神山まりあエッセイ⑯「さようならタオタオ ~あなたはもういない~」
VERYモデル神山まりあさんによるエッセイ
「笑うママには福来る。」
2019年2月号からスタートした連載が
ウェブでも読めるようになりました!
ディーンの命とも言えるピンクの
小さなフェイスタオル、通称タオタオ。
何度かこの連載でも登場している
タオタオですが、
ご飯を食べる時も、遊ぶ時も、
寝る時も、四六時中握っています。
もともと11枚あったタオタオ、
遊んでいるうちになくし続け、
残り1枚。
言うまでもなくボロッボロです。
この大事な1枚を大切にしなければと
思ったのもつかの間、
遊園地でなくしてしまいました。
落とし物センターに電話をし、
「あの、ボロボロの雑巾みたいな
ピンク色のタオルって 届いてませんか?」
と聞くも答えはNO。
どうしよう
同じタオルはもう売っていないし、
似たタオルは突き返される。
母、ピンチ!!!!
隣の部屋から
「マミーー!タオタオどこーーーー!!!????」
と叫ぶ声。
逃げることはできない。
私は心を決めて立ち上がり、
違う部屋にいた夫を呼びました。
そしてディーンとベッドの上に
しばらくいてくれとお願いをしました。
私が向かうはキッチン。
この日が……ついにきてしまった。
タオタオが1枚も
なくなってしまった時のことを
考えるたびに震え上がっていたのに、
ついに恐怖が現実となってしまった。
思い出の中には必ずタオタオがいて、
息子を泣き止ませ、
そして、
笑わせてくれた。
ありがとう、ありがとう……
気持ちを落ち着かせ、
携帯を握り、
ベッドルームにいる夫に電話をしました。
「もしもし 、
お願いスピーカーフォンにしてもらえる?」
キッチンのドアが閉まっていることを確認し、
私は今までに出したこともない
声を出しました。
「もしもしぃい~ぃ、
ディ~ンくぅ~ん!?!?!?
僕タオタオだよぉぉお♥」
シンディ・ローパーそっくりな声でした。
電話の後ろで夫の爆笑が
聞こえるが気にしない。
自分の才能に酔いしれつつ、続けます。
「あのねぇ、
ディーンくんはお兄ちゃんになったから、
タオタオは、旅に出ようと思うのぉお〜。
タオタオはどこかの
赤ちゃんのところに行かなきゃなのぉ。
今まで大切にしてくれてありがとうね、
ディーンくん。
I LOVE YOU!」
電話を切った時にはやりきった感で
いっぱいでした。
ナイスアイデアすぎる。
ベッドルームに入ると、
ディーンはタオタオから
電話がかかってきたことを
教えてくれました。
夫はお腹を抱えて笑っています。
タオタオ、もういないんだって。
そう言うディーンは、
寂しくも自分がお兄ちゃんになったことを
認められ照れています。
ああ、私の勝利。
しかし。
ディーンは寂しそうに廊下へ行き、
ズルズルと何かを握って帰ってきたんです。
巨大バスタオル。
「タオタオがいないから
今日からお兄ちゃんのタオルね」
可愛い息子が一瞬とんち好きな一休さんに
見えたのは言うまでもありません。
横目で夫を見ると、
倒れこんで涙を流して笑っていました。
【PROFILE】かみやま・まりあ
1987年2月17日生まれ。
2011年ミス・ユニバース ジャパングランプリ。
2015年結婚、2016年男児出産。
インスタグラム@mariakamiyamaも大人気。
2018年9月に初めての書籍
『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社)を刊行。
撮影/イマキイレカオリ ヘア・メーク/TOMIE〈nude.〉 イラスト/natsu yamaguchi 編集/湯本紘子
※VERY2020年5月号「神山まりあの笑うママには福来る。」より。
※掲載の内容は発売当時のものです。