【ブランド名品】進化するエレガンスを体現!ジバンシィの「ボウブラウス」に注目
手にするたびに高揚感に満ち、自信をくれる。私たちが信頼を置くブランドの名品は、改めてその歴史に触れることで一層愛着が湧いてきます。ファッション論が専門の平芳裕子教授とともに振り返る本連載。今月はフレンチエレガンスの象徴、「ジバンシィ」の名品たる所以を紐解きます。
こちらの記事も読まれています
▶【サンローラン】の名作ジャケット「ル・スモーキング」がモダンに進化!
改めて歴史を知ることで伝わるスピリット
平芳裕子先生と
「読むラグジュアリー」
GIVENCHY(ジバンシィ)
「美しく柔らかな素材にシャープな
テーラリング。優雅でありながら強さのある
服で進化しつづけるエレガンスを体現」
伝統的なエレガンスを軸に、時代に応じたドラマチックな再解釈で魅せる「ボウブラウス」
メゾンのシグネチャーである「ボウ」と「セパレート」を再解釈。曲線を描く反転したシームが袖をなぞるように施された彫刻的なシルエットが見事なボウブラウス。ボウには同色のGIVENCHY PARISエンブロイドロゴ入り。
ボウブラウス シャツ¥187,000(ジバンシィ by サラ・バートン/ジバンシィ ジャパン)
ミニマルでいてエレガント、
引き算の美学が息づく
自由なファッションを創造
『ローマの休日』や『ティファニーで朝食を』といった不朽の名作の主演を務め、映画界にエレガンスという美学を刻んだ名優「オードリー・ヘプバーン」。そのオードリーの名作のひとつ、『麗しのサブリナ』の映画衣装を手がけたのは、「ジバンシィ」の創業者「ユベール・ド・ジバンシィ」でした。フレンチエレガンスを体現するラグジュアリーブランドとして愛され続けるブランドの歴史は、彼が1951年12月にパリのアルフレッド・ド・ヴィニー通り8番地にオートクチュールメゾンを設立したところから始まります。
1927年にフランスの北部ボーヴェで生まれたユベール・ド・ジバンシィは、10歳の時にパリの万博を訪れ、一流メゾンのオートクチュールのドレスに魅了されます。17歳の時に戦後オートクチュール界の巨匠であったジャック・ファットのメゾンに入り、ファッションの世界へと飛び込みます。その後、ロベール・ピゲやリュシアン・ルロンのメゾンに在籍、1948年からはエルザ・スキャパレリの下でデザイナーに。前衛的で型破りなデザインで知られるスキャパレリの影響を受けた、モダンで装飾的なデザインが人気を博しました。そして自身のブランドがスタートした1952年、ジバンシィの名を世界に知らしめた伝説のブラウスとして語り継がれる「ベッティーナ・ブラウス」を発表。ボリュームのある袖口にあしらわれた華やかなラッフルと開襟の立ち襟が特徴のブラウスは圧倒的にエレガントでモダン。
当時パリで絶大な人気を誇っていたモデル、ベッティーナ・グラツィアーニが着用し、その名を冠したブラウスは軽くて動きやすく、戦後の新しい時代を生きる女性の気持ちにフィットしました。このコレクションでもう一つ、世間の注目を集めたのが「セパレート」です。オートクチュール界では上下が繫がっているドレスやワンピースが基本だった当時、形や素材が異なるトップスとボトムスを自由に組み合わせてアレンジするという発想はセンセーショナルで、大きな衝撃をもたらしました。少ないアイテムも組み合わせ次第で何通りものスタイルが作れる「着回し」という概念が新鮮で、選択の自由と動きやすさの自由を併せ持った新しいオシャレは瞬く間に多くの女性の心を摑みました。そして、実用性とエレガンスを両立したデザインを非常に好んだのが、後にブランドのミューズとなり、ユベールの生涯の友人として知られるオードリー・ヘプバーンです。
ウエストが絞られたジャケットとペンシルスカート。『麗しのサブリナ』でデザインされたセパレートの衣装は、オードリー自身が持つ知的で飾らない魅力をより引き立てました。『ティファニーで朝食を』の象徴的なシーンで着用された黒のドレスもユベールが手がけ、体のラインを流麗に表したエレガントなスタイルが話題になりました。そしてこの頃、ユベールは自身のクリエイションに大きな影響を与えた人物と出会います。幼少期から憧れていたクリストバル・バレンシアガです。大胆なフォルムで過剰な装飾を排し、構築的なデザインを得意とする彼との出会いによって、ブランドの美学である洗練されたミニマリズムの基礎が形作られます。また、オードリーが『VOGUE』の撮影で着用した前身頃に大きな「ボウ」があしらわれたドレスも注目を集め、立体的なシルエットで女性の佇まいを美しく引き立てる「ボウ」はジバンシィのエレガンスを象徴するシグネチャーの一つに。
1995年にユベールが引退した後は、新進気鋭の若手デザイナーを次々に抜擢。ブランドがモダンに刷新されていきます。なかでも、2代目後継者のアレキサンダー・マックイーンは英国的なテーラリングの技術を駆使して芸術的であり、時に退廃的なデザインやショーを作り上げ、ブランドにスタイリッシュでエッジィな感覚をもたらしました。そして、そのバトンは時を経て現在のクリエイティブ・ディレクターであるサラ・バートンに。キャサリン妃のドレスをデザインしたことでも有名な彼女は、構築的なフォルムでいて、しなやかさのあるデザイン、優雅だけれどシャープネスを感じるスタイルを得意とし、ただ甘いだけの装飾的モチーフとは一線を画すリボンやフリンジをスタイリッシュに魅せる名手。歴代ディレクターたちによって再解釈、モダンに進化してきた「ボウ」にも新しい息吹が吹き込まれています。伝統的なモチーフを使いながらも斬新なアレンジが光る、ジバンシィの新たな物語が始まっています。

神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教授
平芳裕子先生

東大ファッション論集中講義(ちくまプリマー新書)
文化を作り上げ、世界経済を動かすにもかかわらず、浅いものとされがちな「ファッション」や「衣服」を学術研究の領域で紐解く。反響を呼んだ東大での4日間の講義を書籍化。

\新刊本もぜひお求めください/
『何がダサいを決めるのか』
撮影/山口恵史 スタイリング/坂野陽子 取材・文/北山えいみ 編集/城田繭子
*VERY2026年9月号『平芳裕子先生と「読むラグジュアリー」』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品は販売終了している場合がございます。
あわせて読みたい
▶サラ・バートンの新生『ジバンシィ』でエグゼクティブな大人の日常着を更新!