借金に浮気発覚。夫に出した離婚回避の条件とは
誰からも好かれる「人気者」の夫。いい人だからこそ意外と脆い部分があって、思わぬどろ沼にはまってしまう、ドラマでもありがちな設定がまさか自分の身に降りかかるとは…。それでも最後は絆が深まる、ハッピーエンドなお話です。
◯ 話してくれたのは...中村アンナさん(仮名)48歳
大学卒業後、メーカーに就職。同期だった夫と交際を始め、28歳で結婚。翌年長男、その翌年長女を出産。趣味はインテリアと器集め。
夫:神奈川県生まれ。大学卒業後、メーカーに就職。主に営業分野で能力を発揮し、大手外資系電機メーカーに転職を果たす。趣味はゴルフ。
借金に浮気発覚。
催促状と愛人の写真を前に
夫に出した離婚回避の条件とは
催促状と愛人の写真を前に
夫に出した離婚回避の条件とは
夫とは同じ会社の同期で、28歳で結婚。同期の中でも人気者で、優しくて面白くて機転も利く自慢の彼でした。お互い実家は裕福なほうで、都内の一流ホテルで総勢120人を呼んで結婚式を挙げました。夫のことが大好きで、この人といい家庭を作りたい、夫が気持ちよく働けるために家を守っていこうと決意して退社、翌年長男、年子で長女が生まれました。
2LDKの賃貸マンションで暮らしていたのですが、結婚4年目から会社の住宅補助がなくなり、4人家族では手狭になり、新宿まで45分の駅に3LDKの新築マンションを約5000万円で多少無理して購入。35年ローンで最初の3年間は毎月8万円、それ以降は13万円返済する設定に。今思うとこれがよくなかったんです。
会社は一部上場の電機メーカーで、妥当なお給料でしたが、3年間でそれほど昇給しないのにローンだけが毎月5万円アップ。しかも子どもは成長するにつれてお金がかかり、小学校受験もしたので、出費ばかりが増えていました。わが家は夫が家計を管理していて、それでも毎月貰う生活費も、夫の飲み会の頻度も、夏休みの家族旅行も変わらなかったので、残業代で賄えているのだろうと、あまり心配してなかったんです。
ところが30代半ば、銀行からローンの督促状が来たのです。初めて見たときは心臓が高鳴り、夫を問い詰めると、「先月支払いが遅れただけで問題ない」と言うのでほっとしていたら、最初は数カ月に1回だったのが、徐々に毎月来るように。そのたびに問い詰めては喧嘩を繰り返し、夫婦関係も悪化。
夫は多くを語らず、話し合いもできず、お金に困っていることは明らかなのに、解決方法も持ってないように見受けられました。私は、昔のように服やバッグを買うこともなく、交際費ゼロ、食費も切り詰めました。お給料の金額と、夫が使う金額を想像すると、逼迫原因の1つは頻繁にある飲み会。夜中に帰宅することもしょっちゅうでしたから。そんな状態が数年続きました。
やがて子ども達が私立の小学校に入学。入学金はお祝いにそれぞれの両親が払ってくれましたが、新たな出費として、学費がのしかかってきました。私も家計の足しにと、インテリア小物店で週3回のパートを始めたのですが、その直後です、夫の愛人という女性から電話がありました。
お恥ずかしいですが、浮気に関しては全く疑いもしてなかったんです。その少し前、酔っぱらって夫が帰ってきたとき、女性1人が写っている写真が家の中に落ちていたことがありました。そのときは浮気とは思わず、「これ会社の人? 誰?」と聞くと、夫は顔色を変えず、「友達の彼女。友達が酔って荷物を落として、そのときにカバンに紛れ込んだ」と答えたので鵜呑みにしていました。その女性はショートカット。電話の女性にも髪型を尋ねるとショートカットだと言い、点が繫がりました。
結局、要領を得ない電話でしたが、要するに「彼のことが好きで、奥さんはこれからどうしますか?」と聞かれ、「どうしますか?」ってどういうことなのか、私は何が何だかわからなくなり、「仲良くやっているし、すぐに別れてください。二度と電話をしないで」と激怒して切りました。忘れもしない冬の終わりの平日の13時ごろで、間髪入れずに夫の携帯に電話をかけ、今あったことを話しました。最初はしらを切りましたが、その女性がぺらぺらと話した名前も携帯番号も住所も伝えたら、「帰ったら話す」と言って電話を切りました。
すべてが氷解していきました。女遊びでローンが払えなくなり、だから解決方法も見つからず、夫婦関係がぎくしゃくしたのだと合点がいきました。ここ数年、ローンが返せないことよりも、話し合いができず、歯車が狂い、逃げ場がない状態の方が辛くて、離婚も考えていました。
夫からも喧嘩中に「離婚したい」と言われたこともあり、その理由もはっきりしました。子どもも小さいし、お互い行動には移せなかったけれど、離婚を決意。悲しいより、遂にこのときが来たかという気持ちでした。それで夫の帰宅前に、事情を知っている親友に電話で嘆きました。すると意外にも「ローンを払えない事件の原因が浮気とわかってよかった。浮気の1回くらいどこの旦那でもあるんじゃない。すぐに離婚とわめかず冷静に」という答えが。
肩透かしにあったような気分でしたが、とりあえず夫の話を冷静に聞こうと思い直しました。
女性は25歳で留学費用を貯めるためにキャバクラで働いているホステスで、夫は本気ではない、別れると言いました。私は「信じていたのに。浮気を疑ったことは一度もなかったよ」と言うと、夫の顔がみるみるうちに泣き顔に変わり、「ごめん」と謝りました。
「ローンが払えない原因は浮気?」と聞くと、「原因の1つだけど、違う」と言います。「溜まっているローンどうやって返すの? 金額は?」と聞くと「400万円くらい。借金もしている。両親に一時的に借りる」と。そこを当てにしていたのかと思うと情けなくなり、「離婚を考えているけど、両親には迷惑をかけず、あなた1人で返せたら、離婚はしない」と叩きつけると、「わかった」と言いました。
夫は、それ以外ではよき夫でありよき父親でした。男性として魅力的な部分は昔から変わらず、今思うと私は夫のことを嫌いにはなれてなかったんですね。離婚はいつでもできるから、しばらく様子を見ることにしました。
夫が最初にしたことは無理して購入した車の売却。ガレージ代が浮いたことも大きな節約に。帰宅時間は早くなったけれど、最初は飲み会にも行ってたし、本当に別れたのか不安でした。一言言いたいところを私も我慢。言うと大喧嘩になってしまうからです。とりあえず信じてみようと自分に言い聞かせました。
やがて浮気発覚から3年後、借金をほぼ返せたようで、毎月のローンが滞らなくなりました。
あとから気付いたことですが、洋服や靴も、夫は一切買っていなかったようで、飲み会もぐっと減って、平日の週4日は家で夕飯を食べるようになりました。私は実は料理が苦手でしたが、TVの料理番組を見て工夫をし、夕飯は家族で食卓を囲む時間が楽しくなっていました。夕飯後は散歩に誘い出したり、土日に子ども達がお稽古に行っている間に2人でランチに行くなど、一緒にいる時間を増やすようにして、くだらない話でも夫は興味なさそうでも、会話を持つようにしました。節約のため週2回ほどはお弁当も持たせました。
徐々にですが、2人の間に立ちはだかっていた壁がなくなるのを感じました。43歳のころです。
知らない間に仕事を頑張っていたのか、44歳で大手の外資系電機メーカーに転職し年収が大幅にアップ。気付けば飲み会癖もなくなり、浮気からも足を洗い(笑)、頭金になる貯金も少しできて、郊外から都心のマンションを購入したのが45歳のときでした。
振り返ると絶望を感じていた36歳から40歳過ぎまではとても長く感じられ、ずっと気持ちは揺らいでいました。借金、浮気と続くと、離婚が普通なのかもしれません。信じ難い辛いことは事実としてあったのですが、でも夫の本質自体は出会った頃と全く変わっていなかったんですね。だから私も努力できたのかな。
離婚して再婚することも考えたし、誰かとまた恋に落ちることはあるかもしれないけど、20年間山あり谷ありを一緒に乗り越えて、今やなくてはならない空気のような存在は、夫しかない。私にとっては唯一無二の人だと、今は思えます。
先日夫が「仕事を頑張って、家を買い替えることができたのは家族がいたから」とぽつんと言いました。お互いが支えあえていたんだな、それが夫婦なんだなと心から思えました。
<夫婦円満の秘訣>
辛かった時期、本をたくさん読みました。中でも楽しく読んで、男女の違いを理解できた『ベスト・パートナーになるために』は今でも読み返すほど愛読書に。夫が喜ぶので、料理嫌いから料理好きになり、さらに今では器集めが趣味になりました。
取材/安田真里 イラスト/あずみ虫 ※情報は2022年6月号掲載時のものです。
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