曾祖父のバレエスクールからアメリカへ……オールラウンダーを目指すダンサーは踊ることが好きすぎる【王子様の推しドコロ】vol.29 三宅啄未さん

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©João Manegussi

PROFILE

みやけ・たくみ/2003年生まれ、香川出身。身長172㎝。血液型O型。曾祖父が設立した近藤バレエ研究所にて、祖母と母に師事し3歳からバレエを始める。2017年、「ユース・アメリカ・グランプリ」ジュニア男性部門で優勝しスカラシップを獲得、「英国ロイヤル・バレエ・スクール」に留学。首席で卒業後、2022年に「アメリカン・バレエ・シアター」のスタジオカンパニーに入団、2023年にはアメリカン・バレエ・シアター(メインカンパニー)にアペレンティスダンサー(研修生)として入団。入団当初から主要な役に抜擢され、2025年7月、わずか1年でソリスト(主役を踊るプリンシパルに次ぐ階級。重要なソロパートなどを踊る)にスピード昇進。重要な役が続き、バレエ界のライジングスターとして注目を集める若手男性ダンサー。

まるで大空を羽ばたく鳥のように、どこまでも高く大きく舞い上がる跳躍。シャープな回転技と、舞台を自由に掌握する圧倒的な存在感。誰もが「新たなスターの誕生」を感じたセンセーショナルな登場で、バレエファンの間で“今、いちばん観たいダンサー”として熱い視線を集めているのが、三宅啄未さんです。

「BALLET TheNewClassic 2024」にて ©Fukuko Iiyama

「君はスターになるよ。だから今のままずっと頑張りなさい」

――ひいおじいさまが設立したバレエスクールで教えていたお母さまをもち、バレエとの出会いは生まれてすぐ。幼い頃からスタジオについて行き、3歳の時にバレエを始めたのは自然な流れでしたか?

生まれた時から、バレエは家庭の中にずっとありました。1歳ぐらいから、『白鳥の湖』の曲を聴きながらスタジオを走り回っていたみたいです。男子だからバレエが恥ずかしいという気持ちもなく、友人たちも「バレエって何?」と興味をもってくれる環境。みんないい方向に関心をもってくれていて恵まれていました。プロになろうと決意したのは小学6年生の時。卒業文集の執筆で将来のことを考える機会があり、将来はバレエダンサーになるって書きました。幼少期から様々なコンクールに出て賞をいただいていたというのももちろんありますが、純粋に踊ることが好きだったんですよね!

――ユース・アメリカ・グランプリでスカラシップを獲得された後、13歳で英国ロイヤル・バレエ・スクールに留学。コロナ禍とも重なり試練も多かったのでは?

元々、英国ロイヤル・バレエ団の踊りのスタイルに憧れていたので、留学先を決めました。でも、英国ロイヤル・バレエ・スクールのアッパースクールに進学して1年生の時にコロナ禍になってしまい一時帰国、2年生で戻れたのですが大怪我を負ってしまいました。英国ロイヤル・バレエ団に入るためのオーディションでは、まだまだ本調子ではなく、実は僕くらいの身長のダンサーも求められていなくて、入団が叶いませんでした。そんな時に、先生のアドバイスでアメリカン・バレエ・シアターのオーディションを受け、まずはスタジオカンパニーに入団。怪我は残念でしたが英国ロイヤル・バレエ団に入団できなかったことは落ち込むというよりは「しょうがないよね」と前向きに捉えていました。未来のことを考えて不安になるよりも、いつも今に集中し、今どうしたらよくなるかを考えているポジティブなタイプ。卒業をする時に恩師から言われたんです。「君はスターになるよ。だから今のままずっと頑張りなさい」って。その言葉を信じて、言葉通りになるように邁進しています!

『冬物語』にて ©Marty Sohl

――実際、アメリカン・バレエ・シアターに入団し1年足らずでソリストに昇格。公演では主要な役を踊り、大活躍されていますよね。

僕自身も驚いています(笑)。チャンスが巡ってきたら不安を感じるのではなく、どの道やりたいことなのだから、やれる時に楽しんじゃえ!と思う性格なので、いつチャンスがきても、それを楽しんで生かせるように、日々自分が納得のいく練習を積み重ねているつもりです。バレエはオリンピック競技ではないので、技を完璧にこなしたら最高というわけではないですよね。テクニックはもちろん、その物語の中でどう生きているかを伝えるのも大切。だから、偏らないように、(テクニックも演技にも定評のある)オールラウンダーのダンサーになることが目標でもあります。

「BALLET TheNewClassic 2024」にて ©Fukuko Iiyama

フレッシュながら、物語の展開と踊りが違和感なく繋がる演技力が欲しい

――7月30日から8月2日に出演される「POLA presents BALLET TheNewClassic 2026」はシリーズ化しており、今回で3回目となるガラ公演。三宅さんは2024年も出演(今回で2回目)されていますが、観客はさらなる進化も期待しています。

2025年で印象的だった舞台は2つあります。1つは、ソリストになって最初のシーズンに主役を任せていただいたランダー振付けの『エチュード』。振付が難しく体力もいるハードな作品でしたが、追い詰められたぶん達成感もあり、プレッシャーをパワーに変えることができたそのプロセスさえも楽しめました。もうひとつはクリストファー・ウィールドン振付け『冬物語』。クラウンという役だったのですが、物語の中で“役を生きるように踊る”ということを体感し新鮮な経験になりました。この1年、アメリカン・バレエ・シアターという世界的なバレエ団で、何年もプロとして活躍されているダンサーたちを間近で見て、一緒に稽古を重ね活動していく中で、踊りの深さに感銘を受けました。踊りを演技に落とし込む先輩ダンサーたちの見せ方を日々吸収し、自分はどうやったらできるのかを試行錯誤していく1年を経て、去年よりも役の見せ方は成長できたかなと感じています。演技ととことん向き合う役にはまだ巡り会えていないのですが、これからの自分の課題は演技力。学生時代に観た英国ロイヤル・バレエ団『マノン』でのマシュー・ボールさんの踊りが忘れられないように、彼のようなフレッシュなパワーがありながら、物語の展開と踊りがスムーズに違和感なく繋がる抜きん出た演技力を培っていきたいです。『白鳥の湖』の王子や『ロミオとジュリエット』のロミオは、いつか挑戦したい役です。

『エチュード』にて ©Emma Zordan

――「POLA presents BALLET TheNewClassic 2026」は、クラシックな様式美と、現代的なクリエイションの融合をコンセプトにした新しいタイプのバレエのガラ公演。様々なガラ公演に出演している中、この公演の魅力はどんなところにあると思いますか?

観客のみなさんにとっても、踊っている側からも“新鮮”な公演です。衣裳、振付け、照明、演出など他のバレエ公演ではあまりやらないようなアプローチが溢れています。ガラ公演って様々な作品の盛り上がるシーンを抜粋した演目がいくつも見られるのが魅力だと思うのですが、そういった宝石箱のような魅力はありながら、ひとつひとつの演目の意味を掘り下げて、現代っぽく設定を変えたり、衣裳や振付けをアレンジしているんです。ですからバレエを見慣れている人も、初めて見る人も満喫できると思います。前回は男性もティアラを装着しました。ファッション性にもこだわっているのでぜひ注目してみてください。

――前回は『海賊』とグループ作品に出演し、そのフレッシュな存在感が話題に。今回は『ドン・キホーテ』のパ・ド・ドゥと、グループ作品に出演予定です。

前回はアメリカン・バレエ・シアターでは研修生で、僕は公演も踊ることに必死で余裕はなかったです。今回は少し余裕ができ、カンパニーでも1年と少し経験を積んだぶん、テクニックも見せ方も進化した踊りを披露したいと思います。『ドン・キホーテ』は結婚式のシーンの抜粋ですが、一緒に踊るパートナーのソ・ユンジョンさんは実生活のガールフレンド。自分たちにしか出せない関係性を踊りでも見せられたらなとは思いますし、僕も今からワクワクしています!

『ドン・キホーテ』にて ©thelkstudio

新鮮な芸術に触れるくらいの感覚で観に来てください

――三宅さんのコメントからは、「心から踊ることが好き」というバレエへの深い愛情が伝わってきます。三宅さんが感じている、バレエの魅力とはどんなところでしょうか?

バレエは生まれた頃から当たり前のように生活の中にありましたが、飽きることなく追い求めていたいと思うのは、僕自身がバレエ作品のストーリーと音楽に魅了されているからだと思います。音楽を満喫しながら物語の展開も踊りも楽しめる贅沢な芸術なんです。「POLA presents BALLET TheNewClassic 2026」は、バレエを見たことがなくてもファッションや音楽、アートに興味のある方もおもしろいと感じていただけるフレッシュでセンセーショナルな公演。国内外で活躍するダンサーが多く出演しますし、格式高い公演ではないので、新鮮な芸術に触れるぐらいな感覚で足を運んでいただけたら嬉しいです。

――常に前向きに捉え、チャンスが巡ってきた時の準備と努力を惜しまない姿勢が今の活躍を支えていると思いますが、生き方などで尊敬している人はいますか?

個人的な話になってしまいますが、僕の曾祖父は1940年に地元・香川県にバレエスクールをつくった、日本のバレエスクールの先駆者のような人。まだバレエ自体が日本で知られていない時代に、香川県という土地でバレエを広めようとした、そのチャレンジ精神、そしてバレエへの愛情は自分の中にも宿っていますし、尊敬しています。

三宅さんの姿が見られるのは……「POLA presents BALLET TheNewClassic 2026」新国立劇場・中劇場(2026年7月30日~8月2日)

2020年に写真家・井上ユミコ氏とバレエダンサー・堀内將平氏によって始動したバレエの伝統と現代のクリエイティブを掛け合わせたプロジェクト。ダンサーと、ファッション、音楽、美術の表現者たちが集い、新しい美の形を創り舞台芸術の可能性を広げる、今までになかったバレエのガラ公演とあって話題を呼びシリーズ化している。3回目の公演となる今回は、三宅啄未さんのほか、太田倫功氏、佐々晴香氏、ソ・ユンジョン氏、中島瑞生氏、中村祥子氏、南江祐生氏、三森健太朗氏、吉山シャール・ルイ氏、横山瑠華氏など、国内外で活躍する注目のダンサーが計12名出演予定。7月30日(木)~8月2日(日)の全6公演(新国立劇場・中劇場)。詳しくはHP(https://www.balletthenewclassic.tokyo/)にてご確認ください。

取材・文/味澤彩子