【JJドラマ部】2024夏ドラマ「この俳優が良かった!」BEST5

『海のはじまり』(フジテレビ)公式ホームページより

今年の夏は『西園寺さんは家事をしない』をはじめ、話題作が目白押しだった、ドラマファンにとっては幸せなクールでした。今回の対談はそんなドラマを支えた俳優に注目。ドラマオタクのコラムニスト小林久乃と元JJ編集長イマイズミがそれぞれ気になった俳優をピックアップしました。

【コラムニスト小林久乃が注目した俳優】
・大竹しのぶ『海のはじまり』
・倉田瑛茉『西園寺さんは家事をしない』
・余貴美子『新宿野戦病院』『虎に翼』
・戸塚純貴『青島くんはいじわる』『新宿野戦病院』『虎に翼』
・塚地武雅『新宿野戦病院』『虎に翼』

【元JJ編集長イマイズミが注目した俳優】
・有村架純『海のはじまり』
・及川桃利『クラスメイトの女子、全員好きでした』
・成田凌『降り積もれ孤独な死よ』
・松田元太『ビリオン×スクール』
・中沢元紀『ひだまりが聴こえる』

まずドラマオタクが選んだのは演技モンスターの女優二人

元JJ編集長イマイズミ(以下イマ):今年の夏ドラマは充実してましたねー。ホントに寝る時間がなかったし、リアタイした作品も多かったです。

コラムニスト小林久乃(以下、小林):ドラマ自体はそこまでのめり込めなかったけど、この俳優が出てるからつい観ちゃうって作品も結構ありました。

イマ:今回の対談は新しい試みとして、俳優に注目して夏ドラマを振り返ってみましょう! まず小林さんがあげたのは大竹しのぶですね。

小林『海のはじまり』(フジテレビ系)は、大竹しのぶ(南雲朱音役)の演技が観たいだけで観ていたといっても過言ではありません! 彼女は、たった一言のセリフにその人物の背景を感じさせるんですよ。

イマ:第3話で百瀬弥生(有村架純)に「子供産んだことないでしょ」と言い放ったときは震えました…。

小林:あれは、水季(古川琴音)がいるはずの場所に弥生がいることへのいら立ちから出ただけじゃなくて、朱音が不妊治療の末に水季を産んだ苦労も含んだ言葉なんだなと想像しました。

イマ:中絶した過去のある弥生には心臓を槍でぶっ刺すくらいの辛いひと言でしたね。まあ、そのことは第4話で知ることになるんですが…。その他にも、水季の遺品整理をしている時、津野くん(池松壮亮)に「家族だけでやるんで触らないで」と突っぱねたり、夏(目黒蓮)と海(泉谷星奈)が二人暮らしをする時に「(海を)奪われるようなものだから」とボソッと言ったりと、セリフの温度は低いのにトゲがすごい。

小林:このドラマで朱音は悲しい気持ちを抑えながらも、たまにボロッときつい言葉が出る感じなんですけど、『それでも、生きてゆく』(2011年/フジテレビ系)での怒りと悲しみを爆発させるシーン(第8話)は神がかっていました。

イマ:風間くん(三崎文哉役)にフルスイングのビンタ!

小林:つかみかかって罵倒しながら、娘が死んでから生き地獄のような時間を過ごしたことを吐露する。これはドラマ史に残る名場面だし、大竹しのぶじゃなきゃ成立しなかったと思います。

イマ:第5話で10分以上の長台詞をしゃべるシーンも印象的でした。そして、『海のはじまり』にはもう一人、演技お化けが出ていました。

小林:イマイズミさんがあげていた有村架純ですね。

イマ:このドラマで、彼女はあまり大きな感情表現をしないんですよね。夏がたまに無神経なことを言っても平気そうな顔をしてるけど、傷ついてたり悲しんでたりしてるのがちゃんと伝ってきて胸が苦しくなりました。

小林:有村架純って、ホントに不幸な役が多いんですよ。『いつかのこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年/フジテレビ系)では育ての親に家政婦のようにこき使われて、『ひよっこ』(2017年/NHK総合)では父親が失踪して、『姉ちゃんの恋人』(2020年/フジテレビ系)では両親を交通事故で亡くして…。そして今回は、母親とうまくいってなくて、中絶の過去があり、夏と結婚するつもりだったのに別れることになるという不幸の集大成みたいな役柄。

イマ:演技力があるからこそ、こういう役があてられるんでしょうけど、彼女自身から芯の強さを感じるから、どんな不幸でも乗り越えられそうって思っちゃう今後も不幸な役シリーズがどんどん増えていくんだろうなー(笑)。

子役が活躍するドラマが人気だった夏ドラマ

小林:『海のはじまり』では海役の泉谷星奈ちゃんが注目されていましたが、私は『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)でルカを演じた倉田瑛茉ちゃん推しです。彼女、2020年生まれですよ!

イマ:2020年ってつい最近ですよね(笑)。まだ幼稚園の年中さんの年か…。

小林:いい感じで気が抜けてて、演技なのか素なのかわからない子どもらしさが魅力的でしたね。SNSでは「えまほく」(劇中で親子だった松村北斗と倉田瑛茉のこと)で盛り上がってました。

イマ:インスタを見てると、本番じゃないところでもずっと一緒ですもんね、この二人。

小林:北斗くんの方がロスになるんじゃないかな(笑)。瑛茉ちゃんはデキる子役のように変に大人びてないところがいいんですよ。昔、テレビ誌の取材でドラマ現場に入ったとき、子役の子に「お疲れ様ですっ!」ってハキハキ挨拶されたことがあって、うわっ、プロ意識高すぎるなって思いました(笑)

イマ:夏ドラマでも、神木隆之介や安達祐実、吉川愛など子役出身の俳優が活躍していましたが、生き残っていくのは大変でしょうね…。

小林:今クールは『西園寺さん』や『海のはじまり』など、子役が鍵になるドラマが多かった気がします。

イマ:たしかに! 私があげた及川桃利くんも『クラスメイトの女子、全員好きでした』(読売テレビ・日本テレビ系)で素晴らしい演技をしていました。再現ドラマに出るくらいのキャリアしかなかったのに、このドラマでは“ほぼ主役”に抜擢!

小林:髪の毛をくるくる巻いててわかりにくいけど、実は昭和の二枚目顔ですよね。

イマ:まだ14歳なのでこれからが楽しみです。あと、及川くん以外のクラスメイトも個性的な俳優ばかりでしたね。

小林:NHKの『中学生日記』を彷彿とさせるセレクト(笑)。こう言っちゃなんですが、美男美女すぎないからリアリティーがあるんですよ。『天体観測』(2002年/フジテレビ系)あたりから青春群像劇にイケメンと可愛い子をずらっと並べるようになった気がします。

イマ:最近だと、『真夏のシンデレラ』(2023年/フジテレビ系)もキャストの顔面偏差値が高いですね。昔だったら柳沢慎吾あたりがやるコミカルな役を白濱亜嵐がやってたり。

小林:やっぱり一人は欲しいですよね、『愛という名のもとに』(1992年/フジテレビ系)のチョロ(倉田篤/中野英雄)的な人。

『新宿野戦病院』と『虎の翼』が出演者かぶりまくり

イマ:そんなチョロの息子・仲野太賀が主演を務めた『新宿野戦病院』(フジテレビ系)に出ていた塚地武雅、戸塚純貴、余貴美子をあげてますね。しかも、この3人は『虎に翼』(NHK総合)にも出ています。

小林:『新宿野戦病院』は個性的なキャスト揃いでしたが、塚地さんが演じた堀江しのぶは特に良かったです。放映前には公式サイトでの堀江しのぶの人物紹介文でひと悶着ありましたが、始まってみたらそこらへんの批判は一切出ない圧巻の演技でしたね。

イマ:認知症の母親のために父親のふりをするエピソードの回は胸にぐっときました。

小林塚地さんの話し方ってとても丁寧で、セリフの内容が心に伝わってくるんですよ。堀江しのぶでスピンオフをやってほしいくらい魅力的なキャラでした。

イマ:あと、ペヤングをめぐるやり取りもコミカルで面白かった(笑)。あれを見て夜中に食べたくなった人、いっぱいいたんじゃないかな?

小林:その一方で、『虎に翼』では弱きを助ける気骨ある弁護士役。役の振り幅が凄い。あと、『ドランク塚地のふらっと立ち食いそば』(BS日テレ)ではメインMCとしてちゃんと芸人さんをやってるんですよ。

イマ:え、BSのバラエティー番組までチェックしてるんですか(笑)。いやー、売れてますよねー。

小林:売れているといえば、戸塚純貴は『新宿野戦病院』『虎に翼』に加えて、『青島くんはいじわる』(テレビ朝日系)にも出演しています。

イマ:ざっと調べたら2024年はテレビドラマ8本、映画5本、舞台1本と、バイプレーヤーだとしてもかなりの出演数です。ウィキペディアをいくらスクロールしても一番下までいかない(笑)。

小林:彼、実はジュノンボーイ出身だって知ってました? 2010年の「理想の恋人賞」を受賞して、『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~2011』(2011年/フジテレビ系)で俳優デビュー、『仮面ライダーウィザード』(2012年/テレビ朝日系)にも出演しています。

イマ:最初はイケメン売りだったんですねー。

小林:でも、圧倒的にコメディー路線の方が合ってる。最も尊敬する役者は「ジム・キャリー」だし。

イマ:『虎に翼』では#俺たちの轟というハッシュタグができるくらい人気が出ましたね。

小林彼が出てくるとどんなに緊張した場面でもホッとするんですよねー。『肝臓を奪われた妻』(2024年/日本テレビ系)ではコメディー要素がなかったせいか、ちょっと物足りなかったです。

イマ:あと、小林さんがあげたのは余貴美子ですね。『虎に翼』ではちょっと控えめな後妻役として出ていましたが、もちろんそれだけで終わるはずもなく…。

小林:あれを見て、昔の人って認知症になっても着付けは忘れないのかって妙なところで感心してしまいました。それと彼女、60代後半でいまだにちゃんと色気があってカッコいいんですよね。『サンクチュアリ -聖域-』(2023年/Netflix)では胸を揉みしだかれてたし(笑)。女性としても憧れます。

イマ:認知症の老女から借金まみれの不良母まで、彼女も役の幅が広いですよね。

小林『ちゅらさん』(2001年/NHK総合)あたりの時より、今のはっちゃけた感じの方が好きです。

イケメンで演技が上手い3人に注目

イマ:私が今クールで注目したのは、成田凌松田元太、そして中沢元紀です。

小林:あれ、イケメンばっかりじゃないですか(笑)。

イマ:そうなんですよ、いつもは小林さんの役目なのに…。今クールでリアタイするのが楽しみだった『降り積もれ孤独な死よ』で主演を務めた成田凌、個人的に2024年夏ドラマ主演男優賞をあげたいくらい良かったです。

小林:主人公が犯罪者だったという斬新な設定でしたね。

イマ:虐待された過去があって自身の衝動を抑えきれずDVをする親に暴行を繰り返してたという前提があるんですけど、13人の子供を殺した真犯人に対してブチ切れるシーンでは完全にぶっ壊れてしまって、見ていて恐怖を感じるくらいの迫真の演技。

小林:映画『愛がなんだ』(2018年)や朝ドラ『おちょやん』(2020年)など、ダメ男だけどほっておけない役を演じることが多いですよね。

イマ:そうなんですよ。また、体温低めなイケメン役かと思って油断してたら…。

小林:大倉(忠義)くんと共演した『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)を観てほしいな。結構、攻めた役柄の成田凌が見られますよ。あ、でも家族のいるリビングでは観ないでくださいね。R15+指定なんで(笑)。

イマ:じゃあ、スマホでこっそり観ますよ(笑)。あとは、松田元太! 『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)では、不良グループから途中で足抜けする生徒の役をやってたんですけど、その葛藤する演技が本当に良かった。あんなに繊細な表現ができるのに、なんで九九ができないのか不思議です(笑)。

小林:昔のジャニーズのDVDを見るとジュニアとしてバックで踊ってるんだけど、その時はただの可愛らしい男の子であまり目立ってない。あのメッシュのロン毛にしてから、個性が出てきたと思います。

イマ:え、髪型のせいですか?(笑)。

小林:そういうの、意外に大事なんですよ。万人に覚えられるようになるって大変だから。

イマ:あと、ダンスが売りのTravis Japanのメンバーだけあって、ちょっとした動きに身体能力の高さを感じます。

小林:なんだかんだ言って、あの事務所(STARTO ENTERTAINMENT)の子たちは凄いよね。歌もダンスもできて、なおかつ演技もできるんだから。

イマ:バラエティー番組での立ち回りもちゃんと理解してそつなくこなしますもんね。やっぱり踏んだ場数が違うからでしょうか。そこはK-POP系のアイドルとは一線を画していますね。

小林:そして、イマイズミさんがあげてたのが中沢元紀。実は顔がべらぼうにタイプです(笑)。

イマ『ひだまりが聴こえる』(テレ東系)の杉原航平役が良かったんですよー。難聴という障害を抱えていて人との距離を置きがちな彼が、太一(小林虎之介)と出会うことで少しずつ変わっていくという、とても繊細な役。『下剋上球児』(2023年/TBS系)での不器用な元エースとはまた違った一面を見られました。

小林:来年の前期朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)に出ることが決まってるようですね。あ、事務所がトライストーンだ。

イマ:トライストーンがどうかしました?

小林来年、トライストーン所属の俳優たちが出る運動会が開催されるんですよ!

イマ:え、ジャニーズとか宝塚が過去に運動会をやってたのは知ってましたが…。

小林:たぶん小栗社長が、親友でありイベントの名プロデューサでもある松潤にアドバイスされたんじゃないかな、運動会はいいよって(笑)。

イマ:(トライストーンのHPを見ながら)年内にウォーミングアップツアーを3公演やって、来年3月に本番の運動会ですね。

小林:笠松秀幸がMCで木戸大聖、赤楚英二、坂口健太郎まで出るのか…。中沢くんも出るよね?

イマ:そりゃ出るしょ。若手なんだから一番走らされるに決まってる(笑)。

小林:何とか取材で現場に入れないかなー。

イマこの対談を関係者が読んでいることを願いましょう(笑)。

小林久乃(こばやし・ひさの)コラムニスト、編集者。正々堂々の独身。中学生から地上波ドラマを愛して30年以上、筋金入りのオタク。好きが高じてついには『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。ラブストーリーが好きで、特に禁断の恋がテーマとなると視聴熱が俄然、盛り上がる。公式HPはhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

元JJ編集長イマイズミ 女性誌『CLASSY.』『JJ』の編集長を歴任。1クールの地上波ドラマを全録画するようになったのは、編集長になった13年ほど前から。「仕事で新しい俳優、タレントさんを覚えるため」というのが理由だったけど、見事に大ハマり。ホームドラマとラブコメ好き。韓国ドラマもやや中毒。

イラスト/lala nitta