大学生の息子が安定した就職はしないと言い張り、家庭の空気が最悪に・・・【ジェーン・スー×HARUKOの人生相談Vol.20】
40代女性の気持ちを代弁するような明快な語り口が人気のコラムニスト、ジェーン・スーさん。新聞やラジオ、雑誌で多くの方のお悩みに答え、その胸のすくような回答には励まされる読者も多数。
一方、波乱万丈の人生経験を持ちながら、いつも前向きで飾り気がない人柄で、誰からも愛されるモデルのHARUKOさん。歯に衣着せぬ語り口で、仲間のお悩みにさっと答えてくれると評判です。
そんなおふたりに『STORY』読者の真剣なお悩みに答えていただきます!
<PROFILE>
ジェーン・スーさん
コラムニスト。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月〜木11:00〜)のパーソナリティを担当。毎日新聞をはじめ新聞・雑誌で数多くの連載を持つ。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』は、第31回講談社エッセイ賞を受賞。近著に『これでもいいのだ』。
HARUKOさん
モデル。短大時代、『JJ』にて山田明子(はるこ)の名でデビュー。以来、数々のファッション誌で活躍。’03年に結婚後、九十九里浜に移住、長女を出産。’12年に離婚。HARUKOに改名し、現在『STORY』にて活躍中。趣味はサーフィンと読書。
~第20回~
★ 息子の就職で悩んでいます
大学4年の息子が就職の内定をもらい、これで子育ても一段落と喜んでいたのですが、息子がこの期に及んで、就職をしないと言い始めました。実は大学時代から友達とアプリ開発の起業をしていて、卒業後は、それを本業にしたいというのです。エンジェル投資家から、投資もしてもらったそうで、本人は、自信満々ですが、今は暮らしていけるほど稼げているわけではないので、家から職場に通い、友人とバイトをしながら会社を育てていくと言っています。夫は堅実な会社員で、大反対。私も、せっかく、名の通った会社に就職できたのだから就職したほうがいいと思うのですが、本人は聞きません。夫と息子は大公論のすえ、口も聞かなくなり、家の空気は最悪です。どうしたらいいのでしょうか。(K.K.さん 49歳 神奈川県在住 主婦)
ジェーン・スーさん
出産子育て経験がない私ですが、好き勝手に言わせていただくと、子どもには失敗する権利があると思うんです。親になったことはないけれど、子どもだったことはあるわけですよね。子どものときに、親に言われていちばん嬉しかったことは、「あなたが幸せならそれでいいわ」という母の言葉なんです。いまだに心の礎になっている。人の道に外れそうなときは、ちゃんと止めてくれるけど、それ以外は、応援とまでは、いかないにせよ、好きにすればって言ってくれるのが一番ありがたい。そのかわり、悲しい結果になったときには、何も言わずに帰れる場所として、存在していてくれるのが、子どもにとっては1番心強い。父親も、子育てにあまり参加していないという前提付きですが、「20歳までは一生懸命育てたから、その先、もしお前が失敗しても、それは、俺たちの子育てが失敗だったんだろうな」って、笑いながらよく言ってました。でも、それは、親が干渉できるのは20歳まで、ということを、ちゃんと伝えてくれていたということ。ありがたかったですね。子ども目線で、信頼できる親ってどういう親かと考えたら、答えが出てくるんじゃないかな。
HARUKOさん
私も、自分の娘についていえば、20歳すぎたら、娘の人生で、私の人生じゃないって思うほうなので、K.Kさんがどうしてこんなに反対してるんだろうと逆に不思議。男の子だから、昔気質の考えかたで、一家の大黒柱になるために、就職したほうがいいという気持ちが強く働いちゃうのかしら。うちは、女の子で、同性というのもあるから「あなたらしく生きなさい」と言ってあげやすいのかな。私は、自分で、人生を強く切り開いていこうと言っている息子さんは素晴らしいと思うけどね。
ジェーン・スーさん
だけど、現実にはそうはいかないのも、よーくわかります。親になった同世代の友人たちを見ていると「子どもの人生は子どものもの」って、よくわかっているのに、失敗してほしくないばかりに過干渉的になってしまうんでしょうね。親になるって、本当に大変なんだろうなって思います。
HARUKOさん
そうだよね。極端な話、娘が「AV女優になりたい」って言ったら、きっと全力で反対するだろうしね。でも、本人にとってそれがすごくやりたいってこともあるしね。子どもの価値観と親の価値観が一致しないっていうのはあることだよね。この方の気持ちはよくわかる。それでもなお、やっぱり、子どもの気持ちを尊重したい。
ジェーン・スーさん
そうですよね。この状況は、息子さんにとって圧倒的に不利だと思います。彼が将来成功するかなんて、今の彼には証明できない。でも、親は、自分が会社員として働いてきて、家庭も持って結果を出している。さらに、起業して失敗した人も何人も見てきたわけだから、説得材料としては親のほうが圧倒的に有利なんですよ。息子さんはこの議論において不利だっていうことは、母親だけでもわかっていてほしいですよね。
HARUKOさん
お父さんと息子の関係が悪くなっているのも問題だよね。
ジェーン・スーさん
親VS子のように、2対1の対立になってしまうのは、避けないと。どちらにも加勢せず、上手に二人の間に入って緩衝材になってあげられるといいですよね。
HARUKOさん
こういうきっかけで本当に親子仲が悪くなって、何十年も口もきいていない、なんてことは、意外とあるでしょう?そんな寂しい結果にならないよう、奥さんが二人がいい関係づくりをできるといいですよね。
当連載は毎週金曜日配信です。
お二人に相談したいことを募集中です。storyweb@kobunsha.comまでメールでお送りください(お名前はイニシャル等匿名で掲載します)。採用された方にはQUOカードをプレゼントいたします。
撮影/吉澤健太 取材/秋元恵美