【湯布院のオーベルジュ】でシェフと収穫体験ができる。親子で本物の「食育」旅を|STORY

本物の「食体験」が親子でできる、知る人ぞ知る大分県・湯布院のオーベルジュ「ENOWA YUFUIN」(*以下ENOWA)では、ニューヨークの有名レストランで研鑽に励んだエグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォ氏や、野菜のプロである京都  石割農園の石割氏など経験豊富なスタッフとのコミュニケーションを通して、〈ENOWA FARM(*以下ファーム)〉などで今までにない収穫をはじめとする「体験による学び」を実践。子どもにとっても、親にとっても、一生モノの財産になること間違いなし!そんな貴重な体験ができるプログラムやオーベルジュの取り組みを取材してきました。

オーベルジュ「ENOWA」の最大の魅力である”土地の恵み”を最大限にいかした自社運営の農園ENOWA FARM

湯布院にあるオーベルジュENOWA。その広大な敷地は、約44,000平米。外観からは想像がつかないほど緑あふれる敷地が広がり、そこではゆったりとした客室、温泉、プール、サウナ、エステ、美しいガーデン、食事、細やかなサービス…で心身ともにじっくりと癒してくれます。湯布院の景色と山を眺めながらゆったりと過ごせる部屋はいずれも美しく機能的。心地よい時間が約束されています。
「ENOWA」が他とは一線を画するのは、”食”というキーワード。Farm to Tableという言葉はよく聞きますが、オーベルジュのオープンとともに、美食家の中で話題となったのはここでの食事。創始者が世界中を食べ歩きながら、このオーベルジュの思想にあった人を探していた時に出会ったという、「JIMGU」エグゼクティブシェフ/タシ・ジャムツォさん(以下タシ氏)の料理、その料理の屋台骨となるファームを監修する京都  石割農園の石割照久さん(以下石割氏)が肝となっています。

ファームを通して湯布院の「食の恵み」を伝える2人のプロ

「JIMGU」エグゼクティブシェフのタシ・ジャムツォさん 

ENOWA開業の3年前からニューヨークから湯布院へと拠を移し、地元の生産者たちを巡りファームを作り上げてきたタシ氏。ENOWAの魅力である”食”の軸である総料理長の彼に、食とFARM DRIVENなどについて、お話を伺いました。

毎朝まずファームに足を運び、その時に採れた野菜によってその日の料理メニューを構築し直すというタシ氏。ニューヨークにある、農場と一体型となっているレストラン「ブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズ(Blue Hill at Stone Barns)」で4年間スーシェフを務める中で、”FARM TO TABLE(農場から食卓へ)”スタイルやサステイナビリティーの哲学に触れた彼が、ENOWAで目指しているのは”FARM DRIVEN”。湯布院の肥沃な土地、美しい水を生かしながら、ENOWAの自社農園で今季は55品種、年間を通じては260品目30種のハーブを生産しています。有機栽培のファームには、蝶々や蜂など虫たちが元気に飛び回り、野菜ひとつひとつは艶やかで逞しい。大量に作るのではなく、必要な量を必要なだけ作っているので、1品目の量は少なく多品目。野菜そのままの形を生かすことができる小さな野菜を好むタシ氏の希望もあり、ズッキーニやトマトなども多彩です。各国からFARMに興味のある人をインターンとして受け入れるシステムもあり、今後は立命館アジア太平洋大学(APU)とも提携していく予定とのこと。この畑の監修は、有機栽培かつ独自の野菜作りで名を馳せる「京都  石割農園」の石割氏が務め、タシ氏の希望やENOWAの思想をファームで実現させています。

ーータシ氏さんが食に興味を持ったキッカケとは?
タシ氏「高校の頃、家族でアメリカに移住しました。スペイン料理屋でバイトを始め、それまではチベット料理しか食べたことがなかったので、一気に食に対する世界が広がりました。料理からその国の文化のことも勉強できるということも楽しかったんです。元々チームスポーツが好きなので、厨房で働く時のチーム感も自分に合っていました。そこで料理の道へ進むことを決めました」

ーー「ブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズ(Blue Hill at Stone Barns)」を料理を学ぶ場として選んだ理由はなんでしょう?
タシ氏「Blue Hill at Stone Barnsに誕生日で伺いました。料理、野菜、環境が繋がっていることに感動し、自分が持っている考え方に近いと思ったんです。私は小さい頃から自分たち食べるものは自分たちで育ててきていて、それは当たり前でした。この店で、そのことの素晴らしさを改めて感じさせてくれたんです」

ーータシ氏が考える「FARM DRIVEN」とは?
タシ氏「自分たちがやってきているのは、畑にあるものをベースにしてメニューを考えるということ。その日にあるものを最大限料理に活かします。畑は自然が相手。悪天候で使いたかった野菜がダメになったりすることもありますが、そういう時も臨機応変に対応しています。ベースのメニューはありますが、その日の午前中に採れた野菜によって毎日少しずつ変化をしています」

ーーENOWAとの出会いは?
タシ氏「ENOWAは2023年にオープンしましたが、私は2020年に大分に住み始めました。畑を立ち上げ、地元の農家や生産者さんに協力をいただきながら準備していた3年間です。日本の食や職人さんたちを尊敬しているので、とても楽しく不安はなかったんです。私は世界のどこでも住めるのかもしれない(笑) 畑の監修をしてくださっている石割さんの「京都  石割農園」にも何度か足を運びましたが、野菜が本当に美味しく、料理人の為、食べる人の為に野菜を育てているということもとても感動しました。農園を手伝ってくださり、頼もしいです」

ーー子どもたちとのプログラムも今後少しずつ増やしていく予定でしょうか?
タシ氏「子どもたちとのプログラムにはトライしていきたいと思っています。子どもたちにはまず食べることを楽しんで欲しい。どうしても子どもは好き嫌いがあります。だからシェア皿で料理を提供すれば、誰かが残したことがあまり気にならないはず。それにみんなが食べているのを見て、苦手だと思っていた野菜を口にしてみて、ここで食べてみたら美味しかったと感じてくれたらいいなと思っています。世の中には色々なアミューズメントがあり、それも楽しいとは思うけれど、畑を遊び場にして実際の野菜に触れたり収穫体験などを通じて、楽しさも感じてもらえたら嬉しいです。色々な発見があると思うので」

ーーこれからやってみたいことはありますか?
タシ氏「毎日自然と共存しています。野菜の味は天候や手のかけ方でその日ごとに変わっていきます。ベースのレシピはあるけれど、毎日その野菜の味をみながら、調整しています。そういう部分の厨房全体の意思疎通がもっとスムーズになっていったらいいなと思いますし、畑に携わる厨房スタッフだけでなくサービススタッフも畑に出向く時間がもっと増えたらいいなと思っています。ゆくゆくは、その日摘んだハーブでハーブティーを作ってお出しするなど、やりたいことはたくさんあります。そして、サスティナブルにも色々な方法があり、それについては常に考え続けていかなければならないと思っています。メニューやルールが少ない分、全員が同じ方向を見ているという軸が大事だと思うので、信頼関係を築いていきたいですね。仕事以外の時間を過ごすことも大切だと思っているので、明日の休日はみんなで由布岳に登ってくる予定です。

 

【シェフ/タシ・ジャムツォさん profile】レストラン「JIMGU」のシェフを務めるタシ・ジャムツォ。チベットの出身。NYのレストランでシェフの修業を重ね、FARM TO TABLEを提唱するブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズで副調理長を務めた流。その後、ENOWAの思想に共鳴して日本に移住。以来、野菜や果物の生産者や漁港、完全放牧で豚を育てる牧場など、休日ごとにいい食材との出会いを求めて全国を飛び回り、自社農園にもスタートから積極的に携わっている。

ミネラル豊富な湯布院の土を活かした自社農園。

 

午前中にはファームへ足を運び、味見をしながら野菜を選ぶタシ氏。

 

インドネシアの大学からインターンシップを受け入れており、生き生きと農業を学んでいる。

 

タシ氏の収穫。カゴの中にはカラフルで艶やかな野菜が詰まっている。

 

料理で使った後のヒオウギ貝は、自然のカルシウムとなる。

 

京都 石割農園を営む石割照久さん

ENOWAの自社農園を監修する「京都  石割農園」石割氏。独自の野菜づくりと成熟された技術によって食の世界では知らない人はいないという彼に、ENOWAとの取り組みについてお話を伺いました。

ーー石割さんと野菜づくりの出会いとは?
石割氏「実家が江戸時代から続く農家なんです。自分が継ごうと決めた時に、普通の農家ではなく面白おかしく楽しく農業したいと思い、気になることは全て試してきました。アトピーの方に出会い農薬を使わない野菜づくりに取り組み始めたり、料理人が探し求める品種を作ったり、挑戦していくことがとにかく楽しいんです。こちらが楽しくしていないと、野菜は美味しくなりません。素直に育ってくれるよう、楽しく育てていくことが大事だと思っています。大きく言えば愛情を注ぐということだけれど、自分が楽しくしないと野菜もそっぽ向くんですよね」

ーーENOWAとの畑づくりで石割さんがこだわってい流こととは?
石割氏「まず初めに「家庭菜園のつもりでやりましょう」と伝えました。自然相手なので、大きく始めると辛くなってしまうことが多い。家庭菜園のような気持ちで始めれば、楽しい気持ちで続けていけると思ったんです。厨房スタッフさんたちなど、皆さんが畑を手伝いに来てくれることで、野菜を理解していき、お客様に何か聞かれた時にもさりげなく答えられるようになっていく。それが大事だから、みんなで一緒に畑を作り上げましょうと声をかけました。自分が理解をしていると、素直に話せるようになるんです」

ーーENOWAは、畑と厨房が密接で循環していると感じます。
石割氏「循環型のサイクルはスタートから強く意識してきました。この仕組みが湯布院の街全体に広がっていくといいなと思っています。例えば、具をとった後の貝殻は肥料に生まれ変わるので、柑橘系の樹の下に敷き詰めています。知識を持ち、分別することで、捨てるはずだった貝殻や昆布が肥料に変わるんです。農業は化学。自分がそういう視点で農業をやってきて、裏付けをとって分析してきたことで、循環型の仕組みへのアイディアは尽きませんし、それに対してENOWAは丁寧に応えてくれています」

ーーこれからENOWAで実現したいことはありますか?
石割氏「この循環型のサイクルをもっと進めていきたいです。そしていつかお米も作りたいと思っています。美味しい野菜を作るにはまず土。そこの風土に合った土を作ることが大切です。今後さらに畑の面積が広がる予定なので、野菜が持っている本来の味を引き出してくれる土づくりにまずは励んでいこうと思っています」

【石割照久さんProfile】大学法務部卒業後、ハイテク産業の営業技術職 農業に就く。「石割農園」を継ぎ、一般市場の野菜ではなくプロ向けの野菜を生産。農業コンサルタントの仕事も手掛ける。

味に奥行きのある獲れたての野菜を使用した色鮮やかな食事の感動体験

まず料理が出てくると、目を奪われる色彩とデコレーションの美しさ。絵画のように美しい料理を口にすると、野菜本来の味がしっかりと感じられます。全ての料理は、その日のファームから決まり、生産地からテーブルには最短で届けられていることがENOWAでは当たり前のこと。「トマト1つでも、品種によって違いがあるのはもちろんのこと、その年の気候、その日の天候によって味が変わります。味が変わり、それを最大限活かすには、同じレシピは通用しないんです。塩の量など細やかな部分で日々調整をしています」とタシ氏が話すように、畑、野菜、料理は共に変化する日々。それによって、今まで感じたことのない食材の魅力を感じることができます。この日獲れた甘く濃いトマトは、その味そのものを楽しむためにマリネで。

濃厚なアスパラガスのスープは朝食にピッタリ。

 

右の青白い卵は、栄養価の高い南米チリのアローカナ。左は、甘みのある日本の紅葉という品種。好きな方を選ぶことができる。

 

アローカナは目玉焼き、紅葉はオムレツに適している。

 

2025年秋以降にもっと親子で楽しめる「ENOWA ファミリープラン」を計画中

旬の果物や野菜を使ったかき氷は今まで食べたことのない味!

 

雄大な由布岳の麓。どこまでも広大な景色に圧倒される。

 

由布岳の麓でのピクニックは、タシ氏お手製ランチボックス付き。

 

ブルーベリー収穫。そのシーズンごとに内容が変化する。

 

今後はファミリープランも少しずつ増やしていく予定というENOWA。要となる“食”、そして“湯布院という土地”、この2つをENOWAらしく伝えていきたいとのこと。今回はファームで獲れた野菜をシロップにしたかき氷体験。次に雄大な由布岳麓のピクニックは、好きな場所に腰をおろし、タシ氏特製のランチボックスを。そしてタシ氏が自ら「縁」を繋げた生産者さんたちの中の一つである「Cook Hill Farm」でブルーベリー狩り。そんな土地の恵みとともに幸せな時間を満喫することで、湯布院とENOWA両方の魅力を感じられる時間になるはず。季節ごとにファミリープランの内容もは変わるそうなので直接連絡をするか、H Pをチェックしてみてください。

唯一無二の感動体験ができるオーベルジュ「ENOWA YUFUIN」

中央の樹を囲むように席が並ぶ開放感あるレストラン「JIMGU」。

 

様々なハーブやフルーツが育つホテル内ガーデンスペースでアペロも楽しめる。

 

スイートルームはインフィニティプールとバスタブから由布岳を望める。

 

大分空港から車で50分、由布院駅の近くに位置するENOWA YUFUIN。高台へと車を走らせると現れるエントランスからは想像がつかないほど、その奥には44,000平米の敷地が広がっています。各ルーム、ガーデン、エステ、サウナ、レストラン「JIMGU」など滞在中は至福の時間が約束されています。そしてENOWAはそれだけではなく、FARM DRIVENという思想のもと、有機野菜にこだわるENOWA FARMでその日に採れた野菜を料理。ファームにはインターンシップを受け入れ、地元農家と提携するなど、湯布院という地域とのつながり、未来への活動と、この地から拡がる「縁」を大切にしています。

*掲載したランチボックスは有料です。キッチン体験、ブルーベリー収穫体験、ピクニックなどのアクティビティやかき氷などスイーツ提供は、季節、天候によっても変わります。

*2025年秋以降「ファミリープラン」を実施予定。実施日などについてのお問い合わせは直接ENOWAへ。

撮影/花盛友里 取材/柿本真希  

 
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