松下洸平さん、転機のあとに訪れたコロナ禍「立ち止まった時間も、自分の人生だと受け止めています」
デビュー以来、なかなか思うように進まない時期もあったと話す、松下洸平さん。NHKの朝ドラ『スカーレット』への出演をきっかけに新たな転機を迎えるも、その直後に訪れたコロナ禍。思うように進めないもどかしさのなかで、あらためて自分自身と向き合う時間が生まれました。遠回りに感じた経験や、立ち止まった経験も含めて、すべてが今につながっているんだと感じられるようになったと言います。役と向き合うことで広がった視点や、30歳という節目で手放したもの。その一つひとつを振り返りながら、これから先の歩みについて語っていただきました。
▼あわせて読みたい
松下洸平さん「自分に精一杯で優しさを受け取れなかったことも」どんなときでも“譲れない軸”とは
もう俳優をやめようと思ったギリギリのところで、見つけてもらえました
今思うと恥ずかしいのですが…長かった下積み時期に思っていたことは、なんで誰も僕を見つけてくれないんだろうってこと(笑)。当時は自分ならもっとできるんじゃないかと思っていましたし、正直なかなかメディアに出られないことを認められなくて、悔しくて仕方がなかったんですよね。同世代の人が先に進んでいくのを見るのも辛かったので、テレビはできるだけ見ないようにしていました。この世界って、ある程度のレベルにみなさん達している中で、そこから一歩前に出るには運やタイミングも大きい。僕は本当に、もうやめようと思ったギリギリのところで見つけてもらえたので、そういう意味では運やタイミングに恵まれていたのかなと思います。
実はそれまでは、うまくいかないことを誰かのせいにしてしまう自分もいたんです。でも突き詰めていくと、結局は自分の実力不足で、それを受け止めきれないからこそ、どこかに理由を求めてしまっていたんだと思います。
転機のあとに訪れたコロナ禍で、立ち止まる時間に
長い間、思うようにメディアに出られない時期が続いていて、そのなかでいただいたのが、NHKの朝ドラ『スカーレット』でした。ただ、いざその機会をいただいた時は「やっときた」と喜びでいっぱいになるのかと想像をしていたんですけど、実際は少し違って。20代の頃から準備はしてきたつもりでも、その場に立ってみると、自分に務まるのかなと感じる部分もあって、少し身が引き締まるような感覚がありましたね。
その直後に世の中はコロナ禍に入ってしまって。ここから頑張るぞというタイミングだったこともあり、思うように動けない時間が続きました。もどかしさを感じることもありましたが、今振り返ってみると、その時間があったからこそ、仕事ができることや人と当たり前に会えていた日常のありがたさに、改めて気づけたように思います。立ち止まったことで、自分自身と向き合う時間も持てましたし、そのなかで誰かや何かを責めるよりも、これから自分はどうしていくのかを考える方が、自分には合っているのかもしれないと感じられるようになりました。
ドラマ『銀河の一票』での役と向き合い、さらに学びが増えました
作品と向き合う中で、自分の考え方に変化を感じる瞬間もあります。今回、政治を扱う作品に関わらせてもらった時も、最初は正直ハードルが高い印象があったのですが、台本を読んでみると、予備知識がなくても惹き込まれる面白さがあって、そこから自然と、もっと知りたいと思うようになりました。選挙の仕組みやルールを知っていくうちに、今これまで何気なく見ていたニュースの受け取り方も少しずつ変わっていって。役作りを通して、細かいところまで意識が向くようになりましたし、役と向き合うことは、自分の見ている世界を少しずつ広げてくれることでもあるのかなと感じました。
今回演じている役は、どこか俯瞰で物事を見ているような人物なんですけど、実際の自分はそこまで器用なタイプではなくて、どちらかというと、もっと感覚的な人間なんじゃないかなと思っています。だからこそ、自分との距離を感じながら、その人物がどういう思考で動いているのかを一つひとつ丁寧に追いかけていく。その作業が、結果的に自分自身を知ることにも繋がっているような気がしています。
30歳で手放した“焦り”、目の前の課題と向き合うことで見えてくる新しい景色
29歳までは、年単位で自分の人生を考えることが多かったんです。次の1年をどうするか、どういう自分でいたいかって。でも30歳になった時に、節目ということもあって、30代どう過ごそうか、と考えてみたんです。一度に10年単位で思いを巡らせてみたら、正直ちょっと疲れてしまって。そこで、「なるようになるかもしれないな」と考え方を少し変えてみたら、少し楽になった感覚がありました。それまで囚われていたものが、ふっと抜けたような。うまく言葉にするのは難しいのですが、そんな感覚でした。
40代を前に今もまだ課題ばかりですし、やりたいこともたくさんあります。ありがたいことに仕事の幅も広がって、出会う人も増えました。俳優としてだけでなく、音楽活動や司会など、いろいろな現場に立たせていただくなかで、それぞれの分野で第一線にいる方々とご一緒する機会も増えていて、そのたびにたくさんの刺激をもらっています。そういう方々の背中を見ていると、「まだまだだな」と感じることも多くて。たとえば、役と向き合う深さだったり、現場での瞬発力、音楽であれば表現の幅や届け方、司会であれば場を動かす力だったり。自分に足りないものが、具体的に見えてくるんです。一つひとつの現場で課題を持って向き合いながら、それを少しずつ乗り越えていくしかないのかなと感じています。その積み重ねのなかで、また新しい景色が見えてくるのかもしれないとも思っています。あとは、何をするにも体力は大事だなと感じていて、できるだけ長く続けていくためにも、週に1回はジムで筋トレを続けています。
人生、思っていたようにはいかないことも多いですけど、それも含めて自分の歩いてきた道なんだと、少しずつ受け止められるようになってきました。だからこそ、焦らずに、40代も一歩ずつ進んでいけたらと思っています。まだ道半ばなんだなという感覚は、これからもきっと変わらない気がします。
撮影/平井敬治 ヘア・メーク/宮田靖士 スタイリスト/丸本達彦 取材/小出真梨子
松下洸平さんプロフィール
1987年3月6日 生まれ、東京都出身。2008年 、洸平名義でシンガーソングライターとしてデビュー。翌年より俳優活動を始め、NHK 朝の連続テレビ小説『スカーレット』 (‘19)でヒロインの夫 、八郎役で人気を博し、数々の作品に出演。歌手、俳優と多方面で活躍中。
2026年4月20日からスタートの月10ドラマ「銀河の一票」。黒木華×野呂佳代×松下洸平で紡ぐ新しい選挙エンターテインメント!政界を追い出された秘書、星野茉莉(黒木華)が、政治素人のスナックママ、月岡あかり(野呂佳代)を都知事候補に立て、選挙に挑む。政権与党・民政党のホープで、主人公・茉莉の幼なじみである日山流星(松下洸平)と2人異色の女性バディが奮闘する人間ドラマ。
おすすめ記事はこちら
▶松下洸平さん「自分に精一杯で優しさを受け取れなかったことも」どんなときでも“譲れない軸”とは