「宝塚時代は自分が大嫌いだった」 元宝塚トップスターが語る自分と仲良くなれるまで

退団後も輝き続ける宝塚OG、今回は元娘役、星組で6年間トップを務め、娘役に新しい風を吹き込んだ夢咲ねねさんが登場。ずっと変わらぬ可憐なオーラの陰には、ひたむきに自分と向き合ってきた長い道のりがありました。

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お話を伺ったのは……夢咲ねねさん

《Profile》 富山県出身。愛称ねねちゃん。中学校の卒業旅行で宝塚を初観劇し受験を決意。2003年に89期生として入団し月組に配属。2008年に星組へ組替え、2009年星組トップ娘役に就任。柚希礼音の相手役として『オーシャンズ11』や『ロミオとジュリエット』など数々の話題作に出演。2015年に退団後も『1789-バスティーユの恋人たち-』『ポーの一族』『東京ラブストーリー』など舞台を中心に活躍している。

──インスタグラムで舞台で使われたコスメを公開されています。メークは役作りで重要ですか?

宝塚はお稽古期間が短いので、お稽古場から役を意識したヘアメークで臨み、早く役を体になじませようとしていました。だから当時は素化粧も濃いめ。今も台本を読みながら、この人物ならどんなメークをするかな、と想像しながらコスメを選び、その役に近づいていきます。

──退団されて美容のために始められたことはありますか?

宝塚時代がアスリートのようにハードだったので、ジムにも通ってみたけど私には続かなかった(笑)。今は家で過ごす時間を大切にしています。ヒーリング音楽をかけてお香を焚いて、朝と寝る前に必ずストレッチ。オン・オフを切り替えて自分をコントロールするリズムを作ります。心が疲れていると、体も肌もダメージが出やすいし治りにくい。オフの日に何も予定がなければ、安らかに過ごして心の充電をするようにしています。

──宝塚では柚希礼音さんと6年間トップコンビを組まれて、娘役に新しい風を吹き込まれました。

私は背が高いので、周りからの勧めで男役志望として受験したんです。でも娘役への思いを断ち切れなくて、音楽学校の本科生(2年目)のときに娘役に転向。でも骨格がいいので、はかない役などなかなかもらえない。衣裳が体に合わなくて少しでも華奢に見せようと試行錯誤していた時、上級生に「学年が上がったらあなたらしさに気づく時がくる」と言われて。そのときは意味がわからなかったんですが、大人の女性役をいただけるようになって、私の個性はこれなのかも、とマイナスをプラスに転換できるようになりました。

──『オーシャンズ11』のようなかっこいい女性像が求められる作品が出てきた時期でしたね

三歩下がって男役さんに寄り添うというのが娘役のあり方だと思っていたけど、「対等に横に並んでほしい」という柚希さんからの言葉で意識が変わりました。以前は役に振り回されているところもありましたが、今は役を無理やり自分の中に入れようとしたり我を出そうとせず、ニュートラルに、まっさらでいたい。それって意外に難しいですが、そこから自然に湧き上がってくる役の感情を大切に、私らしさを表現できたらと思っています。

──夢咲ねねさんにとって「美しく生きる」とはどんなことですか?

自分と仲良くすること。私、宝塚時代は自分が大嫌いだったんです。ダメなところばかりに目がいくようになってしまって。現役中の映像とか、怖くてしばらく見られなかったくらい。退団して、いろんな作品に携わったり、沢山の方々に出会う中で、ふと在団中の自分を見つめ直した時に、よく頑張ったね、と自分に言えるようになったんです。退団後本名に変えた芸名を、再び夢咲ねねに戻したのも、今頑張れているのはあの時の自分があったから、と思えるようになったから。今、少しずつ自分と仲良くなっているところです。それが心の健康、美しさにつながる気がしています。

夢咲ねねさんからのメッセージ

「時間ができたら、47都道府県を一人で旅してみたいんです。友達との旅も好きですが、一人旅って自分を見つめ直す時間でもありますよね。自分と仲良くなれるきっかけになりそうです」

《衣装クレジット》 ボウタイブラウス¥69,300、スカート¥97,900(ともにコート/イザ)リング〈左手人差し指〉¥30,800、ピアス¥19,800(ともにスワロフスキー・ジュエリー/スワロフスキー・ジャパン)シューズ¥133,100(セルジオ ロッシ/セルジオ ロッシ カスタマーサービス)

2023年『美ST』7月号掲載 撮影/八木 淳(SIGNO) ヘア・メーク/TOMIE スタイリスト/池田未来 取材/稲益智恵子 編集/石原晶子

美ST