女性の最高責任者は初…JAL航空整備士「極限の現場。でも、生まれ変わってもまたこの仕事をしたい」
どんな職種にも女性が半数というのが理想ですが、日本ではまだまだ。特に、命を預かる船長や機長などは圧倒的に男性が多数です。そんななか、今回登場する女性たちは、「やりたい」意志を貫き、ガラスの天井を打ち壊して進んでいます。そして、そのあとを若い世代がどんどんと追いかけています。どんな職場にも女性がいる日常は、すぐそこまで来ているのです。
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株式会社JALエンジニアリング航空整備士
武藤美希さん 武藤美希さん
安全は絶対。その揺るがぬ軸で
今日も一つひとつ的確に判断します
今日も一つひとつ的確に判断します
中学時代、自分の手でものを直す整備士の仕事に憧れていた武藤さん。「好き」という直感に導かれ、飛行機整備の道へと進みます。入社当初から目標はライン確認主任者。テキパキと現場を仕切る先輩の姿に触れるたび、その想いは強くなり「自分もそうなりたい」と思い続けてきました。
大半が男性の職場という環境のなか、プレッシャーを感じる場面も少なくなかった。それでも先輩や仲間の支えに幾度となく救われてきました。様々な場面においての判断の勘所や心構えを学び「自分が確認主任者だったらどうする?」と問い続けた日々。その積み重ねが確かな判断力を育て、最短7年でJALの女性初のライン確認主任者となります。
この資格は飛行機を安全に出発させるかどうかの最終判断を担う最高責任者。状況によっては遅延や欠航を決断しなければならない。の一つひとつの判断が、多くのお客様の時間とかけがえのない命に直結します。
なかでも武藤さんの記憶に強く残っているのが、ハワイ勤務時の出来事です。夜のフライトの出発直前に、機体トラブルが発生。安全確認に加え、出発に不可欠な整備記録の作成までを一手に担う状況でした。対応が遅れれば欠航となり、多くのお客さまに影響が及ぶ。そんな極限のプレッシャーの中、「絶対に日本へ送り届ける」と諦めず、関係各所との調整を続けました。
張り詰めた緊張の中、ようやく出発にこぎつけ、滑走路へ向かう機体を見送ったとき、言葉にならない達成感が込み上げたといいます。覚悟が報われた瞬間でもあり、この一機については忘れられない経験として今でも心に残っているんだとか。
現場では時に複数のトラブルが同時に発生します。整備士への指示に加え、乗務員や乗客への調整、説明まで担う必要があります。その中で動揺を見せず、全体を見渡しながら的確にコーディネートしていくこと。それが武藤さんの考えるリーダー像です。これまで積み重ねてきた経験が今の判断を支え、一つとして同じ現場がないからこそ、乗り越えてきたことが自分の誇りになっているといいます。
現在も女性は1割弱という現場ですが、環境は確実に変化しています。性別に関係なく働ける土壌が整いつつあり、自身が現場に立ち続けることで、女性が結婚や出産を経ても、キャリアを続けられる一つのロールモデルになれたらという気持ちを持って働いているんだとか。
「最初は自分のために取った資格。でも今は後輩のために繋げていきたい」。そう語る武藤さんが目指すのは、身近な社員を支えるリーダー。1人ひとりの可能性を広げていく存在です。
「生まれ変わっても、また整備士になりたい。そう言い切れるほどこの仕事は楽しく、そしてかけがえのない使命です」。
【編集後記】JALの〝安全第一〟の姿勢が 生み出す熱い想いに脱帽
私自身も日本航空で働いていた元社員。今回撮影をしたのは当時入社式をした場所でもあり、ご縁が繫がった取材でした。私が働いていたときと変わらない、チーム一丸となって動く結束力や、仲間を思いやるあたたかさが今も息づいている素敵な会社。武藤さんの想いに涙しそうになることも。やっぱりJALが好き!と改めて思った取材でした。(ライター 小出真梨子)
撮影/西あかり〈武藤さん〉取材/小出真梨子 ※情報は2026年6月号掲載時のものです。
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