美容エディター・松本千登世さん、〝若い自分〟から解放されたきっかけとは?
「最近、服もメークもどうもしっくりこない」という声を聞くことがあります。
ついつい何年も前の自分の姿にとらわれて、そこから抜け出せないのかもしれません。年を重ねるごとに、肌だって体型だってなんとなく変化するもの。
変化をポジティブに楽しむ松本千登世さんに服とメークのバランスについて伺いました。6・7月合併号本誌より、一部抜粋してご紹介します。
■「メークも服も表情を生かしてくれる〝添えもの〟になった」
松本千登世さん
美容エディター、ライター。数多くの女性誌、美容誌で執筆を行う。著書に「『ファンデーション』より『口紅』を先に塗ると誰でも美人になれる」(講談社)など。
〝好き〟を優先してセオリーを破るとワクワクできるはず
10年前は〝若い自分〟を覚えていたから、その頃と変わらないように見せることを重要視していました。ついつい過去の自分にこだわってしまうものですよね。
ある時、「過去の私は他人」だと気づきました。決して過去の顔に戻れるわけではないですから。その気づきがあって、考え方が大きく変わりました。それはシワやくすみがないように見せることからの解放。
今の顔に出合えたことが幸せだから、堂々と、シワをあまり気にすることなく大笑いもできるようになりました。
~中略~
さまざまな経験があるから似合うよう工夫もできますよね。最近も、どうしても付けたい、トライしたい真っ赤な口紅を塗るのだけれど、どうもしっくりこない、といったことがありました。
好きだけれどもう似合わないから無理かな‥‥と半分諦めていたのですが、ふと黒ぶちの眼鏡をかけてみたら、相性の良さを感じて。さらにおろしていたヘアをラフにまとめたら、「あ、これだ!」と納得のいくバランスになったんです。
そこに至ったのは公私ともに仲の良いメークアップアーティストの水野未和子さんとの会話からでした。
「私たちは服を崩したら、上質さをどこかにプラス」というようなセオリーに慣れ過ぎているよね、と。最低限のTPOさえわきまえれば、もっと自由でいいのだと。トライしてみたい口紅を塗ってから肌を作れば、口紅に合った肌感になるはず。
小さい気づきで楽しめるのが大人ですから!
鏡の中の私に固執せず、変わっていくことを楽しみたい
数か月前に髪をばっさりと切りました。特にこうしたいという意思も理由もなくロングヘアだったんです。似合うとわかっている安心感はありましたし、女っぽく見えるはず、という逃げ道が欲しかっただけかもしれません。
ところが、切ったら眠れなくなったほどワクワク。こんなに変化することを楽しめるなんて、嬉しくなりました。
「他人の目にどう映るか?」は、もはや重要じゃなかった。「今の私がどういう気分になれるか?」ということの方が、ずっとずっと大事なんだと気づいた瞬間でもありました。
以前インタビューをさせて頂いたある方から「女性の気分が眉の形を作る」という言葉を聞きました。時代によって、女性の眉は変わるとよく聞きますが、時代に合わせているのではなく、女性がどうありたいかを考え、眉に表現している。女性の気分が時代を引っ張っているのかもしれません。
8割マニッシュが今の気分。今日はヘルシーな肌感とリップ、髪のツヤをオールインワンと合わせました。
作り込んだ美人よりチャーミングな女性でいたいですね。
撮影/渡辺謙太郎<MOUSTACHE> ヘア&メーク/水野未和子<3rd> 取材・文/金沢由紀子 構成/中山佳奈子