「この国に生まれなくて良かった」13歳の私に父が返した言葉——「世界の幸せを知る」旅に出るきっかけに

迷いの度に旅へ出て、旅の度に自分の本心が姿を現す。見知らぬ国で出会った人、景色、そして自分自身。それらが少しずつ運命の歯車を動かし、気づけば人生は大きく方向を変えていく。そんな〝人生の大きな転機〟となった旅の物語に触れました。

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小林 希さん 43歳・東京都在住
旅作家、Officeひるねこ代表

人生の本質は、すべて旅から学んだ
旅は〝一生卒業したくない学校〟です

旅家として著書を手掛ける小林さん。13歳の時、父親の赴任先で訪れたマニラでの原体験から、旅に興味を持つようになった。「車での移動中、ボロボロの服を着た子ども達が物乞いをする様子を目の当たりにし、衝撃を受けました。思わず〝この国に生まれなくてよかった〟と呟いたら、〝物質的な豊かさが心の豊かさに繫がるわけじゃない。目に見えないものこそ、幸せの源泉なんだよ〟と父から諭されて。確かに現地の人達は、貧しくても笑顔でがむしゃらに生きている。心の捉え方次第で物事の見え方が変わるのなら、世界中の人に会って幸せの尺度を知りたい。そう思ったのが、旅に目覚めたきっかけでした」。

大学時代、アルバイト代は全て旅の資金に。「イギリス、中国、インド、モロッコ…色々な国を巡っている最中に作り始めたのが、1冊の〝旅ノート〟。風景を写真に収め、言葉を綴って記録するうちに、〝旅の素晴らしさを伝える本を作り、沢山の人を元気にしたい〟と思うようになったんです」。

夢の実現のため、IT広告会社に就職して出版事業に携わった。「仕事も順調だった29歳の頃、旅への衝動やワクワク感を抑えきれず、世界一周の一人旅に出ることを決意。人事に社員証を返したその日に、リュックを背負って日本を発ちました」。

世界を放浪する中で、それまでの価値観はガラガラと音を立てて崩れ落ちた。「まさに、価値基準の破壊と創造の連続。当たり前が通用しない世界線では、否が応でも自分と向き合わざるをえなかった。おかげで、〝こっちが好き、これは嫌〟という自分軸も自然とクリアになっていきました。思い込みや偏見が、どれほど足枷になっていたかを思い知りましたね」。

1年間の旅を終え、自作の旅ノートを出版社に持ち込んだところ、書籍の出版が決定。作家として生きる覚悟を決めた。「旅は私にとって、〝一生卒業したくない学校〟のようなもの。歴史や文化、人間関係、思考法、マインド…本質的で、普遍的な要素が全て詰まっている。だからこそ、人は本能的に旅を求めるのかなって。〝旅しよう〟と意気込む必要はなく、ただ目的地に身を置くだけでいい。小さな変化が、何かのきっかけや自信に繫がっていくはずだから」。

あまり遠い未来のビジョンを持たないのもモットー。「紛争に巻き込まれ、明日さえも約束されていない国の人々は、今この瞬間を懸命に生き抜いています。抑圧と支配の中で、歌って踊って自分を鼓舞する姿を見たら、未来に怯えて不安になるなんて無意味だと感じて。少し先の小さな夢を持って生きる方が健全だし生産性も高い。メンタルを整えて、今を楽しむことで未来は拓ける。それも、旅が教えてくれました」。

旅先での予期せぬハプニングは日常茶飯事。「旅の8割が修行。常にフラットに、凪の心を保つメンタルトレーニングができました」。

<編集後記>〝新しい場所〟に一歩踏み出す度に、人生は更新されていく

華やかな容姿からは想像もつかないほど、大胆でワイルドな旅をしていた小林さん。旅の途中で出合う戸惑いや憤り、悲しみ、喜び…それらは全て人生の糧になり、人としての奥行きを与えてくれるもの。物理的に世界を飛び回れなくとも、新しい場所や環境に一歩踏み出すことで、人生はアップデートできる。そんな気づきをもらえました。(ライター 渡部夕子)

<TOP写真>カーディガン¥26,400パンツ¥27,500(ともにミースロエ)ブラウス¥19,910(FRAY I.D/FRAY I.Dルミネ新宿店)ピアス¥12,100(ニナ・エ・ジュール/ショールーム ロイト)

撮影/堺 優史(MOUSTACHE)ヘア・メーク/神谷真帆 スタイリスト/中西雛乃 取材/渡部夕子〈小林さん〉 ※情報は2026年2月号掲載時のものです。

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