「男ウケ」はもう古い?社会学者が解説する【今どき“モテ”論】

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現代の20代後半〜30代前半の女性たちにとって、「モテる」とは一体どういうこと? 自立した女性たちが、「誰かに好かれたい」「好きな人と近づきたい」と思う自然な気持ちや、「恋愛対象に好かれたいと戦略的になること」は善か悪か⁇ 現代の価値観を探ります。

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【新定義】 現代の「モテ」とは「自己探求」である

5つのTOPICSで紐解きます!
1.「モテたい」は、自立と矛盾するのか。
2.2000年代の“モテ”と、現代CLASSY.世代の“モテ”はどう変化?
3.相手の好みに寄せることは、迎合?あるいはコミュニケーション?
4.今の“モテ”は恋愛テクニックではない!?
5.「モテると嬉しい。でもモテたいと思っているとは見られたくない」心理の背景とは?

「モテたい」は、自立と矛盾しない ただし“対等なモテか?”が大切

好きな人には好かれたい。でも今のCLASSY.読者の中には、「モテ」という言葉にはどこか古い響きがあると感じる人も少なくないと思います。男性目線の価値観に合わせることや、女性が“選ばれるための努力”を求められてきた歴史があったのも事実で、そうした感覚へ違和感を持つのではないでしょうか。では、そもそも「モテる」とは何なのか。私は「恋愛対象として好意を向けられること」と定義するのが一番自然だと考えています。広義では、他者から好意を受ける状態とも言えますが、それだと友人からの人気や恋愛対象ではない相手からチヤホヤされることまで含まれてしまう。ここでは、あくまで恋愛対象からの好意として考えたいと思います。もちろん、ここでいう恋愛対象は異性だけでなく同性やノンバイナリーなども含みます。そのうえで、「モテたい」と思うこと自体は、自立した個人像と矛盾しないと私は思います。相手からの肯定的な眼差しは、自己肯定感や自尊感情を支えてくれるものです。相手から好意を向けられていると安心して接することができる。さらに、モテをきっかけに外見やふるまいを整えることで自信が持てることもある。モテにはポジティブな効用があります。一方で、モテには「交渉力」や「権力性」という側面もあります。相手が自分のことを好きになればなるほど、「こうしてほしい」「それは嫌だ」と言いやすくなる。つまりモテは、関係性の中での駆け引きの力にもなり得るのです。魅力を“武器”として使い続けると、相手の反応を常に気にしなくてはならなくなり、自分が疲弊しかねません。だから大切なのは、自信を育て、対等な関係を作るためのモテなのか、ということです。

モテは“万人ウケ”から、 今は“目の前の相手”へフォーカス

2000年代は、まだ女性の社会的・経済的地位が今ほど高くなかった時代です。だからモテようとする行為は、「選ばれるために媚びる」という見え方になりやすかった。でも今は、多くの女性が働き、稼ぎ、恋愛においても対等な土台に立ちやすくなっています。その分、モテにまつわる“イタさ”のようなものは、かなり薄まってきたように感じます。さらに面白いのは、かつての女性誌が提案していたモテが、かなりテンプレート的だったことです。「男の人は皆こういうものが好きでしょ?」という前提のもと、淡い色、揺れるアクセサリー、ふわふわ素材、ゆる巻きヘアといった“モテの記号”をこぞって紹介していました。でも今は、SNSやマッチングアプリによって、意中の相手の趣味嗜好や価値観が細かく見えるようになりました。好きなブランド、音楽、香り、食の好みまで、相手を知るための情報がある。だから「男性はこういうものが好き」という漠然としたものではなく、「この人にはこういう表現が届くかもしれない」と考えるようになった。モテは“男ウケ”から、目の前の相手をよく見る“個別最適”へ移行してきたのだと思います。

むしろ社会性や観察力の高さの 表れである。ただし無理は禁物!

「相手の好みに寄せる」と聞くと、迎合では?と身構える人もいるのは理解できます。しかし、相手と仲良くなりたい、相手の気持ちを大事にしたい、そのために情報を集め、少し工夫することは、相手を尊重しながら良い関係を築くための「高度なコミュニケーション」だと思います。たとえば、ボーイッシュな服が好きな相手に合わせて、いつもよりカジュアルなパンツを選ぶ。でも髪はきれいに整える。香りを少し足す。肩が少し見えるトップスを選ぶ。そこには、自分をゼロにして相手の好みに染まるのではなく、自分のできる範囲の中で、相手に響く記号を組合せる工夫があります。ただし、“寄せ”にも危うい境界線はあります。本当はやりたくないことを、モテのために無理に続けていないか、そこは丁寧に見たほうがいい。試してみて「意外と楽しい」「これは自分に合う」と思えたなら、自分の領域が広がったということ。逆に「やっぱり違う」と戻ってくるのも、健全な試行錯誤です。でも、「これをやらないと相手に見てもらえない」と感じ始めたら注意が必要。繰り返しになりますが、モテは、自信を育てるものにもなれば、自分を削るものにもなる。だからこそ、楽しさから動いているのか、嫌われることへの恐怖や我慢から動いているのかを、自分に問い続けることが大切です。

今のモテは「相手を落とすテク」ではなく 良い関係をスタートさせるために使う

今も昔も、モテには恋愛テクニックとしての側面があります。ただ以前と違うのは、相手を落とすことよりも、関係を始めるために使われるようになっている点です。たとえば初デートに、相手の好みに少し寄せた服を着て行くこともそう。合コンで「あなたと話したいから、隣に行ってもいい?」と女性側から言うことも、昔なら、向こうから近くに来てもらえる作戦を立てたり、相手から話しかけてもらえるように空気を読んだりしたかもしれません。でも今は、もっと直球でコミュニケーションを発生させにいく。相手に引っかかる話題や見た目を用意して、まず会話が生まれる状態を作る。モテとは、相手を操作するための道具というより、「関係を開始するためのテク」に近づいているのだと思います。そしてこの過程は、自己探求にもつながっています。相手の好みに触れることで、自分が前から気になっていたファッションに挑戦してみる。会話を通じて、自分が何に惹かれるのか、どういう関係が心地いいのかを知っていく。相手を媒介にして、自分の世界が少し広がっていく。そこにも、今のモテの面白さがあるのではないでしょうか。

モテたいと思っていると 見られたくないのは “操作”への嫌悪感があるから

「モテるのは嬉しい。でも、モテたいと思っている人に見られたくない」。その背景には、「モテ」という言葉にまとわりつく“操作性”への嫌悪感があるのだと思います。モテと“狙う”“作戦”というワードがセットになったとき、相手の心を操ろうとしているように見える。だから、好かれたい気持ちはあるのに、堂々と「モテたい」とは言いたくないのではないでしょうか。だからこそ今回、「モテ」を新しい意味で捉え直すことは、とても面白い試みだと思いました。モテ=「誰かを言いなりにする力」ではなく、モテ=「自信を育て、関係を丁寧に始め、自己理解を深めていくプロセス」。そう考えれば、「モテたい」という気持ちは、恥ずかしいものではなくなるはずです。誰かに惹かれる。近づきたいと思う。関係を育てたいと思う。それは、自分の中にエネルギーがある健全なサインでもあります。大事なのは、その気持ちを、自分の軸を失わないように使うこと。そして、相手を操作するための道具にしないことです。現代のモテは、もっと健やかに語れるはずです。誰かに選ばれるためではなく、自分のままで素敵な人と出会うために。モテたいという気持ちは、自立した女性の人生を狭めるものではなく、むしろ自分の世界を広げるきっかけになるのかもしれません。

今どき「モテ」の新定義

FILE 01 古着に挑戦したらハマっちゃった!

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M.Hさん(28歳・コンサルティング会社勤務)
以前、お気に入りのメデューサ柄のTシャツでデートに行ったら、それに相手はドン引き。それからは、相手の好みを確認するように。最近出会った彼は古着好き。私は普段、きれいめな格好が多いけど、古着にもちょっと興味があったから前向きにトライ。結果、最近古着にハマってます(笑)。

FILE 02 好みに寄せて、 でも媚びないバランスが重要

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K.Aさん(29歳・不動産会社勤務)
意中の彼に会う日は、全部合わせず「一部だけ寄せる」。カジュアル好きならスウェット。でも足元はヒール、髪は巻いてピアスで女っぽさを残す。初デートはやる気満々に見える露出は避ける。合コンなら気になる人の隣に自分から行く。徐々に素を出すのが私流。

FILE 03 就活並みの事前リサーチが勝利の鍵!

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T.Tさん(28歳・ブリティッシュスクール勤務)
意中の人からは好印象でいたいから、デート服は前日に何度も着替えるほどちゃんと悩む。だから相手の好みは素直に聞く派。聞くことでへんに狙ってる感じが消えて明るい行為になる気がして。今の彼には好きなブランドを聞き、マルジェラのデニムで臨みました。

今回お話を聞いたのは…

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石巻専修大学 社会学者
高橋 幸准教授

専門は社会学理論、ジェンダー理論。ポストフェミニズムや「女らしさ」、ミスコンテスト、恋愛をめぐる社会意識などを研究。主著に『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど』(晃洋書房)、共編著に『恋愛社会学』(ナカニシヤ出版)など。

イラスト/ayaka 取材/嶺村真由子 編集/藤田摩吏子 再構成/Bravoworks,Inc.
※CLASSY.2026年9月号『今どき「モテ」の新定義』より。
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。

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