柄本佑さん、初めての映画から25年。 今、役者としての基本、“ただ歩く”ことこそが難しい

本年2月公開の直木賞受賞作を同名映画化した「木挽町の仇討ち」は、時代劇として異例のヒットを記録し、
主演の柄本さんの軽妙な演技にも注目が集まりました。
今年40歳を迎える柄本さんは、14歳の役者デビューから25年。
この先も続く役者人生の中での現在地、その思いをお聞きしてみました。

40歳を前にすれど、僕は変わらない。先のことより目の前のことに必死です

僕は今年40歳になるのですが、同世代の知人から「40歳を前にして、
これからの人生について考えてしまう……」なんて話をよく耳にします。
でも、僕の場合は目の前のことに必死でそれどころじゃない。
20歳になる時も、30歳になる時もそんな気持ちにはならなかったし、
年齢に関して思うところもなかったんです。

年齢を意識したのは、初めて映画に出た14歳の頃でしょうか――。
映画が大好きだったから、共演する大人の俳優さん達を仰ぎみて、
「もっと早く大人になりたい。先輩俳優さんのように知性を感じる演技がしたい」
「年を取ったら、きっとあんなふうになれるのかな」、そんなふうに思っていました。
でも、今39歳の僕は、あの頃と根っこのところは変わっていません。

先日、今回の映画『メモリィズ』でご一緒したイッセー尾形さんが、74歳と聞いて驚きました。
本当に、「若いな」って。
ほぼ初対面だったのですが、すごくシャイでチャーミングな方で。
なんかそのシャイさとチャーミングさが、僕が演じた雄太の義父役にピッタリで、
義理の息子との距離感と空気感を絶妙に醸し出していたと思います。
一緒にやらせていただけて本当に良かったし、なんかとっても楽しかったですね。
39歳の僕は、14歳の頃と同じようにイッセー尾形さんを仰ぎみていました。
きっと僕は、イッセーさんのように70代になったとしても、
変わらない気がしています。

25年役者を続けてきた経験こそが、壁になることもある

今年で役者を続けて25年になるのですが、今回の映画は僕にとって原点に
立ち返る映画となりました。
九州の田舎町をただ散歩したり、じっと風景を眺めていたり、義父とテーブルを挟んで
食事をしたり……、セリフがほとんどないんです。
もしかしたら、オーディションで見出された新人俳優が演じるほうが自然体で自由に
演じられるのではないか? そんなふうに感じることもありました。
25年役者を続けている僕は、つい分かったつもりになってしまう。
セリフがなく手持ち無沙汰だと、何だか不安になったりもして……。
そういったところを、いかに取り払うかに注視していたような気がします。
役者の根本的なところなのですが、ただ“歩く”といういうことこそが、ものすごく難しいんです。
経験を重ねるほどに、だんだんだんだん歩けなくなっていく――。
だから、ある意味僕にとって今回の映画は、すごく難しく、
役者の根本に触れていくような作業でした。
そこに注力できたのは、大分の南西にある竹田という田舎町で
日常と隔離されて撮影したことが大きいと思います。

40歳を前に、役者として原点に戻って挑んだこと――、
この作品は、僕にとって良き体験となりました。

ジャケット403,700円、ニットポロ201,300円、デニムパンツ190,300円、中に履いたパンツ182,600円、シューズ143,000円(すべてメゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパン クライアントサービス︎TE L:0120・934・779)

柄本 佑

東京都出⾝。 『美しい夏キリシマ』(03) で映画主演デビュー。近年の主な出演作に、『素 敵なダイナマイトスキャンダル』(18/冨永昌敬監督)、『きみの⿃はうたえ る』(18/三宅唱監督)、『⽕⼝のふたり』(19/荒井晴彦監督)、『痛くない死 に⽅』(21/⾼橋伴明監督) 、『⼼の傷を癒すということ-劇場版-』(21) 、『先⽣、私の隣に座っていただけませんか?』(21/堀江貴⼤監督) 、『真夜中⼄⼥戦争』(22/⼆宮健監督) 、『ハケンアニメ!』(22/吉野耕 平監督) 、『シン・仮⾯ライダー』(23/庵野秀明監督) 、⼤河ドラマ「光る君 へ」(24/NHK) 。26年の待機作に『⽊挽町のあだ討ち』(2⽉27⽇公開/源孝 志監督)、『⿊牢城』(⿊沢清監督)、『最後の遊戯 LAST DANCE』(村川 透監督)、『このごにおよんで愛など』(広瀬奈々子監督)がある。

『メモリィズ』
出演:柄本 佑/穂志もえか/梅沢昌代 伊佐山ひろ子 成田裕介 占部房子/香椎由宇/イッセー尾形
監督・脚本:坂⻄未郁
6月12日(金)より新宿ピカデリー他にて全国公開
雄太が九州の⽥舎町へとやって来たのは、⾜を⾻折した義⽗が回復するまで⾝の回りの世話をする ためだった。義⽗が営む昔ながらの写真館の仕事を⼿伝いながら、東京にいる妻と娘との間で、スマ ホで撮った映像を交わす。⼤きな事件は何も起こらないが、⽇々の些細な出来事と、その記録と記憶 の連なりに、家族の⼈⽣という⻑い時間の存在が、静かに、鮮やかに浮かび上がってくる──。

撮影/田頭拓人 ヘアメイク/星野加奈子 スタイリスト/林道雄
取材・構成/河合由樹

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