【ジェーン・スーさん】40代、「親の老い」に追い詰められないこと。共倒れを防ぐ“介護未満”の向き合い方

【親の介護】についてぼんやりとした不安を抱えつつも、「まだ先のことだから」と、具体的には考えられていない。でも、いずれ突然訪れる親の介護。漠然とした不安にフタをしたままでいるより、ひと目その未来をのぞいてみませんか?

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ジェーン・スーさん『追い詰めない、追い詰められない介護を目指しましょう』

<profile>
コラムニスト、ラジオパーソナリティ、作詞家として幅広く活躍。父親の介護経験をもとにした著書『介護未満の父に起きたこと』では、親も自分も守る介護の向き合い方をユーモアとリアリティ溢れる言葉で綴っている。

◇「親も自分も守る介護」が 新しい介護の考え方

父から連絡が来て久しぶりに実家に帰ったら、荷物が溢れかえり、ゴミ屋敷寸前でした。室内での転倒を防ぐため、お金はかかりましたが早急に清掃と廃品回収の業者を手配。もちろん家を片付けることに親は抵抗しますが、必要な物を一つの部屋にまとめて「あの部屋にある」という状態をつくったんです。結果「あれはどこ?」と聞かれても、「あの部屋にあるよ」と答えられることが父の精神の安定につながりました。

私は自分の仕事や生活を優先する形での介護をしています。残酷ですが介護は子育てと違って、日々「できることが増える」とはいきません。〝親の人生は、自分の人生ではない〟という線引きをし、親が転ばぬように後ろから見守ることが、子どもの役目だと思っています。私も正直、父と幾度となく衝突はありましたが、「父が健康的で、一日でも長く一人での生活を続けること」という最終目標を定めてからは、覚悟ができたように思います。

普段から、親が元気でも月1回は親と一緒に同じ場所に出かけてみてください。すると「先月できていたことが、今月はできない」などの変化に気づきやすいんです。たまにしか会わないと、様々な症状の変化に気づくのが遅れ、家がゴミ屋敷になるまで認知症に気づかなかったケースもよくある話です。不安なことを後回しにせず、一度現実と向き合って最悪の事態を想定する。社会との接点が乏しい男性ほど孤立するので、そのシミュレーションはしておいたほうがいいと思います。

子どもに迷惑をかけたくないと言う親もいますが、実際何かあれば必ず子どもに連絡が来ます。仮に親が「介護は身内でやるもの」みたいなことを言ってきたとしても、共依存による共倒れを防ぐためにも、第三者を入れることはとても大切です。

わが家では、Amazon Echo Showやスマホアプリなどを積極的に活用しています。予定を登録しておくと親の家にあるアレクサが知らせてくれるので、父との「今日の予定は何?」という確認が減ります。連絡が取れなくなった時には強制通話もできるので、わざわざ実家まで確認に行く手間も減ります。タクシーアプリもお勧めです。私がタクシーを呼ぶたびに、来た、乗った、降りた、精算と全部把握できるので、毎回「乗ったの?」などの確認の接点が減ります。テクノロジーを最大限に活用し、確認の接点を減らすことでイライラの種を摘んでくれるのです。

老いていく親を見るのはとても辛いものです。つい「何でできないの?」「だから言ったじゃない」と、私たちはすぐ不安を怒りに変えてしまいます。しかし、こういった怒りを冷静に分析してみると、自分が安心したいという欲望の押し付けの感情からくるものだったりします。私も最初は喧嘩して何カ月も連絡を取らないこともありました。今では「そうだね」と無責任に親に同調する術を身につけました。思い通りにならなくても、世話がかかる大物タレントだと思えば腹も立たなくなりますよ(笑)。

結局、最終的に人を生かすのは自身の好奇心が大事だと思います。一日中ソファーに寝ながらテレビを観ていればお腹もすかないし、筋肉も落ちて動けなくなります。特にパートナーとの死別は老人性鬱になることもあります。親と自分は別の人間だと理解し、親と自分の最適解を探っていくことが長く続ける介護のコツなのかもしれません。

STORY世代に聞いた〝介護不安〟

Q.「介護」と聞いてまず不安に思うことは?

1位 仕事・育児との両立
2位 お金
3位 メンタル・両親が遠方であること

「働きながらの介護の場合、勤務地や勤務形態の制約があると融通が利きづらいと感じた」(内田明香さん・43歳・銀行員)
「経済力とメンタルがどこまでもつか未知数」(M・Nさん・45歳・会社員)
「両親が遠方に住んでいるため、どこで介護すべきかずっと考えています」(北山朝美さん・49歳・演奏家)
「家族でどこまでサポートできるか不安」(M・Kさん・50代・主婦)

Q. 最近、親の様子に「あれ?」と思う瞬間はありますか?

「同じ話を繰り返しする」(H・Kさん・46歳・パート)
「家の片付けがどんどんできなくなっている」(永池志保さん・42歳・会社員)
「体力がガクッと落ちたようで、いつも疲れた様子に見える」(A・Kさん・38歳・会社員)
「高速道路で車線変更した後、ウィンカーを消し忘れていた」(木村まい・50代・本誌ライター)
「好奇心がなくなり行動範囲が狭くなっている」(山田朋子さん・45歳・パート)

<スーさんに聞いた>介護未満にやっておきたいこと5カ条

① 親のかかりつけ医を把握しておく
② 定期的に何か一緒にやることを作る
③ 共依存にならないようにサービスを最大限活用する
④ 親は親の人生、自他の線引きを持つ
⑤ イライラしてもしょうがないと腹落ちさせておく

介護は自分を犠牲にすることではありません。頑張りすぎない介護をするために、自分を守ることも介護のあり方。親を変えずに支えるためには、適度な距離感こそが続けるコツ。

<STORY読者の体験談>

◯ 親の性格の変化

父に軽い認知症の症状が出始め、今は薬で進行を抑えているようです。数年前、要介護認定の調査を受けた際には、調査員の方に『老人扱いするな!』と怒鳴ってしまい、その後デイサービスの利用が難しくなりました。もともと頑固な性格ですが、認知症の進行とともにその傾向が強くなり、この先、老人ホームなど入居できる場所が見つかるか不安です。(F・Iさん・48歳・フリーランス)

ジェーン・スーさん

施設で喧嘩して出禁になったり、噓をついたりと今まで知らなかった親の性格が出て驚くこともあります。でもその根っこを探っていくと、「親には完璧でいてほしい」という子ども中心のマインドがあるもの。理不尽な親の行動は止められないけど、その手間を拾うのが介護のひとつなんだと思います。

◯ 「介護は家族がするもの」という呪縛と葛藤

母の介護で一番印象に残っているのは、介護そのものよりも、それを担う家族の負担でした。介護が進み、施設への入居を検討することになったのですが、姉は『母を施設に入れるのは見捨てることではないか』と深く悩み、決断するまでに長い時間がかかりました。私が一番心配だったのは、母以上に介護を担う姉の心身の状態です。まだ40代だった姉の人生が介護だけになってしまうことは避けたかった。最終的には何カ所も施設を見学し、姉が心から納得できるホームを見つけることができました。(S・Yさん・50代・フリーランス)

ジェーン・スーさん

自分の親だったらカッとすることも、人の親だったらカッとしないのが介護の本質ではないでしょうか。最終的に守るのは親の生活ではなく自分の生活です。介護による共倒れを避けるためにも第三者を入れて、〝私には私の生活がある〟という強さを持つことも大切。抱え込まない勇気も必要です。

◯ 急に始まる介護

父の入院が長引き、貯金がどんどん減っていくことに、この先への不安を感じています。医療費には上限があっても、パジャマ代などのレンタル費用や日用品代が思いのほかかさみ、驚きました。父が急に倒れたため、病院と特別養護老人ホームなどの選択肢について十分に調べる時間もなく、もっと知識があれば違う選択ができたのではと後悔しています。(H・Mさん・49歳・公務員)

ジェーン・スーさん

親がまだ元気なら、かかりつけ医や服用してる薬、口座や保険などを共有してほしいと話しておくこと。地域包括支援センターで受けられるサービスも早めに知っておくと安心です。認知症が始まると口座からお金が下ろせなくなる場合もあるので、親の年金や貯金をベースに介護していくことが望ましいですね。

介護は『家族で取り組む』プロジェクト!

介護・暮らしジャーナリスト 太田差惠子さん

1993年頃より介護の現場を取材。「介護とお金」にも詳しい。『親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第4版』(翔泳社)など著書多数。

◇ 頑張りすぎず、サポートも費用も仕事感覚でマネジメント!

介護というとどうしても入浴・排泄・食事の介助がパッと浮かびますが、これから親がどうなっていくかは一人ひとり違ってきます。ですので、その時その時、親は何ができて何ができないのかをしっかり観察し、「できないこと」をサポートすればいいわけです。今の課題は何なのか。課題を克服するにはどうすればいいのか。ひとつずつ、もぐら叩きのようにつぶしていきます。まさに仕事と同じ感覚です。

介護の目的は、親の自立した生活を支援することにあります。そのため、介護費用もプロジェクトの予算として考え原則、親のお金を充てるべきでしょう。予算内でどう納得してやっていくか、親にも理解を求め優先順位をつけることが必要です。

親の希望を知っていてこそ、適切にサポートすることができます。住みたい場所や、いざという時の治療の希望など、お盆やお正月など顔を合わせたタイミングで、元気なうちに話し合っておきましょう。また、見守りサービスを入れる、食事の宅配を使うなど、何かさりげないサービスに入っていることによって、お互いの安心感と同時に、将来本格的なサービスに進んでいきやすいというメリットがあります。今必要ではなくても、サービスに対して親和性があると長い目で見たときにスムーズかもしれません。

できることから少しずつ始めることです。一度、大風呂敷を広げると、小さくしにくいものです。「これからは毎月実家に顔を出す」など言葉にしてしまうと、引っ込みがつかなくなってくることも。介護は長期戦なので、頑張りすぎないこと、共倒れしないことが何より大事です。

「知ると便利! 介護のお得&見守りサービス」

◯ 地域包括支援センター

介護の困りごとはまずここへ。親が住む地域の地域包括支援センターはどこにあるのか、将来的にどんなサービスが受けられるのか、親が元気なうちに確認。

◯ JAL「介護帰省割引」

介護のための帰省時に航空運賃が割引に。双方の居住地の最寄り空港を結ぶ一路線限定、運賃から10%割引。JALマイレージバンクへの入会、「介護帰省割引情報登録」が必要。

◯ ジェーン・スーさんおすすめ:Echo Show 8

アプリから予定を入れておけば、決めた時間に音声で読み上げ。「呼びかけ」機能により通話も可能。¥34,980/Amazon

◯ まもりこ(人感センサー)

Wi-Fi不要の見守り端末。冷蔵庫やTV前など生活動線上に設置しておくと、一定時間動きがない場合スマホへ通知。カメラではないのでプライバシーも安心。本体¥9,900、月額¥550/合同会社ネコリコ

◯ BOCCO emo

感情豊かな共感ロボット。お話を通してあなたのことを覚え、大切な家族に成長していく。ドアの開閉をセンサーでキャッチしてやさしく見守り。LTEレンタルモデル 月額¥2,970/ユカイ工学株式会社

「〝介護未満〟にやっておきたいことLIST」

◻︎ 住む場所、誰から介護を受けたいか、親の希望を確認
親が元気な時じゃないと聞けないことも。「聞いておけばよかった」と後悔しないために、親の気持ちも一緒に整理しておいてもらいましょう。

◻︎ 家族・きょうだい間で役割を確認
誰がどんな役割を担うのか、親子関係も踏まえて適材適所で分担していくと、介護に積極的ではないメンバーも巻き込めることがあります。

◻︎ 介護資金について親も交えて話し合う
資金は年金や蓄えから? 自宅を処分? それとも? 聞きづらい場合はせめて預貯金や保険関連の書類の保管場所だけでも聞いておきましょう。

◻︎ 話す機会を定期的に持つ
ランチミーティングやお酒を飲みながらでも、定期的にプロジェクトメンバーでコミュニケーションをとれるようにしておきましょう。

<編集後記>

ライター 北野法子 53歳

介護ど真ん中! 母親との接し方を猛反省。「お母さんのため」と自分の正義を押し付けていたのは、私の手間を減らすエゴだと反省。これからは母の気持ちに寄り添いたい。

ライター 香取紗英子 38歳

取材を通して、漠然とした不安を手放せた!「自他の線引き」など子育てに通じる部分も。考え方のコツや便利アイテムを知っておけば、いざというときに遠回りせずに済むかも。

<ジェーン・スーさん>Tシャツ¥20,900 カーディガン¥36,300 パンツ¥42,900(すべてZUCCa/A-net inc.) イヤーカフ¥647,900(TASAKI) 他、本人私物

撮影/清水将之 ヘア・メーク/yumi(ThreePEACE)スタイリスト/宮崎真純(likkle more)イラスト/岡田 丈 取材/北野法子、香取紗英子 ※情報は2026年10月号掲載時のものです。

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