医師に聞いた「乳がん」の疑問5選【原因は?かかりやすい人は?罹患率は?生存率は?】

現代女性にとって誰でもなり得る病気〝乳がん〟。定期的に検診を受けるなど、万が一への備えはできていますか?まだ若いから関係ない、と考えずに正しい知識を身につけて、もっと〝自分事〟にするのが第一歩です!

知っておきたい乳がんの基礎知識

〝乳がん〟という病名は知っていても、病気について果たしてきちんと理解できている…!?正しい知識を備えておけば、将来かかったときにも適切な対応ができるはず。専門家の先生にまずは押さえておきたい基礎知識を教えてもらいました。

    〝乳がん〟という病名は知ってい

    Q1.そもそもどんな病気?
    →乳がんは年齢に関係なく起こり得る病で自分で発見できる唯一の〝がん〟。早期発見のために定期的な検診を心がけて
    乳がんは乳房にできる悪性の腫瘍です。乳房には乳頭から木の枝のように広がる乳管と、母乳を作る小葉と呼ばれるところがあるのですが、乳がんの多くはこの乳管から発生します。
    一般的にがんは、細胞分裂の際に生じるミスにより、異常細胞が生まれてしまうことに原因があり、年齢を重ねるほどかかるリスクも高くなるものがほとんどですが、乳がんの場合は比較的若い年齢でも発症率が高いのが特徴です。「若いから大丈夫」と乳がんに気づかず放置をしていると、がん細胞が増殖して乳腺の外へ広がり、それがリンパや血液の流れにのって他の臓器へと及ぶ可能性も。
    今は診断技術や治療技術が進歩し、乳がんは早期発見・治癒が可能な病気となりました。CLASSY.世代の方もかかり得る病気なので、定期的に検診を受けるなど、〝自分事〟として捉えることが大事です。

    〝乳がん〟という病名は知ってい

    Q2.20~30代の罹患率は?
    →かかる率が高いとは言えませんが乳がん遺伝子を持つなどハイリスクの方は年齢にかかわらず万が一に備えておくのが正解◎
    最も乳がんにかかりやすいのは50代中盤です。なので、CLASSY.読者の方の年齢層ではリスクが高いとは言えませんが、注意が必要な方もいらっしゃいます。
    例えばご親族に乳がん経験者がいて、乳がん遺伝子を引き継いでいると思われる方。乳がん遺伝子を持つ方は通常よりも若い年齢で乳がんになってしまう傾向にあるため、市区町村や会社の検診では受けられなくても、自ら定期検診を受けることをおすすめします。
    また最近は避妊やPMS改善のために低容量ピルを服用する20~30代の方も多いですが、ホルモン剤を使用すると体内は乳がんが育ちやすい環境になってしまいます。インターネットで簡単に低容量ピルを入手することもできるようですが、万が一がんが潜んでいた場合には、大変なことになりかねないため、服用をスタートする前に必ず検査を受けるようにしましょう。

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    Q3.生存率はどのくらい?
    →検査技術と画像精度が進歩しステージ0での発見も可能に。0の段階で治療をスタートできれば生存率はズバリ100%です!
    がんはその進行具合を「ステージ」で分類しており、ステージが低いほど生存率が高くなります。ステージの判断基準は、がん細胞の大きさ・リンパ節に転移があるかどうか・他の臓器への転移があるかどうか。例えば、ステージⅠはしこり2㎝以下でリンパ節転移なし、ステージⅡはしこり2~5㎝でリンパ節転移あり…など。ここ数年はほとんどの方がステージⅠの段階で発見できているので、乳がん全体の生存率も上がっています。さらに最近は検査精度が向上し、「ステージ0」といって、塊を作る前にがん細胞を発見できるようになりました。実は、このステージⅠと0の違いがすごく大きいんです。一般的にステージⅠでは、他の臓器への転移を制御するため、全身に効く抗がん剤やホルモン剤を投与します。一方ステージ0では、他の臓器へ転移する際の経路である血管やリンパ管にがん細胞が影響を及ぼす前であるため、薬の投与が必要ありません。つまり副作用等を感じることなく治療を終えることができるんです。そして、進行の速度についてはがん細胞の種類によって3種類に分けられ、それぞれ速度や治療法も変わってきます。若い年齢でかかったから進行が早いというわけではありません。

    〝乳がん〟という病名は知ってい

    Q4.発症の原因は何?
    →遺伝子やライフスタイルの変化…発症のリスクはさまざま。明確な原因はわかっていませんが、リスクの一つに「女性ホルモン」が挙げられます
    乳がんの発症は遺伝子・生活習慣・食生活…と様々な要因が考えられ、原因はまだ不明です。しかし残念ながら、先進化すると乳がんが増える傾向にあるため、食生活や女性のライフスタイルが変化してきたことに一因があると推測されます。
    例えば、栄養状態が改善されて女性ホルモンがたくさん分泌されるようになっていることや、子どもの出生率が低くなっていること。女性ホルモンががん細胞のえさとなり、育ちやすい環境にすることがわかっているため、どちらの例も、乳がんにとっては都合のいい環境と言えるのです。また、更年期障害の改善や不妊治療ではホルモン剤を使用することが多いですが、こちらも乳がん細胞が育ちやすくなってしまいます。

    〝乳がん〟という病名は知ってい

    Q5.乳がんにかかりやすい人って?
    →親族で乳がんにかかった人がいる場合は注意。初産年齢が遅い、もしくは出産経験がない人も気をつけて。バストの大きさは関係ありません!
    まずは乳がんの家族歴がある人が挙げられます。つまり「第一度近親者」といって両親または子どもなどが乳がんにかかったことのある人。それから「第二度近親者」と呼ばれる、親のきょうだいや祖父母が乳がんにかかった人が該当します。父方の親族は見落としがちなので、家族で集まった際に、しっかり確認しましょう。
    また、「遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)」といい、親族に卵巣がん経験者がいる場合も注意が必要です。それから出産を一度も経験していない方も、少しだけリスクが高まります。乳がんの発症には女性ホルモンであるエストロゲンが関係していますが、エストロゲンにさらされる期間が長いほどかかりやすくなるからです。よく言われる「バストが大きい方がかかりやすい」というのは嘘。男性でも乳がんにかかる人はいるので、大きさは関係ありません。

教えてくれたのは…ピンクリボンブレストケアクリニック表参道・島田菜穂子院長

放射線科専門医・日本乳癌学会専

放射線科専門医・日本乳癌学会専門医・認定NPO法人乳房健康研究会副理事長。国内でのピンクリボン運動の普及に寄与し、乳がんに関する知識の啓蒙に尽力。

取材/伊藤綾香 漫画/菜々子 再構成/Bravoworks.Inc