お金や習い事…何事にも執着がない我が子、このままで大丈夫?【金融教育家・田内学さんが回答】

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「お金ってなんで必要なの?」何気ない子どもの質問に、ドキッとしたことがあるママたちに向けて。社会的金融教育家・田内学さんの連載が復活!今回は、お金はもちろん何事にも執着がない我が子に悩むママの疑問にお答えします。

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悩み相談室

今月の戸惑うママ
Aさん(30代・共働き、7歳の男の子ママ)

お金が欲しいとも言わず、習い事のリクエストもない息子にやきもき。一方で自身は仕事で忙しく、子どもと触れ合えるのは寝る前の30分程度で…。

お金はもちろん何事にも執着がない我が子。気持ちをためこんでいないか心配です

子どもがお金に執着しないのは
親の価値観を理解している証拠

田内学さん(以下、田内) 美容院を経営されていると伺いました。開業して何年目ですか?
読者 Aさん(以下、A) 2年半です。ずっと考えていたというわけではなくて、直前に勤めていた美容院の経営方針に合わず、お客さまを大事にしたいと思って開業しました。
田内 実際、開業してみていかがでしょうか?
A 今までは雇われで、会社がなんとかしてくれるという甘えがありました。でも開業してオーナーになり、従業員も雇ったことで、お金のことはよりしっかり考えるようになりました。初期投資に1000万円ほどかかったのですが、以前の勤務形態がパートだったこともあって貯蓄もほとんどなく、銀行から融資を受けるのが難しかったので、自分の親に借りました。親への返済と従業員に支払えるだけのお金はしっかり確保したいから、お店は不定休で月に2、3日休む程度。スタッフには0歳の子がいるので週2日休んでもらっていますが、オーナーの私は朝から晩までほぼ毎日お店にいます。順調にお店のお金も貯まっているものの、私が家にほとんど居られないことに申し訳なさを感じています。
田内 家事や育児はパートナーとどのように分担しているのでしょうか?
A 私が仕事メインの生活なので、今は家のことは夫に任せっきりです。子どもの宿題を見るのも学童のお迎えも夫。家族に迷惑をかけているという気持ちは常にあります。
田内 でもお子さんはお二人の子どもだから。パートナーは迷惑とは感じていないかもしれないですよ。
A そうだといいのですが。夫は子どもの教育についてもしっかり考えてくれているので、感謝しています。彼は職人で、考えがやや昔気質。「自分は稼げる」という自負があるので、私がパートだった時代は格下に見られていたというか、家事も育児も妻がやるべきだと思っていたふしがありました。でも私が経営者として順調に売り上げを伸ばしている様子を見て、「それなら家事も育児も俺ががんばるよ」って。洗濯物の畳み方とか、ちょっとしたことが気にならなくはないですが、いちいち文句を言うくらいなら自分がやるべきだと思うので、夫に気づかれないようにこっそり直しています。それまで私がやっていた、「名もなき家事」のようなものも、食器を洗った後にあえて目の前でシンクを洗ってみたりして、それとなく伝えています。
田内 Aさんのがんばりが伝わっているから、パートナーも素直に応援してくれているのですね。素敵な夫婦関係だと思います。家計管理もパートナー主導ですか?
A 夫の給与は私に丸投げです。彼はキャッシュカードの番号もわかっていないんじゃないかな。「俺が持っていると全部使ってしまうから」と言って、結婚当初から全て預けてくれました。でも今は食材や日用品の買い出しも夫がやってくれるので、私はクレジットカードの支払いを確認するだけです。明細はそこまできっちり見ませんが、たまに請求額がいつもよりちょっと多いなと思うと、Amazonから夫の趣味のプラモデルがたくさん届いていたりして(笑)。でも、夫も私も無駄遣いはしないほうですね。それに輪をかけて息子がお金に対して執着がなくて。習い事も希望があればやらせてあげたいけれど、「めんどくさいからいい」って。「何が食べたい?」と聞いても「なんでもいい」という感じ。ゲームが好きなので、欲しいソフトがあったら祖父母からもらったお年玉で買っていますが、お手伝いをしておこづかいを貯めてまで欲しいものを買う、といった気持ちはないようです。ただ夫も似たようなところがあって、新しいものを買うのが面倒だからか、下着も限界まではいちゃう人なんです。それを見て育った息子も、擦り切れるまではいて「まだいける」って言っています。
田内 お子さんの下着がボロボロだからといって、Aさんが勝手に買い替えたりはしないんですね。
A 本人が納得しないものは買わないようにしています。
田内 やっぱり、親御さんの背中を見ているんだと思いますよ。親が本当に必要なものにだけお金を使っているのを見ているから、自分もお金を大事にしようと自然に思えているのではないでしょうか。お子さんの気持ちを尊重して、一方的に買い与えることをしないAさんも立派だと思います。お子さんはAさんが忙しいことについて、不満を漏らすようなことはありますか?

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お店の経営は順調も、
週6学童で心苦しい

A 「また仕事か」「たまには学童休みたいな」と言われることはありました。学童は週6で、周りの子たちより多いんです。だから最近は、授業で遅い時はまっすぐ帰ってきてもいいよと伝えています。家でのんびりするのが好きな子なので。日中に私がいなくて困っていることはほぼないと思います。でも21時頃に帰宅すると、「見てみて」とか「聞いて」と駆け寄ってくることが多いので、それには必ず応えるようにしています。寝る前の30分程度ですが、家族の時間を大切にしたくて。
田内 仕事のことを聞かれることは?
A 「今日は忙しかったよ」と言うと、「ありがたいことだね」なんて言ってくれます。「お客さん多かった?じゃあ儲かっちゃったね」とか。たまに仕事場に連れて行くこともあるので、私がどんな仕事をしてお金を稼いでいるのかは、小さい頃から理解しているようでした。トイレに行く時も邪魔にならないようにササッと行って、あとは気配を消してゲームをしてくれていたり。

知識より大事なのは
幼少期の価値観形成

田内 「儲かっちゃったね」なんて、最高のコメントですね。私の家も蕎麦屋を経営していたので、お店でのお子さんの様子が目に浮かぶようです。サラリーマン家庭に比べると、自営業のご家庭は、誰かの役に立つことでお金がもらえるという経済の仕組みが理解しやすい環境にあると思います。お客さんがやってきて、サービスや商品を提供されたことに感謝して帰っていくところまで見ている。それこそまさに、金融教育です。
「お金について、小さいうちにどんなことを教えてあげたらいいですか」とよく聞かれるのですが、どんなお金の知識よりも大事なのは価値観の形成だと思います。知識は後からでも身につけられますが、お金に対する価値観や生き方の軸を小さいうちに持てるのは、大きな強みになります。
お子さんがお金に執着しないのは、両親のお金や仕事への向き合い方、価値観を認識できているという証拠なのかもしれません。生き方の軸ができている子は、夢中になることが見つかった際にそこに突き抜ける力を持っていると思います。だから親としては、子どもが何かを見つけた際に応援できる体制を整えてあげるだけでいいのではないでしょうか。
A 安心しました。今はお店の今後のためにお金を貯めることに必死ですが、息子にはなんでも挑戦してもらいたいと思っているので、そのための準備も整えていきたいです。
田内 開業資金は親御さんから借りているのですよね。それを返さずに教育資金に回しても、祖父母にとっては満足のいく使い道になると思うのですが。
A 実は、親からも「返さなくていい」と言われています。でも私は嫌なんです。「金の切れ目が縁の切れ目」というように、親であっても借りたものはきちんと返したいですから。息子にも、友だちとのお金の貸し借りはしないようにとは伝えています。貸してって言われたら貸してしまいそうというか、親に言わないで気持ちをためこんでしまうタイプかなと。
田内 先ほどからお話を伺っていて、Aさんの生き方、子育ての方針には一貫性があると感じました。今の世の中で、周りに流されずに生きるのはなかなか難しいことだと思います。多くの人は一貫性がないから、お金の使い方、仕事、家族の関係に悩んだら、その都度スマホで調べて「学校に行きたがらない子にはこう伝えたらいい」「おこづかいはいくらが適切らしい」といった情報に惑わされてしまいがち。でも親の発言に筋が通っていないと、言われた側の子どもは困ってしまいます。重要なのは何を伝えるかより、どんな背中を見せるか。自分の理想像に行動が伴っていれば、それはお子さんにとっての鏡になります。おそらくお子さんにとって、ママとの夜の30分間は自分の気持ちを話せる大事な時間になっているはずなので、そこでしっかりコミュニケーションが取れていれば、何も心配することはないと思いますよ。
A ありがとうございます。まだ小1ですし、あまり焦らず、息子がやりたいことを見つけるまで気長に待ちます。

教えてくれたのは…

金融教育家の田内学さん
田内 学さん
1978年、兵庫県生まれ。2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

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撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2025年11月号「ママのためのお金の教育悩み相談室」より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。