ゴールデンウィークに「実はカップルで観てはいけない映画」4選【理由はいろいろですが…】
今回は「大型連休にカップルで観てはいけない映画」を4本紹介します。どれもすべて良作なのですが、待ちに待ったGWデートで観てしまうと、テンションが下がってしまう可能性が高いので、もし鑑賞する際にはご注意ください…。
アラサー女子におすすめで恋愛の参考になる名作や自己啓発してくれる映画など、映画ソムリエであるライターが厳選しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
1.『ミリオンダラー・ベイビー』
デートで観ると、鑑賞後の休日はお互いを励まし合うことに時間を使いそう
名作映画にも関わらず、観てしまうと数日間凹んでしまう映画が存在します。それは、賛否両論が巻き起こる作品に多いと言えるでしょう。4K デジタルリマスター版で2021年に再上映された『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を代表格に、『ミリオンダラー・ベイビー』も同じような体感になる、後味が悪いと呼声高い映画です。
舞台はロサンゼルスにある、寂れたボクシング・ジム。トレーナーをやっているボフランキー(クリント・イーストウッド)と住み込みの雑用係をやっているスクラップ(モーガン・フリーマン)の元に田舎育ちの女性マギー(ヒラリー・スワンク)が弟子入りを志願してやってくるところから始まります。31歳という年齢のハンディキャップがありながらも本気で頂点を目指すマギー。フランキーとの間に、強固な絆が結ばれていくのですが…女性ボクサーを育てる映画かと思ってみていたら衝撃的な結末を迎えます。さすがイーストウッドです、見る人に考えるべき課題を残す演出はお手の物。公開当時は「100年に1度の傑作!」と一部メディアで囁かれていました。
本作はアカデミー作品賞を受賞し、クリント・イーストウッドこの作品で自身2度めのアカデミー監督賞を、女性ボクサーを演じたヒラリー・スワンクにも本作で2度めのアカデミー主演女優賞を、そしてモーガン・フリーマンは初のアカデミー助演男優賞を受賞しました。
この映画に関しては、Googleなどで検索してしまうとサジェストワードでネタバレされがちなので、動画配信サービスサイトの検索窓で直接調べるのをおすすめします。イーストウッドの圧倒的な演出力もあいまって、映画における人生の輝きと絶望の落差がすさまじく、精神的にやられます。デートで観ると鑑賞後の休日はお互いを励まし合うことに時間を使いそうです。とはいえ「自分らしく生きるとはどういうことか」に触れられる映画。1人の夜には、是非観てほしい傑作です。
2.『人間失格 太宰治と3人の女たち』
男が徹底的に振り回される物語かつ、ラブシーンが濃密すぎて刺激的すぎ!?
文学の香りが漂う作品だと思っていましたが、キャッチコピーは「男と女に起こることのすべてがここにある」。どちらかといえばゴージャス、スキャンダラス、ロマンティックで、極彩色を操る天才監督の蜷川実花の演出も相まって、よりセンセーショナルな映画に仕上がっているのが特徴です。作者である太宰治と、彼を愛した3人の女たちのドラマを軸にした『人間失格 太宰治と3人の女たち』は、世界で最も売れている日本文学『人間失格』が、いかにして生まれたかを掘り下げます。「3人の女たち」というタイトルからして、女たらしで恋の噂が常に絶えなかった太宰に恋愛面にフォーカスをあてて描かれていますが、意外なのは「振り回される側」だと思っていた太宰が、強い女たちにさんざん「振り回されてしまう側」だったという視点。それぞれが太宰との恋愛関係に、神経をすり減らすだけではありません。
最終的に三種三様の欲しいものを得る3人の女たち。見事なまでのガールズ・パワーに触れられる映画でエンパワーメントされる部分すらあります。いかんせん男が徹底的に振り回される物語。R15+指定。太宰のラブシーンは濃密すぎるし新緑芽吹く、爽やかな季節のGWデートで気まずくなりそうです。
執筆へのインスピレーションを見境なく求めながら、自堕落な生活を送る作家・太宰治を演じる小栗旬の色気は溢れんばかりで、ときめき要素の補填に十分すぎます。また三島由紀夫役を高良健吾が、坂口安吾役を藤原竜也が演じていて、豪華。どの文豪と付き合いたいかといった妄想の旅路には連れ出してくれるので旅行予定のないお一人様や女子会におすすめです。
3.『第9地区』
とにかく映像がグロすぎる…元気な時に観たい作品
有名な原作があるわけでもなく、出演者はほぼ無名。製作費も格安です。色々と無冠状態ではありますが、当時アカデミー賞作品賞を含む(!)、主要4部門にノミネートされた話題作。SFアクション映画『第9地区』は超面白いけれど観る人を確実に選ぶ衝撃作でもあります。エイリアンの難民が南アフリカに移住するという、世界の度肝を抜いたSF映画。ドキュメンタリータッチの演出と、アパルトヘイトの風刺のきかせた内容は世界中で大きな評価を受けました。
なぜGWデートで向かないか。もう、グロすぎるからです…。初夏には、特にふさわしくありません。地球外生命体、すなわち宇宙人・異星人といえば「ET」を最初に想像してしまう私の世代にとってこれは事件です。本作のエイリアンはエビ型エイリアンなのです。地球外生命体ってなんとなくツルップリッととしたイメージだったのですが、このエビの身体には色んなものがたくさんついています…。き、汚い…。最初に見たときは正直「もし家で1匹見てしまったら、30匹いる」と言われがちな、あの不気味な生き物を彷彿とさせる嫌悪感のビジュアルに戸惑いました(苦笑)
手持ちカメラの粗め画像を多く使用することで、映像のドキュメンタリータッチが増幅しているし、それゆえのリアルさが加味され、気持ち悪くないと言ったら嘘になります。しかしながらの没入感…!散々けなしましたが最後はそのエビが少し好きになっている不思議体験ができます。それでもやはり人は選ぶのでSF映画、ホラー映画、お好きなカップルには「元気な時に」ぜひ観てもらいたいです。
4.『愛がなんだ』
過去の恋話トークになってどちらかが傷ついてしまう可能性が
直木賞作家・角田光代原作の「純度100%の恋愛小説」と呼び声の高い作品です。恋愛にのめり込んでしまう人、好きな人に尽くしてしまいがちな人、恋をすると自己肯定感が低くなってしまう人は超要注意。おそらく見ていられないはずの過去の辛い恋愛経験を、かき集めてごった煮にしたような映画です。
28歳のテルコは、マモルのことが好きになって以来、仕事や友人がどうでもよくなるほどマモル一筋の生活に。しかし、テルコはマモルにとってどうみても単なる都合のいい女。ある日、二人は急接近し、テルコは有頂天になるが、突然マモルからの連絡が途絶えてしまいます。テルコのまっすぐな片思いの空振り感、マモちゃんの興味なし脈なし感。この対比の生々しさよ。自分の報われなき恋を思い出してしまうのです。それでも最後まで引きこまれて見てしまうのはテルコが恋で病むのではなく、マモルを全力で好きな姿勢が、もはや清々しいほどだから。恋愛版ロッキーのようなスポ根的孤高さすらあります。振り向いてもらえなさすぎても「だって死んだらマモちゃんに会えないじゃん?」と、メンヘラになるどころかとにかくブレない好き加減!気づけば「好き」と「執着」の違いについても考えたくなるタイプで、メッセージ性の深い映画でもあるんです。過去の恋話トークになってどちらかが傷ついてしまう可能性がありますので、せっかくの連休中にみるのは控えておくのが吉でしょう。
ちなみに私の知人たちから「(パッケージを見て)恋愛映画だと思って恋人と見たらつらかった…」と言われた率ベスト3に入る映画です。キラキラした胸キュン映画ではない、ドロリとした恋の湿度。相手に気持ちが届かないという経験をしたことのある人にとっては、唯一無二の親友になってくれるほど共感率100%のムービーです。つらい恋の共感相手がほしい時に、是非。
いかがでしたか?「結婚を考えたカップルが見てはいけない映画」を映画ソムリエ・東紗友美がお届けしました。映画デートは感想をシェアすることで、お互いの価値観を理解できる素敵な時間にもなります。なので、映画との出会いも一期一会ですので映画選びは大切に。素敵なGWデートを過ごせますように!
今回の記事「大人女子のための映画塾」を執筆したのは…
東 紗友美(ひがし さゆみ)
’86年、東京都生まれ。映画ソムリエ。元広告代理店勤務。日経新聞電子版他連載多数。映画コラムの執筆他、テレビやラジオに出演。また不定期でTSUTAYAのコーナー展開。映画関連イベントにゲスト登壇するなど多岐に活躍。
http://higashisayumi.net/
Instagram:@higashisayumi