女優・入山法子さんの仕事観「自分が“どう見られるか”は大事じゃないと気付いたのは…」

透明感のある美しさが魅力の女優、入山法子さん。昭和の詩人・三好達治を描いた映画『天上の花』で、達治の妻・慶子を演じた入山さんにスぺシャルインタビューを敢行。後編では、仕事観や“ウェルビーイング”なことについて語っていただきました。

PROFILE

入山法子
‘85年8月1日生まれ 埼玉県出身●大学入学と同時にモデルの活動をスタートし、’06年ドラマ『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』で本格的に女優デビュー。‘11年『霧に棲む悪魔』でドラマ初主演、同年『ハナばあちゃん!! わたしのヤマノカミサマ』で映画初主演。主な出演作は、映画『ハッピーフライト』『SP 野望篇・革命篇』『となりの怪物くん』、ドラマ『きみはペット』NHK連続テレビ小説『エール』『雪女と蟹を食う』など。

仕事への姿勢が変わったきっかけは「きみはペット」の監督との出会い

――現在、37歳の入山さん。2

――現在、37歳の入山さん。20代の頃とくらべて、仕事への向き合い方や考え方に変化はありますか?

責任感が増したことですね。20代の頃は自分がやりたいことより、周りにいる年上の方や経験のある方から勧められたことを選んでやってきたことが多かったんです。それには自分の努力や勉強が足りなかったから、そうせざるを得なかったという反省点もあるんですけど。30代になってからは責任を持って自分がやりたいもの、チャレンジしたいと思うものを選択することが増えた気がします。

――仕事観が変わるきっかけになったお仕事や作品があれば教えてください。

ドラマ「きみはペット」かな。31歳のときですが、あの作品でお芝居に対する向きあい方が変わったと思います。それまでの自分は、たとえば「きみはペット」ならキャリアウーマン風というか、“それふう”なお芝居をしてしまっていたんだなって反省することがたくさんあって。きっかけは撮影に入って数日した頃に、監督から「今のような芝居してると嫌われるぞ」って言われたこと(苦笑)。今もアドバイスをもらいに行くくらい仲良くさせていただいてる監督なんですけど、お芝居って相手からもらったものを返すものなのに、今までは「自分はああしたい、こうしたい」だけだったって監督の言葉で気がつきました。主演だから頑張らなきゃって気が張ってたのかもしれないですけど、自分がこう見られたいってことじゃなくて、周りの声を聞いて目を見てってことを大事にしなきゃいけないんだなって。その場で生まれるもの、ありのままの自分を撮ってもらう怖さと、そうである芝居の面白さを気づかせてもらえました。

好きを大事にするために…自分にとっての“いいバランス”を探しています

――CLASSY.読者には、仕

――CLASSY.読者には、仕事でも生き方でも「自分らしさ」を模索している人が多くいます。入山さんの「自分らしい働き方」とはどんなスタイルですか?

誰かに勧められたものじゃなくて、自分から好きになったものを大事にしていきたいなと思っています。それを貫くためにはどんな準備が必要なんだろうって考えますね。好きなことだけやるのはまた違うと思いますが、そのバランスですかね。喉から手が出るほどやりたい仕事も大切にしたいし、チャレンジングでハードなものも、今もしかしてやりたくなくても今後何かにつながるかもっていう仕事も大切だし。自分にとっての「いいバランス」にもっていけるようにするのが理想なのかな。

ずっと寒い日が続くわけじゃないー植物が教えてくれること

――オフはどんなふうに過ごして

――オフはどんなふうに過ごしていますか?

海外旅行が自由にできていた頃は、リフレッシュするぞって決めて長期間のオフに海外に行ってましたね。またそうなればいいなって思いますけど、最近のオフは家で料理したりベランダで植物の世話をしたり、ちょっとしたことで気分転換はできているなと思います。植物からもらうものってすごく多いんです。最近は寒くなってきて、葉っぱが落ちてきてるのを見ると少し寂しくなるんですよね。でもまた暖かくなってくると、新芽が出てきたり花が咲いたり枝がのびたりする。そういう姿を見てると、寒いまんまってことはないんだなって思ったことがあって。いずれまた暖かい日が来たらこうやって元気になれるんだって思うと、もし今はうまくいってなかったとしても今だけだって思えるというか。植物から教えられることってありますね。

――今、ベランダでは何を育てていますか?

今はレモンが黄色くなってきました。すごく楽しいです(笑)。コケモモも赤くなってきました。結構、いろいろ育ってますね。

役者としての“筋トレ”をコツコツと…

――毎日を心地よく生きるために

――毎日を心地よく生きるために、心掛けていることはありますか?

考え方としては、悪いことは忘れます(笑)。忘れるように体が上手にできてますね。落ち込んだり凹んだりすることがあったら、一回「わー、バカバカ」ってなって(笑)、後はだいたい忘れてますね。好きな人に会うっていうのもいいのかな。人と会うことがこんなに大事なことなんだって気づきましたし。人と会って話すことでストレスなく暮らせてるのかもしれないです。

――お仕事で悔しいことがあったときはどうですか? どう次につなげますか?

仕事で悔しかったことは覚えてますね。すごく反省しますし、どうしたら防げたんだろう、次はどうすればいいんだろうって…。でも考えても次の現場に行くと、それどころじゃなくなってることが多くて(苦笑)。ただそれどころじゃなくなったとしても、そのとき動けるような役者としての筋肉みたいなものは鍛えていかなきゃなって思ってます。求められることに対応できる体作りや心作りをするしかないのかな。コツコツやっていくしかないというか。やりきれなかったなと思う現場で出会った人は、その私しか知らないわけで、それは次につながらない可能性の方が高いから。そんなに悔しいことはないので、それしかできなかった自分を反省して、なるべく後悔の少ないようにひとつずつ重ねていくしかないのかなって思っています。

フォトギャラリー(全4枚)

映画『天上の花』

没後80年「萩原朔太郎大全2022」記念映画。昭和になってすぐ、萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は美貌の末妹・慶子と出会う。たちまち恋に落ちた達治だったが慶子の母に結婚を拒絶され、失意のなか佐藤春夫の姪と見合い結婚をする。時は過ぎ、朔太郎三回忌で再会した達治は未亡人となっていた慶子に16年4ヶ月の思いを伝え、妻子と離縁し、慶子を家に迎える。東京に空襲が迫りくるなかで越前三国に新居を構えた二人だったが、そこには過酷な生活が待ち受けていた…。原作/萩原葉子「天上の花―三好達治抄―」 出演/東出昌大 入山法子 浦沢直樹 萩原朔美 有森也実 吹越満ほか。脚本/五藤さや香・荒井晴彦 監督/片嶋一貴●‘22年12月9日(金)ロードショー。新宿武蔵野館、ユーロスペース、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか順次公開。

【衣装詳細】
ブラウス¥27,500 デニム¥29,700(ともにSINME/www.sinme.jp)

撮影/木村 敦 ヘアメーク/美舟(SIGNO) スタイリング/小川恭平 取材・文/駿河良美 編集/宮島彰子(CLASSY.ONLINE編集室)