『美しい彼2』原作者・凪良ゆうが愛するドラマ&映画【6選】

VERY4月号では、直木賞、本屋大賞はじめ数々の賞にノミネートされ話題の恋愛小説『汝、星のごとく』を発表した作家・凪良ゆうさんにお話を聞きました。現在、原作を手掛けた連続ドラマ『美しい彼』シーズン2も放送中。新作を心待ちにする読者も数多い凪良さんは、執筆に忙しい日々の中、ドラマや映画を見るのも大好きだそう。今期見ている作品や、今期以外のドラマや映画など、小説を書く上で影響を受けた作品を教えていただきました。

※最新作『汝、星のごとく』について、のちに作家になるご自身の生き方などを伺う凪良ゆうさんのインタビューはVERY4月号(3月7日発売)で読めます。

こちらの記事も読まれています

【カサンドラ症候群って?】モラハラだけじゃない辛い“夫婦関係”の乗り越え方

凪良ゆう(なぎら・ゆう)

京都市在住。2007年に初著書が刊行されデビュー。BLジャンルでの代表作に’21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど多数。’17年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。’19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。’20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は’22年5月に実写映画が公開された。’20年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。最新作『汝、星のごとく』は、約2年ぶりの長編となり、直木賞候補、吉川英治文学新人賞候補、高校生直木賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位などに選ばれている。

凪良さんおすすめ作品1

ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系列 日曜ドラマ 現在放送中)

 

「ファンタジックかつリアルな描写から目が離せません」

リアルタイムで見る時間を取るのはなかなか難しいので、見逃し配信も利用しています。今期見ている作品で一作あげるなら『ブラッシュアップライフ』ですね。安藤サクラさん演じる主人公が何度も生まれ変わって人生をリスタートします。現実にあり得ないファンタジックな設定には、30、40代以降ともなると乗り切れないのでは、と思いましたが全くそんなことはありませんでした。地方都市や職場の日常がめちゃくちゃリアルに描かれています。バカリズムさんの脚本ならではの、シニカルでありながら笑える世界観から目が離せません。

 

凪良さんおすすめ作品2

映画『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督・坂本裕二脚本 2021年)

 

「“直球ストレートの恋愛小説”を書こうと決意した作品です」

『汝、星のごとく』を書くにあたっては、こんな王道のラブストーリーを今の時代に書いていいのだろうかという迷いもありました。その頃見たのが『花束みたいな恋をした』です。ド直球ストレートの恋愛を描いているけれど、一つひとつのエピソードをものすごく丁寧に、リアルに描いているのでとても奥深いのです。「王道を小細工せずに書く」というのはごまかしがきかない分、書き手にとってはけっこうしんどいもので、自作の執筆途中にはちょっと泣きが入ったほどでした。でも、この映画を見ると「王道だからという理由で恐れる必要は全くない」と思えます。

 

凪良さんおすすめ作品3

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二監督・脚本 2016年)

 

「幻想的な映像はこのラストのためにあったのか、と驚きました」

男女の恋愛を描いているわけではありませんがとても好きな作品です。黒木華さん演じる主人公は、短い結婚生活の後で根無し草みたいな生活を送っていたのですが、最後に自力で自分の場所を作ったとき、霞が晴れたように映像ががらりとクリアになるんです。それまでの風景はもやがかかったようで、現実にはあり得ないようなエピソードが続くのですが、すべてはあのラストのためだったのか!と。幻想からの脱却ともいえるシーンをエピソードではなく、映像で見せるのは岩井俊二監督ならではのすごさだと感じました。

 

凪良さんおすすめ作品4

ドラマ『おいハンサム!!(東海テレビ制作・フジテレビ系列 2022年)

 

「『結婚するならこんな夫婦になりたい』と思った作品です」

コメディータッチながら、心の奥深いところにまで届くドラマでした。吉田鋼太郎さんとMEGUMIさんが三人の娘を持つ夫婦を演じています。「MEGUMIがお母さん役!?」とはじめはびっくりしたのですが、これがものすごくはまり役なのです。旦那さんのことはすごく大事にしているのだけれど、大事にしすぎてはいないというか程よく力が抜けていて……。リアルな夫婦関係の描き方が絶妙で「これから、もし結婚するならこういう夫婦になりたい」と思えるようなドラマですね。

 

凪良さんおすすめ作品5

ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK大河ドラマ 2022年)

 

「多くの人が歴史に思いを馳せるきっかけに……脚本の力を感じます」

「鎌倉殿」は、「時代劇ってこんなに面白かったんだ!」と気づくきっかけとなる作品でした。多くの人が知らずしらずのうちに歴史に思いを馳せられるようになったのは、「鎌倉殿」の大きな功績なのではないかと思います。私自身も興味がわいて、アニメの『平家物語』や過去に放送された大河ドラマ『平清盛』を見ました。視聴者を他の作品に導くほど、物語に力があるのだと思います。ジャンルや業界全体を盛り上げるほどのコンテンツは、今の時代本当に少ないと思うので、ものを書く人間として尊敬します。俳優さんの演技力や一話一話に盛り込んでくるエピソードもすごいのですが、全体通してのうねりと、物語の始まりと終わりをこんなに鮮やかに結びつけるのかという構成の妙に目がいってしまいます。とにかく脚本がすごい、のひと言ですね。

 

凪良さんおすすめ作品6

ドラマ『美しい彼』(MBS・TBS系列 シーズン2現在放送中)

 

「『出し惜しみせず最高のものを作る』という思いが伝わってきました」

自分が原作を書いたドラマをおすすめするなんてあざといかなと思って、今まであんまり話をしなかったんです(笑)。でも『美しい彼』は本当に良いドラマなんですよ。監督も脚本家も俳優も、それぞれの力を出し惜しんでいません。スタッフ皆が、「遠慮せずに自分にできる最高のものを作り出すぜ」という気持ちでいるのが伝わってきます。原作とは違う部分もあるのですが、元の物語で伝えようとしたことを理解した上でドラマ用に再構築しているところが素晴らしいと思います。原作ファンの人からも「イメージが違う」という声がほとんど聞こえてきませんでした。原作を好きと言ってくれる人も、ドラマから入る人も楽しめる作品になっているのではないかと思います。

取材・文/髙田翔子

『汝、星のごとく』(講談社・1760円)

その愛は、あまりにも切ない。正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく……。風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。2月22日発売の『小説現代』3月号に、作品のスピンオフ「星を編む」を掲載。

\あわせて読みたい/

人気作家・綿矢りささん“コロナ禍”がテーマの短編集「嫌いなら呼ぶなよ」がストレス解消になる!

 

「2月1日は『スラムダンク』の山王戦」中学受験マンガ『二月の勝者』作者が語る

 

子連れでも安心♪東京ディズニーリゾート®で特別な体験ができるプランをレポート