【ディーン・フジオカさん】「絵本は親子を繋ぐ大切なツールです」初の翻訳絵本を手掛けた思いとは?
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「この物語は、「ありさんシェフ」が
世界一大きな晩餐会を開こうとして、
ゲストひとりひとりのことを想いながら、
席順を試行錯誤するところから始まります。
でも、きっとだいじょうぶ。
ちがうからこそ、学びあえる。
ちがうからこそ、わかちあえるよろこびがある。
みんなちがって、みんないっしょ。
それこそが、世界を豊かにしていく力なのだと思います。」
これは、初の翻訳絵本を手掛けたディーン・フジオカさんが
本の巻末に寄せたメッセージ。
3人のお子さんのパパでもあるディーンさんですが、
「ディーンさんが、翻訳絵本!?」というのが率直な感想。
では、なぜ今、絵本の翻訳と言うチャレンジに至ったのでしょうか?
「絵本」は、まるで音楽のように 言葉のリズムを子どもに植える力がある
実は、4年ほど前に自身が初めて企画・原作を務め、絵本を出版したことがあるんです。
でも、“翻訳”というのは、初めてで。
「ああ、その手があったか。やってみよう!」そう思ったんですね。
絵本って、“親子を繋ぐ一つのツール”、道具だと思うんです。
子どもに親が離乳食を与える感覚というか、
言語が持つリズムとか、その種を植えるような感じ。
僕が絵本に魅かれるのは、そういった言葉の持つリズムが、
音楽にすごく近い親和性があるというところ。
だから、一番大切にしたのは、読んでいて気持ちがいいかどうかというところです。
口にした時のリズムだったり、息継ぎのポイントだったり、
選ぶ母音や子音の運びがスムーズかどうかとか、そういうものを楽譜にする感覚でした。
一度絵本を作っていたからこそ、アプローチや向き合い方が体内にあって、
自分の楽曲の歌詞を1曲1曲、1フレーズずつ抽出して、
それをシャッフルして組み換えて新しい物語を作るといった感じです。
そして次に、絵や文字がページにどういう配置ではめられるかといった
視覚的な心地良さに拘りました。
最後は、原作をベースしながら日本語の特徴や魅力を生かすために、
ダジャレを入れたり、原作では空白だったページにセリフを入れたりと
アレンジをさせてもらいました。
様々な国での生活を体験し言葉の難しさを知るからこそ 「翻訳」という難題にチャレンジを
とはいえ、4年前に自身が企画制作した絵本は、「これが正解!」と自由に言えるし、
ある意味“作ったもん勝ち”の世界だったのに対し、翻訳本はそうはいかない。
オリジナルがある中で、それを違う言語に作り変えるのは、
すごく難しくて一筋縄ではいかない作業です。
それは、僕自身が様々な国で生活したり、仕事をする中で身をもって知り、
体験してきたことでもありました。
だからこそ、その難しさを知る自分が、母国の「日本語」で
我が子へ、日本の子どもたちへと伝えられるものがあったら――
それは、やりがいのあるチャレンジだと思ったんです。
原作の著者とイラストレーターに会いに いざ、イタリア・ミラノへ!
それで、著者のダリオ・ポモドーロさんやイラストレーターの
ロレンツォ・サンジョさんが住むイタリア・ミラノまで
自身の思いを伝えるために、会いに行きました。
お二人とお会いし、まず、盛り上がったのが、食べ物の話。
僕は、スパゲティボロネーゼが大好きなのですが、ダリオさんもロレンツォさんも
「僕もだよ!」と賛同してくれ、一緒にボロネーゼを食べたり、
彼らが日本のカルチャーにすごく興味をもっていて、
アニメや漫画の話もしましたね。
そんな会話の中で、お互いの趣味嗜好や物事と向き合う姿勢、何を大切にするのかが
お互いに理解し合えた気がします。
それで、その後に話した作品の細かい部分については、
「まあ、お前なら大丈夫だろう」という感じで全面的に信頼してくださり、
帰り際に快諾をいただいたんです。
その上、イラストレーターのロレンツォさんは、僕のシェフ姿のイラストを
描いてくださって、それを今回、絵本の特典として付く”しおり”にすることになりました。
そして、大胆にも『La piu grande cena mai vista(英題:The Biggest Dinner Ever)』という原題タイトルまでを変えて、『ありさんシェフの しょうたいじょう』としました。
僕にとって、絵本のタイトルは楽曲のタイトルをつけるみたいな感覚で
とても重要だったんです。
だから、“招待状”という誰をどんなふうにお招きするか、
ここをポイントにしてストーリーを進めていくと面白いな、と思い
子どもと親御さん達が、一緒に何かを見つけられるように大胆にアレンジして
ちょっと再発明する感覚で作らせてもらいました。
そんな数々の暴挙を許してくださった原作者の方々の粋な心使いには感謝しかありません。
やはり、この絵本のストーリー同様に、大切なのはコミュニケーション。
僕が絵本に巻末に書かせていただいた言葉のとおり、
「みんなちがって、みんないっしょ。
それこそが、世界を豊かにしていく力なのだと思います」。
- 「ありさんシェフのしょうたいじょう」
原作は、良質な絵本を多数手がけているイタリアの出版社 TERRE DI MEZZO 社より刊行された『La piu grande cena mai vista(英題:The Biggest Dinner Ever)』。本作は、すでにイタリア、フランス、スイス、ジョージア、中国、韓国、台湾、香港、マカオなど世界各国と地域で翻訳出版されている話題作です。イラストを手がけるのは、イタリア‧ボローニャ‧チルドレンズ‧ブックフェアにて「次世代の優れた児童書イラストレーター」に選出されたロレンツォ・サンジョ氏。
絵本の特典として、イラストレーターのロレンツォ・サンジョ氏がディーンさんのシェフ姿を描いたしおりが付いてきます!
※特典のしおりは、なくなり次第終了いたします
Profiel ディーン・フジオカ
1980 年、福島県生まれ。俳優、アーティスト、映画プロデューサーとしてアジアを中心に国際的に活
躍。英語・中国語・日本語を自在に操り、豊かな国際感覚と言語への深い理解、繊細な表現力をあ
わせ持つ。三児の父として育児にかかわり、父親役での出演作も多い。主な出演作にNHK 連続テレビ小説『あさが来た』、大河ドラマ『青天を衝け』、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』、『シャーロック』、『対岸の家事』、 映画『父と僕の終わらない歌』など。TOKYO FM『DEAN FUJIOKA New Calendar』レギュラーパーソナリティ。
撮影/田頭拓人 取材・構成/河合由樹