気持ちのゆらぎ、不調対策に。実は簡単!「ながら瞑想」で脳に休息を。
HERS世代ならではの気持ちのゆらぎや不調に加え、コロナ問題も重なってしまったこの時期。
いい顔でいられるための気持ちの取り戻し方を専門家にお聞きしました。
6・7月合併号より、一部抜粋してご紹介します。
今回お話しいただいたのは……
精神科・心療内科医、臨済宗建長寺派林香寺住職
川野泰周さん
寺務の傍ら都内および横浜市内のクリニック等で精神科診療にもあたっている。禅やマインドフルネスの実践を含む診療を積極的に取り入れている。企業や看護職、介護職、学校教員などを対象に幅広く講演講義も行う。
■日々の暮らしの中で、簡単にマインドフルネスを
近年広がりを見せている「マインドフルネス」。グーグルやマイクロソフトといった世界的な企業が社員教育に導入したり、医療分野でも治療に取り入れるなど注目を浴びています。
「マインドフルネス」のルーツは「瞑想」。「瞑想」は〝今この瞬間〟に注意を向けて、あれこれ思い悩む脳を休ませてあげるエクササイズ。脳科学の研究で、現代人は起きている時間の約50%がスマホを見ながら食事するなどといった、一度にいくつかの作業をする「心ここにあらず」の状態であることがわかりました。
体は一晩寝ればある程度回復できますが、「脳」は寝ても簡単に休まりません。脳を休めるのに最適なのが「瞑想」なんです。
一瞬でも「脳」を目の前のことに集中させることで、脳が休息できることが証明されたのです。
「ながら瞑想」のやり方
■遠方を見る
ベランダや歩いているときに遠くに見えるもの(ビルや山など)を探してください。その対象に視点を合わせて、ゆっくり呼吸してどんな様子かを感じる。これも「今、この瞬間」を味わう瞑想のひとつ。
30秒でも1分でも気持ちよく感じられる程度でいい。このビルは建設中だな、山に緑が増えてきたななど、見たままを感じて。
朝でも夜でも好きな時間でかまいません。観察することに集中してみてください。
■1時間自然と触れ合う
庭の花壇やベランダにある鉢植えにある雑草をひたすらむしる。これも瞑想になります。
やっただけ成果が目に見えるので達成感が出やすい。この瞬間を楽しむだけ。だらだらやるのではなく、最初から今日はここまでやるとか時間を決めて行うと集中できます。
人に見せて評価を受けるとか誰かと比べるということではなく、自分のために好きに行うことができるので、気持ちの浄化になります。
■足の裏の感覚に集中する
ウォーキングや普通に歩いている最中に、足の裏の感覚に意識を向けることでも瞑想になります。
頭を空っぽにして、今日は足が軽いななど、足の裏の感覚を読み取るのです。
ひとつの対象に注意を向けることで、ひとときでも「不安」や「落ち込む」気持ちを取り去ることができ、自身で感情がコントロールできたという自信に繋がります。
長時間やる必要はありません。10秒だけやってあとは普通に歩くなどラフに。
■食べ方を変えてみる
食べ方を変えることで瞑想ができます。
例えばレーズン。まず、形、香りなどをじっくり観察。そしてどんな味がするか想像。すると自然と唾液が溢れてきます。やっと口に入れてからもすぐには噛まずに舌の上で転がして、ゆっくり噛む。何度も噛んでからやっと飲み込みます。レーズンが喉を通り胃に落ちていく様子まで感じてみましょう。
食べることへの感謝の気持ちも芽生えます。
「瞑想」というと、とても大変な作業に感じるかもしれませんが、実は簡単。会社でも自宅でも歩いているときも座っているときでも、何かをしながらできる気楽なもの。
ぜひ実践してみてください。(川野さん)
撮影/中川正子 取材・文/見学裕己子 構成/中山佳奈子