「何かに挑戦したいなら、『人に相談しない』こと」孤独でも…山本モナさん、40代で掴んだ“自分名義”の未来

仕事を辞め子育てに専念した日々…気づくと自分のアイデンティティが迷子に。かつて、やりたかったことや、なりたかったもの、忘れていませんか? 今回は司法試験にチャレンジした、山本モナさんにお話を伺いました。

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【インタビュー】山本モナさん

profile/1976年生まれ、広島県出身。朝日放送(現朝日放送グループホールディングス)を経て、2005年フリーランスに。英国国立ウェールズ大学大学院経営学修士(MBA)、早稲田大学大学院法学研究科修了。’25年に司法試験に合格し弁護士の道へ。3児の母。

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◇ 不安は何も生まないから まず、始めてみよう! と

―40代半ばに司法試験の勉強を始めた、そのきっかけは?

家事・育児に専念して数年ほどして、夫と3人目が欲しいねという話になりました。体外受精だったのですが、診察を待つ間は何も動けず…子どもができるかどうかもわからない途方もなく感じる時間の中でふと、(私どうしたいのかな?)と思うようになったんです。子どもたちも大きくなって手を離れていき、夫は事業を興しキラキラしながら仕事をしている。仕事に復帰するという女医の友達や、周りの友人たちの生活も変化していく中で、どうしようかとすごく考えました。そこで感じたのが、私にはなんにもないっていうこと。母や妻というポジションはあっても、山本モナという私自身は存在していないことに気づきました。

そのとき蘇ってきたのが司法試験への思いでした。学生時代のひとつの夢としてあったもの。フレキシブルに働いている弁護士の友人の姿も見ていたので、3人の子育てをする中で制約があったとしても、仕事をすることが叶うかもしれないと思いました。そして、せっかく始めるならチャレンジングなものにしたいと。

―ひっそりと勉強を始められたそうですね?

何かを始めたいとき、『相談しない』これに尽きると思います。配偶者や親、兄弟など意外と身近な人ほど、心配していると言いながら私たちの決心を揺るがすような言葉を投げてくることもあります。『こんな歳で始めて子どもはどうするの? アウトソーシング?』なんて言われたら、ダメなことかも…という意識に囚われてしまう。自分で決めて自分で始めていいし、決して我儘なわけでもありません。もう私たち、大人なんですもの。

相談しなくてもちゃんと自分で責任取れますから! 孤独でしたし、最初は誰にも応援してもらえませんでしたが、司法試験の塾に申し込みました。3人目の生後半年頃でした。何か歪みが生じたら、そのとき言おうって。不安よりも自分で決めたからにはやるぞという覚悟の方が勝っていました。

―時間のやりくりはどのようにされていたのでしょう?

始めた当初は、コロナ禍ということもありオンライン授業がメインでした。最初はできる範囲にして、子どもが学校に行っている間や寝ている時間だけと決めていました。自分が勝手に勉強しているのだし、何か言われないよう完璧に家事も全部やろうと思っていたんですけれど、だんだんとアレ? 掃除が? ご飯が? となってきて…。やっぱり無理かと。でも完璧じゃなくてもなんとかなりますし、夫から、『最近部屋汚いんじゃない?』と言われても、『そうだね〜汚いね〜』と言えるメンタルを持とうと思いました(笑)。そこで、(ごめん! 私が勉強なんかしているから…)なんて思ってやめたらもったいない!

それと、意外と完璧って求められてないのかも? と思ったのもこの頃。娘が小学3〜4年生くらいの時、ポロッと、『私はママみたいに勉強が好きなわけでもない。ママと違うのに、なんで自分ができることを求めるの?』と訴えてきたのです。確かに子どもにコミットし、詰め込みすぎていたかもしれません。私は良かれと思っていたけれど、それは子どもが決めることなのに、子ども自身が考える時間すらも私が奪ってしまっていたかもしれないと気付き、そこから子育てのスタンスを見直していきました。そして家庭内でも、自分でやれることはやろうと促せるようになりました。長男はアレコレ食べたいと言ってくる子なんですけれど、急に卵焼きをリクエストしてきたので、自分で作る? と教えたら上手にできて…今も食べさせてくれます。そうか、これでいいんだと。子どもに教わるものですね。

◇ 甘えたい時には甘えて お互い様で大丈夫

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―若い学生に混じりロースクールにも通われたそうですね?

司法試験の受験資格を得るには、予備試験に合格するか、ロースクールに通うかの2択があり、時間の制約もあった私は予備試験を目指していたのですが狭き門でした。司法試験の制度が変わったのを機に、早稲田大学のロースクールに入学しました。それまで孤独な中で司法試験の勉強をしてきたので、やっと仲間が! 若い子も社会人もいて、一緒に頑張る友の存在は貴重なんだと改めて思いました。

また、早稲田には子どものいる方も何人かいて、社会人パパママ会というサークルもあったんです。情報交換や助け合うことができたのもありがたかったですね。20代の学生の中に40代半ばの私が混じれるのかと気にしていましたが、意外と若い人たちは気にしないんだなと思いました。仲良しもできて、飲み会にも誘ってもらえてましたし…久しぶりの学生生活はこの上ない特別感がありました。

ただし、毎日ではないにせよ通学するためには家族の協力も必要で、入学する前に、夫に『ロースクールに行きたいと思っているんだけど、どう思う?』とたずねました。すると、『やってみたら』と背中を押してもらえたのは心強かったです。お互いを干渉しすぎず尊重できるという意味で、良い距離感が私と夫にはあるように思います。

長女や長男は学校に上がっていましたが、難関は次女の幼稚園の送迎。そこは夫に調整してもらったり、幼稚園のママ友に頼ったり…。友人には本当に助けてもらいましたね。私が司法試験の話をしたら『なんで? もっと早く言ってくれたらよかったのに!』と。私、人に甘えることが苦手だったんです。甘えは弱さだと思っていたから。これも年齢でしょうか、甘えていい時は甘えさせていただいて、自分に余裕がある時には替わって…お互い様で大丈夫なんだなと思えるようになりました。

司法試験は初回は根拠のない自信があり、相場感もわからず…受かるんじゃない? くらいに思ったものの不合格。ロースクールを卒業して2024年に受けた2回目、これ以上ない位、勉強して全てを投げ打って全力投球で臨んだにもかかわらずダメ。今までそのような経験をしたことがなくて、(私ってバカなんじゃない?一生受からないかも)と落ち込みましたが、そんなことを考えている間にも、次の試験の日は刻一刻と迫る。すぐに切り替えて、勉強方法を友人の弁護士に相談してやり方を変えました。

記憶から逃げなくなった3回目、もしかしたら一番勉強の幅が狭かったかもしれないその年、司法試験に合格しました。(終わった…)ほっとしてしばらく動けなかったですね。そばにいた長女に報告したら『よかったね』って言ってもらえました。

―弁護士の登録は旧姓で?

内定をいただいた弁護士事務所の代表の方からの勧めでもありました。『なんの属性も持たずにやってみたら?』と。そういう視点もあるのか…と、いざ『山本』と旧姓で登録者名を書いた時、感じたことのない清々しさがありました。自分の在り方というか、私のアイデンティティはここにあったんだと改めて思った瞬間でしたし、何にも頼ることのないということに身の引き締まる思いも。局アナからフリーアナウンサーになり、タレント、結婚、出産、子育てと、様々な経験、体験もしてきたので、話しやすいと思っていただけたら。大きな分野としては著作権に関する専門性を高めていきたいと思っています。あらゆる面で、今だからこそ良かったんだと思えることはたくさんあります。

これがもし30代だったら、もっと周りの目が気になって、完璧を求めすぎていたかも…。40代だから、ある程度諦める余裕もできて、(私は私)と思えるように、生きやすくもなりました。夫と妙な軋轢を生まない距離を保てる関係になれたのも、今だから。これから本格化する仕事に不安を抱えつつ、完璧な両立なんてできなくても、バランス力に優れているのが、40歳をすぎた私たちの強み、そう思いながら突き進みます!。

【編集後記】思い立ったが吉日! 山本さんに勇気をもらえた

子どもが幼稚園の頃、〝〇〇ちゃんのママ〟でしかなかった自分を思い出して胸が詰まり、40代になって新しいチャレンジなんて無理だと思っていた自分に対して勇気と希望をもらう。山本さんのお話に心が揺さぶられました。生きている中できっと今が一番若い私たち。何か始めるならきっと今…でもこっそり始めるのがポイント(笑)。(ライター竹永)

撮影/吉澤健太 ヘア・メーク/陶山恵実 スタイリスト/小笠原靖子 取材/竹永久美子 ※情報は2026年5月号掲載時のものです。

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