「最近、朝起きられない…」は【冬季うつ】かも?すぐできる5つの対策[薬剤師監修]

冬になってから「朝なかなか起きられない日が続いている」「気分が沈みがちで、何もやる気が起きない」などの不調を感じていませんか? それはもしかしたら「冬季うつ」が関係しているかもしれません。今回は、冬季うつの原因や、日常生活に取り入れやすいセルフケアを紹介します。

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1.冬季うつって?

「冬季うつ」は、秋から冬にかけて日照時間が短くなる季節にうつ症状が現れる「季節型うつ病(季節性感情障害)」の一種です。北欧などの高緯度の地域でよく見られる傾向があり、日照時間の短さが関係していると考えられています。
一般的なうつ病は、季節を問わず気分の落ち込みや意欲の低下、倦怠感、食欲減退などを特徴とするのに対し、冬季うつでは意欲の低下などのほかに、以下のような症状が多くみられます。
・過眠
・過食
・体重増加
これらの症状は春先には回復しますが、次の秋や冬になると再度症状が出現することも少なくありません。

2.冬季うつの原因は?

冬季うつの原因として考えられるのが、セロトニンの分泌量の減少です。セロトニンは脳内の神経伝達物質で、気分を安定させる働きがあります。
セロトニンは光を浴びることで分泌が促されるため、日照時間が減ると分泌量が減少します。これにより、やる気や感情のコントロールがしにくくなり、不安やイライラ、意欲の低下が起きやすくなるのです。

また、セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料にもなるため、セロトニンが減ることでメラトニンの分泌量も減少します。さらに、日照時間が短くなることで体内時計が乱れ、メラトニンが分泌されるタイミングがずれることも。これは、睡眠リズムの乱れや睡眠の質の低下につながります。
体内時計は自律神経と連動しており、体内時計が乱れると自律神経も乱れて心身にさまざまな不調が起きることもあるため注意が必要です。

3.冬季うつのセルフケア5選

冬季うつの症状を改善するには、生活習慣を見直すことが大切です。具体的なセルフケアを5つ紹介します。

①トリプトファンを含む食材を摂る

セロトニンの材料となるトリプトファンを意識して摂りましょう。トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、豆腐や納豆などの大豆製品、バナナ、牛乳・チーズなどの乳製品に多く含まれています。朝食でバナナを食べたり、大豆製品を使った料理を一品プラスしたりして日々の食事に取り入れましょう。
また、トリプトファンからセロトニンを合成するにはビタミンB6も必要です。ビタミンB6は玄米やレバー、マグロやカツオといった赤身の魚などに含まれています。これらの食材も組み合わせて、セロトニンの合成をサポートしましょう。

②生活リズムを整える

起床・就寝の時間を毎日できるだけ一定にし、体内時計を整えることも冬季うつの改善につながります。平日は十分な睡眠時間を確保し、休日も寝だめや夜更かしは避けましょう。
また、起床時には光を浴びてセロトニンの分泌を促すことも重要です。朝起きたらカーテンを開けて窓から光を取り入れ、できるだけ窓際の光が当たる場所で過ごしましょう。曇りや雨などの日は部屋の照明をつけるのも有効です。

③有酸素運動を行う

有酸素運動も冬季うつ対策に効果的です。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、自律神経を整えたりセロトニンの分泌を促したりする作用があります。さらに、気分を高めるホルモンであるドーパミンの分泌も促すことで、気分の落ち込みを防ぐ助けになります。
例えば、朝に軽めのウォーキングをしたり、ストレッチやスイミングなどを取り入れたりするのがおすすめ。特に、朝にウォーキングをすれば日光を浴びることもでき一石二鳥です。
また、外に出なくても室内で足踏み運動や音楽に合わせて動くことでも効果は期待できます。無理のない範囲で、継続しやすい有酸素運動を生活の中に取り入れましょう。

④ツボを押す

冬季うつに効果的なツボ押しをするのもおすすめです。冬季うつには「百会(ひゃくえ)」を押してみましょう。

「百会」は両手の手の平を耳の上に当て、頭全体を包み込んだときに中指が当たる位置にあるツボ。さまざまなエネルギーが集まるツボで、めまいや痙攣、ふるえを改善する作用や、精神を穏やかにする作用があります。
押す際は、目を閉じ、呼吸を意識しながら頭を包んだ両手の中指で押してみましょう。

⑤漢方薬を活用する

心と体のバランスを整え、体質から改善する漢方薬を活用するのも一つの手です。漢方薬は自然由来の生薬でできており、慢性的な症状に対し不調の根本原因にアプローチして改善を目指します。
冬季うつには「胃腸の働きを良くして体の疲れを軽減し、落ち込みや不安を軽減する」「自律神経やホルモンバランスの乱れを整える」などの働きがある漢方薬がおすすめです。

<冬季うつにおすすめの漢方薬>

・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
胃腸の機能を良くして消化吸収を良くすることで、肉体的な疲れや無気力、倦怠感などを改善します。元気や食欲がなく、疲れやすい人におすすめの漢方薬です。

・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
ストレスなどによってのどや胸部にできたつかえ感を取り去り、精神の緊張を和らげます。気分がふさいで、喉に引っかかったような違和感がある人におすすめの漢方薬です。

体質や症状によって効果的な漢方薬は異なります。自分に合う漢方薬を知りたいなら、漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。専門家に相談した上で、日々のセルフケアに取り入れましょう。

<参考文献>
社会福祉法人恩賜財団済生会「季節性感情障害(SAD)」

教えてくれたのは…あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師 碇 純子さん

薬剤師・元漢方薬生薬認定薬剤師 / 修士(薬学) / 博士(理学)。神戸薬科大学大学院薬学研究科、大阪大学大学院生命機能研究科を修了し、漢方薬の作用機序を科学的に解明するため、大阪大学で博士研究員として従事。現在は細胞生物学と漢方薬の知識と経験を活かして、漢方薬製剤の研究開発を行う。世界中の人々に漢方薬で健康になってもらいたいという想いからオンラインAI漢方「あんしん漢方」で情報発信を行っている。

編集/根橋明日美 写真・イラスト/PIXTAほか

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