジネスの事業・財務計画が、非常に強固であることがわかりました。ですが、実際のプレゼンテーションとなると、彼女は通訳を同伴していたのですが、成し遂げたいことの本質の理解に私たちが時間を要したことも事実。彼女のようなハイポテンシャルな人材が、言語の壁によって埋もれてしまうのはもったいない……。このことがきっかけとなり、私はCWIのプログラム ディレクターに就任した際、応募前に参加できる言語学習プログラムを用意しました。

 

申さん:そのエピソードを聞いて、金融時代に英語が苦手なのを理由に摑むべきチャンスを逃したという、悔しい経験を思い出しました。CWIの素晴らしい支援が、日本人女性起業家たちの活躍の後押しになることを期待します。最後にウィンジーさんに質問したいことがあります。ラウンドテーブルの際、フェローの方が「ビジネスを理解してもらうための対話のきっかけとして“○○は大事”とプリントしたTシャツを配り、それぞれに大事なものを問うプレゼンテーションをした」というお話をされて、その方にとっての○○=「リスク」でした。私のビジネスにおいての○○は「規律」、です。ウィンジーさんはどんな言葉を入れますか?

 

ウィンジーさん:最後に壮大な質問(笑)。そうですね……「パーパス」です!

profile
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申 真衣さん
1984年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。2018年に当時最年少でマネージングディレクターに就任。現在は共同創業による株式会社「GENDA」の取締役。「NOT A HOTEL」社外取締役も務める。モデル、メディア出演もこなす2児の母。

 

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ウィンジー・シンさん
カルティエ ウーマンズ イニシアチブ グローバル プログラム ディレクター。ステート ストリート グローバル アドバイザーや、バークレイズ グローバル インベスターズ(現ブラックロック)、ゴールドマン サックスなど、投資マーケットで15年間にわたりキャリアを築き、2019年より現職。

今月はタキマキさんの作り方をたっぷり掲載♡
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撮影/辻田美咲 スタイリング/安西こずえ ヘア・メイク/カドタマキコ 取材・文/櫻井裕美 編集/水澤 薫
*VERY NaVY10月号『申 真衣さんの今、話したい人』より。詳しくは2025年9/5(金)発売VERY NaVY 10月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。