【東京アートパトロール】日本民藝館 アイヌの美しき手仕事美術館

民藝運動の館へ。 

渋谷から井の頭線で2駅、駒場東大前から徒歩5分ほどの閑静な住宅街に位置する『日本民藝館』。「民藝」という新しい美の概念を普及するため、1936年に思想家で民藝運動の父として知られる柳宗悦氏によって開設された美術館です。

「民藝」とは、無名の職人の手から生み出された日常の生活道具の中に美を見出し、名付けられたものをさします。
柳氏らは、生活に根ざした民藝には「用に則した健全な美」が宿り、新しい「美の見方」「美の価値観」があることを広めたのです。

『日本民藝館』には柳氏の審美眼で集められた、陶磁器・染織品・木漆工芸・絵画・金工品など、約17000点が収蔵されています。

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日本民藝館 本館外観

初代館長は柳宗悦氏。
ここを活動の拠点として様々な展覧会や研究調査が展開されました。本館の道路を挟んで向かいに建つ「西館」は旧柳宗悦邸、本館、西館ともに設計は柳宗悦氏。

現在はプロダクトデザイナーの深澤直人氏が館長を務めています。
(西館は現在感染症予防のため、非公開)
 

アイヌの手仕事の力強さと神秘性

この『日本民藝館』で開かれている展覧会が「アイヌの美しき手仕事」です。

アイヌ民族の工芸文化に早くから着目していた柳宗悦氏が、美術館で最初のアイヌ芸展となる展覧会を開催し、大きな反響を呼んだのが1941年。本展ではこの時の展示も一部再現されていました。

展示品は、オヒョウやイラクサなどの靭皮繊維で織られた衣裳や、本州から渡った古い木綿に切伏や刺繍を施した衣裳、そして幾何学文様が魅力的な刀掛け帯、アイヌ玉の首飾、儀礼の際に用いられる木製のイクパスイなど。

模様はもちろんプリントではなく、布を裂き、かがり、重ねたりして作り出されたもの。直近で見ると、一針一針を繋げていく様が見え、作った人の息遣いや当時の暮らし、風土が伝わってきます。

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赤モスリン地切伏刺繍衣裳 丈127.5cm 日本民藝館蔵
※本作品は10月18日(日)までの限定公開

チラシ1
イラクサ地切伏刺繍衣裳(テタラペ) 丈116cm 樺太アイヌ 日本民藝館蔵

「なぜアイヌにあんなにも美しく物を作る力があるのであろうか。今も本能が損なわれずに、美を創り出す動きがあるのであろうか。なぜ彼らの作るものに誤謬が少ないのであろうか。どうして不誠実なものがないのであろうか。たとえ拙い場合でも罪から遠いのだろうか。」(柳宗悦「アイヌへの見方」『工藝』第106号より抜粋)

柳氏も記しているとおり、どれも細部までの豊かな想像力や深い精神性、卓越した造形力、そして神秘性を感じます。

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煙草入れ(オトㇹコㇹペ) 高7.0×横12.0cm 静岡市立芹沢銈介美術館蔵

 

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首飾り(タマサイ) 部分 日本民藝館蔵
首飾りの色使いやサイズのバランス感など、今でも身につけて使いたくなるようなデザイン。

そしてこの博物館の魅力のひとつがミュージアムショップ。陶磁器は大分県の小鹿田や、山陰や益子、沖縄など伝統的な産地で作られたものや、個人の作り手の作品などが揃っています。どれも独自のルートと審美眼で選ばれたもの。手に取りやすい値段のものが多いので、器好きならば見入ってしまうはず。

 

この展覧会ののち『日本民藝館』は改修工事のため、来春まで全館休館予定。訪れるなら今、です。

 

そして、帰りに是非立ち寄って欲しいのが、駅前のベーカリー『ル・ルソール』。パン好きの間では有名店ですが、噂の通りでハード系のパンが充実。品数も多く、どれも粉の味を感じられる力強さ。一番人気はバケットにバターとチョコレートを立体的に挟んだ「ショコラ55」ですが、甘いもの苦手な私はイチジクを練りこんだ「パン オ フィグ」にぐっときてしまいました。

『現代のパンブームって、食の民藝運動なのかなぁ』などど勝手な妄想をしながらいただいたら、ちょっとわかった気になって味わい深かったです。

 

 

【DATA】

アイヌの美しき手仕事
〜2020年11月23日(月・祝)
日本民藝館
東京都目黒区駒場4-3-33
https://www.mingeikan.or.jp

 

 

 

text:安西繁美
女性誌やカタログで主にファッション、食関係、アートの企画を担当する編集・ライター。流行には程よく流されるタイプで、食いしん坊、ワインと旅行好き。東京日本橋出身、よって下町気質。家族や友人に美大出身が多いのに私は画力ゼロ。描けないけど書けるようになれたらいいなと。器の推しは小嶋亜創。