フェミニズムの専門家が警鐘!「安心して年を重ねられない社会が問題です」

ふとしたときに自分の年齢が気になったり、年を取ることに対してなんとなく抵抗を感じてしまうのはどうして?私たちが「年を取りたくない」と思ってしまう理由、加齢に対するネガティブな気持ちの扱い方について考えてみました。

フェミニズムと心理学の専門家にもお話を聞きました

ほとんどの人が「年を取りたくない」と思うのには大きな理由があるはず。専門家の先生お二人にお話を伺いました。

安心して年を重ねられない社会だということも問題です

自分自身を何歳くらいかイメージ

自分自身を何歳くらいかイメージする「主観年齢」と「実年齢」の関係の調査では、20代前半で「主観年齢」が「実年齢」を下回り、「実年齢より自分は若い」と思う「自己若年視」が始まります。30歳までには女性の7割の主観年齢が実年齢より若くなり、アラサー世代の女性は20代半ばくらいに見られたい願望が強まるという調査結果も。背景には女性の魅力の一つとして「若さ」に価値をおく社会的期待があり、それが女性の自己若年視を招いているようです。女性の若さの持つ価値や「若さ=美しさ」という構図は抗いがたいものがあります。その社会的期待を10代の女性が自分たちの価値として内在化した結果がJKブランドであり、近年のルッキズム(外見至上主義)にもつながると考えます。

しかし、40代以降になるとポジティブな情報を重視する「ポジティビティ・エフェクト」がみられはじめ、その先には加齢に伴い様々な喪失を体験するにも関わらず、幸福感が保たれる「エイジングのパラドックス」という逆転現象が起こります。人は徐々に年を取ることをポジティブに捉える考え方にスライドしていくようです。アラサー世代はその転換期の直前にいてエイジングをネガティブに捉えがちな年代。「若くいたい」と思うのは悪いことではありませんが、若さ以外の価値を自分の中で持つことが重要です。わかりやすい地位などでなくても、仕事に対してきちんと結果を出していくことは自分の価値を高めてくれるでしょう。そのような内面的充実と同時に経済的な充実もとても大切。老後の備えもしっかりしているほうが幸福度も高まり、年を取ることへの抵抗もやわらぐはず。

世の中の不確定さが増し、安心して年を取れない今の社会では「年を取りたくない」と思うのも当然です。また、「結婚しない」ことを自ら選択している女性に対して、「結婚できない」「売れ残り」という言葉が向けられることも年を取りたくない気持ちを強化します。世の中はもっと女性たちの選択を優しい目で見てほしいですよね。一方で先の長い人生に向けて、若さや美しさだけではない自分独自の価値を幅広く持つことも大切。趣味でも資格でも、揺るがない何かがあると心強いですよね。年相応の美しさや若々しさと、自分なりの付加価値の両方があれば完璧。アンチエイジングには限界がありますが、エイジングに対してポジティブさを見出していく姿勢がスタンダードになるといいと思います。

\心理学の観点からお話を伺いま

\心理学の観点からお話を伺いました/
教えてくれたのは…島内 晶さん(東京未来大学 モチベーション行動科学部・准教授)
高齢者心理学、生涯発達心理学を専門に、高齢者の記憶についての研究を行っているほか、エイジングの心理学、福祉心理学などの授業を担当。

イラスト/naohiga 取材/加藤みれい 再構成/Bravoworks.Inc