【更年期】に縛られない。俳優・歌手のいしのようこさん流「気持ちがラクになる」生き方

すべては自然に訪れるもの。受け入れて雑に扱わない──。いつまでも年齢不詳の透明感を保ち続ける、俳優・歌手のいしのようこさんがたどり着いた究極の年齢の重ね方は、更年期への向き合い方に通じるものがありました。

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いしのようこさん profile

1968年2月20日、兵庫県生まれ。58歳。俳優・歌手。1985年、歌手としてデビュー後、ドラマ・映画・バラエティ番組などで俳優として幅広く活躍。昨年歌手デビュー40周年を迎え、最近では時代劇「あきない世傳 金と銀」シリーズなどに出演中、話題に。


細かく言えば 不調はたくさん

更年期症状は、細かく言えばさまざまなものを感じています。だるくて疲れが取れていない日もあれば、ホットフラッシュなのかも? と思うようなほてりや発汗もあります。本を読んでも眠れなくて、夜中に目が醒める(*1)こともたびたび。去年なんて五十肩になって、ほんとに肩が上がらなくてびっくりしましたしね。

でも、年齢を重ねると、そういう変化や不調って当たり前に出てくることではないでしょうか。ことさら更年期というくくりで考えなくても、人間が50年も生きていれば、いろんなところに不具合が生じるのは自然だと思います。考えたり悩んだりしてもキリがないし、対処するのも限界があります。ですから体調の変化や不調に抗うことなく、受け入れて、怖がらないように心がけています。抗ってしまうと、逆にしんどくなるような気がして。

ただ私の場合は「更年期だから」と名前を与えてしまうと、なんだかその事実に気持ちが引っ張られてしまうんです。人によっては「更年期だからしょうがない」と考えることでスッキリする人もいると思いますが、私はあえて50歳前後からの変化は「加齢による当たり前の変化」だと思うようにして、更年期と結びつけないようにしています。

【*1・中途覚醒】

エストロゲンの減少によって自律神経が乱れることで、睡眠を促すメラトニンの分泌サイクルが変化、眠りが浅くなる症状がよく見られます。寝室の環境調整や最近話題のリカバリーウェアなどを試してみるのもおすすめ。改善しない場合は婦人科や内科などで相談を。

更年期に結びつけないで やり過ごすことも大切

— 歌手としてデビューして昨年で40周年を迎えた、いしのようこさん。清楚で穏やかな笑顔のイメージは若いころとまったく変わりません。透明感あるお肌や華奢なスタイル、あまり公開されていないプライベートもあいまって、今改めてミステリアスな素顔に注目が集まっています。

年齢とともに「こんなはずじゃなかった」「若いころはもっとできたのに」と不安になったり、悲観したりすることは増えてきます。でも、みなさん、同じだと思うんですよ(笑)。自分だけが特別なわけではありません。腰が痛くなることもあれば、股関節が硬くなることもあります。不調を感じたら、いったん受け止めて、その都度対処すればいいと思います。腰痛対策の運動を試してみたり、ストレッチしてみたりして自分に合った方法を見つけていけばいいのではないでしょうか。

私の場合は「どうすれば自分がいちばん楽でいられるか」を優先して行動するようにしています。〝楽〟でいるためには、自分自身の状態をフラットに保ち、気分を落ち着ける方法をいくつか持っておくことが大切です。例えば、読書は私にとってもっとも手軽に心を整えることができる方法です。活字中毒なので(笑)、時間を作っては書店に足を運び、ピンとくる本との出合いを楽しみます。

寝る前には、どんなに疲れていても必ず枕元に置いている本を開きます。どんなジャンルも好きで、ノンフィクションや専門書も読みますし、純文学で言えば小川洋子先生の作品や、時代小説なら高田郁先生の作品はほとんど読ませていただいています。高田先生の『あきない世傳』シリーズのドラマ化で私も出演させていただくことになったときには、光栄であり、大変緊張もしましたし、不安もありました。あまりに原作が好きすぎて、映像になったときに、その世界観を本当に表現できるのか、プレッシャーを感じました。でも先生に「本と映像は分けて考えるべき」と言っていただけたことで、少し救われましたね。

また、コロナ禍でハマった手芸も趣味のひとつ。散歩中のワンちゃんにつける、保冷剤を入れるベストを編んでから、少しずつ手芸の沼に入り込みました。今特に好きなのは刺繡で、刺繡作家・樋口愉美子先生の、上品で柔らかな風合いの作品に魅せられて、よく参考にさせていただいています。糸を扱っていると無心になれて、瞑想のようなクリアな状態になれます。頭や心から雑念が消えてスッキリして、自分好みの可愛いものが増えて、一石二鳥かなと思います(笑)。

また、お茶の時間も欠かせません。日常の中で時間を見つけて入るカフェで飲むカフェオレでもいいし、撮影の合間にいただく、紙コップ1杯のお茶でもいいんです。忙しさに流されないで、お茶を1杯飲む心の余裕を持つことが大事かなと思います。と言うよりも、そうやって無理やりにでも足や手を止めないと、自分の中で気持ちを保っていられないのかもしれませんが。

体調管理もスキンケアも削ぎ落としています

こんなふうに話すと、まるで丁寧な暮らしを送っているように思われるかもしれませんが、そのほかのもの、例えば美容に関してはまったく手をかけていません。40代のころから、仕事以外ではまったく肌に何もつけない「宇津木式スキンケア」を取り入れています。化粧品を使わず、何もつけない・こすらない・洗いすぎない、という肌断食のようなシンプルなスキンケアを実践して、肌本来の力を引き出すようにしています。最初は乾燥しますが、1〜2カ月でそれを乗り越えれば、あとは肌が本来のポテンシャルを発揮してくれます(笑)。今はいろんな情報、膨大な商品がありますが、それらに振り回されることを一切やめることで、解放された気がします。

本当の意味で優しくするとは?

— 読書や手芸など、手をかけるところは時間と手間を惜しまず、ミニマムにするところは潔くぜんぶ手放す。いしのさんが凛と健やかに見えるのは、そんなメリハリのある考え方と生き方によるのかもしれません。そしてたえず自分と向き合ってきたからでもあります。

今のような自分が出来上がったのは、たぶん10代のころの経験が根っこにあると思います。今のような自分とは〝必要なものと不要なものを明確にする〟〝そのために自分自身をきちんと知る〟がベースにある状態です。

10代のころ、大切なお友だちに対して、良かれと思って言ったことで相手を傷つけてしまったことがあるんです。そのときに、優しさとはなんだろう? ということを深く考えました。それまで私が考えていた優しさというものは、実は上辺だけのもので、本当の優しさではないのではないかと気づきました。その気づきを得たことで、私自身も傷ついて、それ以来、優しくあるためには強くなければならないのではないかと思い続け、30代で「強いというのは鋼鉄のような頑丈さではなく、柳のようなしなやかさを指すのではないか」と思い当たりました。

そして人に優しくするためには自分自身にも、本当の意味で優しくしていなければならないんじゃないかと考えるようになりました。その考え方は40代、50代になって、身体的な変化が訪れたときにも役立ちます。

体調面でもメンタル面でも頑張れないとき、周りからの目も気になって辛くなるとき、許せないのは「自分自身」に対してです。どう思われているかにとらわれて辛くなる二次被害も生まれます。

でも、年を重ねることを自分に許す、できなくてもダメでもいいじゃないと思える、そんな自分がいたら、いろんなことがシンプルになるような気がします。

すべての原因は外側ではなく、自分の中にあります。もし、本格的な更年期の前に準備しておくことがあるとするなら、他者や情報に振り回されすぎず、受け止め力のある自分をしっかり確立しておくことではないでしょうか。

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撮影/田頭拓人 ヘア・メーク/中村恵巳 スタイリスト/二井里佳子 取材/柏崎恵理  撮影協力/二子玉川 蔦屋家電 ※情報は2026年8月号掲載時のものです。

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