【ジェーン・スーさん】幸せの再定義「むしろ50代こそ、無駄とか非効率なことをやっていきたい」

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申真衣さんのエンパワメント対談連載。ゲストは大人女性たちがみんな友達になりたい、語らいたい雑談の天才ジェーン・スーさん。何を達成し、何を成し遂げたいか。欲望のありかを突き止めることで見えてくるのは“自分を幸せにしてくれるもの”。「そのありかが見つからない」といつになく迷いを見せる申さんに、ジェーン・スーさんがかけた言葉とは。

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ジェーン・スーさん × 申 真衣さん

自分の欲望のありかを知ること

「心が揺れたり、ブレたり。幸せの再定義が必要と思っています」ーー申さん
「幸せの形は変わるもの。変わらないことのほうが不安」ーースーさん

この連載が始まった当初から、申さんが「話したい!」と熱望されていた方のひとりが、ジェーン・スーさんでした。おふたりは4年前に一度、雑誌の企画で対談をされているそうですね。

 

申さん:そうなんです。私がスーさんに興味を持った大きなきっかけは、エッセイ集『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』。タイトルを目にしたときに、どうにも抗えず手に取っていた自分がいました。読めばこれまで言い表せなかった様々な感情が的確に言語化されていて、すごく感銘を受けたんです。なので、4年前に対談のお話がきたときは本当に嬉しくて。そのあとエッセイで私のことを話題にしてくださったことを知り、二重の感激でした。

 

スーさん:真衣さんがインタビューで「パートナーがいることで適切なリスクが取れる」と言っているのを読んで、ものすごく腑に落ち、それをトピックにエッセイを書かせてもらいました。結婚においてはパートナーがいることで生活のリスクやノイズが増えるというイメージもあるなかで「パートナーがいるから冒険できる」と言える関係性が素晴らしいなと。

 

申さん:ありがとうございます。今日は、スーさんとお話しすることで、未消化なモヤモヤを昇華できたらという気持ちです。最近の私は今までになく心が揺れたり、ブレたりしていて。

 

スーさん:そうなる何かがあったんですか?

 

申さん:これまで自分が何をして、何を得たいか。欲望の達成のためにあらゆることに優先順位をつけ、マス目をひとつずつ塗りつぶすように頑張ってきて「30代で自分をわかりきった、もう変わらない」と思っていました。でも最近はプライベートで苦手なことを努力する意味はないと思っていたはずなのに、全然得意ではないテニスやスキーに挑戦したりして、そんな自分にびっくりしているんです。自分の欲望、幸せの再定義が必要と考えています。

 

スーさん:自分の欲望がどこにあるのか、これは定期的にチェックしたほうがいいですよね。人間ドックの結果みたいに、その時々で数値は変わっていくもの。欲望のありかがわかると、自分を幸せにするものが見えてくる。今は他者の物差しで生きることを強要され、「あなたはその物差しに合わせたほうがいいですよ」と言った人が儲かる世の中。そんな社会のなかで自分らしさを留めておくためには、自分の幸せを把握して、そこにちゃんとコミットしていかないといけないのかなと思っています。

 

申さん:まさに私は昔の日記を読み直したりして、自分の欲望のありかをゼロベースで模索中。ただそのありかが見つからないと、何をすべきかがわからないじゃないですか。今までにないフワフワした自分にちょっと戸惑っています。

 

スーさん:私も時々過去に書いたものを読み直して、幸せを考える棚卸し作業みたいなことをしています。もちろん、今の真衣さんみたいに幸せの形が見えないときもありますが、ずっと変わらないことのほうが私は不安。「変わってきた、こんなことで幸せになれるんだ」とわかってくる過程が好きだったりするので、間違いも含めて楽しむつもり満々です。

 

申さん:では、この年齢になっても苦手なことにも挑戦する意味はあると思いますか?

 

スーさん:むしろ50代こそ、無駄とか非効率なことをやっていきたい。50代はこれまで頑張ってきた人ほど思い通りになることが増え、自分の精度を上げることに注力すると「料理屋の空調の風向きが気に入らない」みたいなことで腹を立てるようになってしまうと思うんです。そういう人って周りが緊張するじゃないですか。それが嫌なんです。自分とは違う範疇で働いている人がたくさんいることを知っておかないと、書くことも喋ることもブレる気がしています。

 

申さん:自分を狭めないために、あえてノイズを残しておくということですね。

 

スーさん:おっしゃる通りです!

申 真衣さん
『子どもとの時間が幸せ。その気持ちを認めたくない自分がいます』

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ジャケット¥646,800ニット¥250,800 パンツ¥250,800(すべてザ・ロウ/ザ・ロウ・ジャパン)ピアス¥48,400 リング¥61,600(ともにブランイリス/ブランイリス・ジャポン)

―――時代や年齢、環境によっても変化する欲望のありか。おふたりは最近新たにみつけた「自分を幸せにすること」はありますか?

 

スーさん:私は韓国で美容医療。10年近く前から流行っていながらも、たまたま通らずにきてしまって。たまたまと言いながらも「可愛い」という世間の物差しから外れた自分を「わきまえなさい」と罰していたところはあったと思います。やる気になったのは50代に入り、そんな自分を許せるようになったからかも。「人間は中身」「加齢を緩やかに受け入れる」とか、その通りと思いますが、ビジュアルが良くなるとこんなにも爆上がりするんだという大発見。自分の女性性みたいなものとようやく適切な距離が取れるようになってからの美容医療、楽しくて仕方ないです。

 

申さん:どんどんキレイになると思ってました!私は伝え方がむずかしいのですが、子どもたちと過ごす時間が今すごく楽しくて。もちろんずっと可愛くて大切な存在ではあるのですが、例えば会食の前に一瞬自宅に戻って子どもの顔を見てからまた出かけるみたいなことは、20分でも空いた時間は子どもに充てるべきだという、母親としての責務が強かった気がします。今は社長を辞めたことで余裕ができ、「もっといたい」と子どもとの時間を純粋に楽しめるようになったのだと思いますが、正直そんな自分を認めたくなかったりします。

 

スーさん:勝手に共感しますけど、その認めたくない気持ちすごく良くわかります。申さんと私は年齢は違いますが生きてきた時代は同じ、まだまだ男尊女卑な社会。男性優位のなか、例えば女性が「子どもと一緒にいる時間が幸せ」と言うこと、思うこと自体がネガティブでリスクになってしまっていたんですよね。

 

申さん:そういうことを口に出すと、仕事をやる気がない人とレッテルを貼られるのではないかと気を張って働いていたと思います。

 

スーさん:平成から令和になり「だから女は」と言われていたことを少しずつ自分に許せるようになってきたのだと思いますが、レッテルを貼られるような社会の設定がそもそも間違えていたことは、私たちが強く言っていかないといけないのかもしれませんね。

 

申さん:そうですね。私は誰に対する責任かわかりませんが、これまでのジェンダー規範を壊してもちゃんと幸せになれることを自分自身や近しい人には示したくて。なので、私が「子どもといる時間が幸せ」と感じていても、特に娘たちには「それこそが女の幸せ」とは絶対に受け取って欲しくないんです。

 

スーさん:例え真衣さんが「一緒にいることができて幸せ」と娘さんたちに伝えたとしても、彼女たちが大人になったとき「あのときママは相当葛藤していたのでは」と自分自身で気づくときがくるのでは。やっぱり実際の経験がないと真に理解できることは増えませんよね。

ジェーン・スーさん
『50代はあえて無駄とか非効率なことをやっていきたい』

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ワンピース¥139,700 パンツ¥74,800(ともにアンビラン) ピアス¥11,000 リング[右手/中指]¥22,000 リング[右手/薬指]¥16,500 バングル¥31,900(すべてワンエーアールバイウノアエレ/ウノアエレ ジャパン)

―――50代は楽しい!そう思わせてくれるジェーン・スーさんの在り方に、堀井美香さんをはじめとする女友達との仲の良さがあると思います。申さんからの「スーさんと話したいことリスト」の中にもありましたよね。

 

申さん:はい。スーさんが女友達とすごく楽しそうにしている姿は、私だけでなく多くの女性たちのロールモデルだと思っています。

 

スーさん:女友達は唯一元本割れしない資産なのでジャンジャン投資しようと『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』に書いたのは40歳のとき。今もその考えは変わらず、何かあったときに支えてくれるのはきっと女友達。先日は女7人で韓国に行ったのですが、誰も人任せにせず「自分も楽しもう、できることはやろう!」という人たちが集まると、7人でも楽しいが成立するんですよね。

 

申さん:スーさんみたいな交友関係が持てれば、きっと老後も安心なんだろうなと。

 

スーさん:最近、私の年上のパートナーの学生時代からの友人がお亡くなりになったのですが、残されたご家族も一緒に仲良し同士で集まって、悲しみや寂しさを分かち合う様子に、年を取るほどに想いを共有できる友達がそばにいることは有効だと感じました。

 

申さん:人は年を重ねるほど地位財は色褪せ、人間関係に帰結する気がします。そこがないと持続的な幸せを得られないのではと、考えが終活みたいな方向に向かっているのですが(笑)。

 

スーさん:キャリアが変化していく中で集まってくる人、離れていく人、どちらもいらっしゃったと思います。今は吟味の時期なのかもしれません。

 

申さん:そう言ってもらえてちょっと安心することができました。

 

スーさん:一生懸命やってきた分、その時間が訪れるのが人より早かっただけです。きっと。

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profile
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ジェーン・スーさん
1973年生まれ。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、ポッドキャスト番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』、『となりの雑談』のパーソナリティを務める。2015年にエッセイ『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で講談社エッセイ賞を受賞。著書多数。

 

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申 真衣さん
1984年生まれ。東京大学経済学部経済学科卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。2018年に当時最年少でマネージングディレクターに就任。「GENDA」共同創業者、「NOT A HOTEL」社外取締役。モデル、メディア出演もこなす2児の母。

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撮影/西崎博哉〈MOUSTACHE〉 スタイリング/乾 千恵 ヘア・メイク/神戸春美(申さん)、藤原リカ(ジェーン・スーさん) 取材・文/櫻井裕美 編集/水澤 薫
*VERY NaVY11月号『申 真衣さんの今、話したい人』より。詳しくは2026年10/7(水)発売VERY NaVY 11月号に掲載しています。
*掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売終了している場合があります。