「仕事やPTA…忙しくて貯蓄できない」と悩むママが気づいていない“大切な資産”って?
「お金ってなんで必要なの?」何気ない子どもの質問に、ドキッとしたことがあるママたちに向けて。社会的金融教育家・田内学さんの連載が復活!今回は、仕事に追われているのに貯蓄まで手が回らないという悩むママの疑問にお答えします。
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今月の戸惑うママ
Tさん(30代共働き、子どもは4歳と1歳)
フリーランスのデザイナー。夫も同じくフリーランスで、昨年夫婦で法人化。ただ、事前調査が甘かったせいで社会保険料の高額化に悩まされ忙しく、家計簿をつける暇もない状況。
お金を貯めること自体が
目的化していませんか?
田内学さん(以下、田内) Tさんは、フリーランスを経て、今は法人化してお仕事をされているんですね。
Tさん(以下、T) 7年前、20代後半でデザイン会社から独立してしばらく個人で活動していたのですが、夫も2年前にフリーランスになったので、昨年一緒に法人化しました。独立にあたっては特に大きなきっかけがあったわけではなく、たまたまその当時、担当している取引先の事業が縮小してしまって。そこで、もう少し幅のある仕事をしてキャリアアップしたいと思い、ウェブの勉強もできる会社に転職しました。転職の1年後に妊娠したのをきっかけにそこも退職したのですが、過去に接点のあったお客さんから仕事をいただくようになって、ちょっとずつ引き受けているうちにどんどん増えていって…という感じです。
田内 とても順調なキャリアのように聞こえます。自営業をしながらの子育てはいかがですか?
T 大変なこともありますが、子どもと深く関われていることに満足しています。1年前に第二子が生まれたのですが、保育園には入れず、週3の一時保育で乗り切っています。上の子は幼稚園なのですが、私がPTA活動にハマってしまって。クラス幹事、図書係、遠足係…と複数かけ持ちしていて、しょっちゅう幼稚園に顔を出しています。
田内 それはお忙しそうですね。
T たぶん会社員をやっていたら、これほどはできなかったと思います。園児が30人くらいいるクラスなのですが、皆さんお忙しいみたいで、決まらない係が多くて。「だったら私がやります」と引き受けているうちに、どんどん増えてしまいました。満3歳から通わせていますが、幼稚園は保育園と違って、連絡帳での細かいやりとりがないんです。だからPTAの活動を通して、先生やほかのママたちから子どもたちの様子を聞けるのが嬉しくて。PTA活動の一つに懇親会があるのですが、その際に使うスタンプラリーのデザインにもこだわってしまって、自分で自分の仕事を増やしています(笑)。
田内 プロがデザインしてくれるなんて、贅沢でうらやましいです。お仕事の時間は、今どれくらい取れているのでしょうか。
T 下の子が家にいると集中できないので、一時保育をお願いしている平日週3日の9時から15時と、子どもを寝かしつけてから夜の12時くらいまでですね。夫も同じような仕事なので、土日の午前は私が仕事、午後は夫が仕事という感じで、交代で子どもを見ながらやりくりしています。
田内 収入にも波があるということですが、そのあたりに不安を感じるようなことはありますか?
T それが、収入の波自体はあまり気にならないというか…逆に多いとプレッシャーを感じてしまいます。ちょっと足りないくらいのほうが気楽にやれる感じです。ただ、本当はもっとやりくりしてお金を貯めて、家を買ったり教育費に充てたりしたいなとも思っていて…。それよりも、無駄遣いしたくないと思いながら、「会社の売り上げが上がると税金が高くなるので、経費を増やすためにとりあえずiPadを買っておこう」といったようなお金の使い方をしてしまう自分にモヤモヤすることがあります。前期は、さほど行きたくもないのに沖縄旅行にも行ってしまいました。
田内 旅行が楽しめたのなら、それはそれでいいんじゃないかと思いますが。
T そうですね、貯蓄第一だったら行かなかったけれど、経費を増やすためにも行かなくちゃ、という気持ちで…でもやっぱり楽しかったですね。
田内 確かに、お金は使わなければ手元に残ります。ですが、もし将来のために我慢してお金を貯めたとして、今の幸せが犠牲になってしまうのはもったいないことだと思います。周りが貯めていると、「自分も貯めなくちゃ」と焦る気持ちになるのも分かります。でも中には、お金を貯めること自体が、目的化している人も多いのではないでしょうか。例えば、「老後のために貯めよう」という人の多くは、老後は仕事がなく、働けないことを前提にしていると思います。でも実際のところ、スキルのある人は何歳になっても仕事を続けています。以前にお仕事したことのあるデザイナーの方は60歳を超えていましたが、「『あなたなら信頼して任せられる』と言ってくれる人がいるから、この歳になっても続けられている」と仰っていました。お金は目に見えるので、分かりやすい資産として注目されがちです。でも、能力や経験、周囲との人間関係も、大切な資産だと思います。
周囲との「関係」や「信頼」、
それ自体が立派な資産です
T スキル+信頼を得ることが大事なんですね。でも、それを聞いて、また別の不安が出てきてしまったかも。今はアウトプットばかりで、インプットがほとんどないんです。会社にいた頃は先輩や上司にアドバイスをもらったり、まわりの仕事を見て学んだりと、インプットを経て伸びる機会があったのに。もうちょっとスキルを生かせるように、頑張らないといけませんよね。
田内 その代わり、幼稚園でのお付き合いを通して広がった関係など、子育てで得られた仕事以外でのインプットの時間もあるのではないでしょうか。
T そう言われてみると、ママになってからのほうが仕事がやりやすくなりました。様々な立場の女性がどんなことを考えているのかがより理解できるようになった点では、人間としての幅は広がっているかもしれないです。先日も取引先の方に、「Tさんはどんな表現がユーザーに伝わるかを摑んでくれているから、修正するところがなくて助かる」って言ってもらえて、それがとても嬉しかったです。
田内 その信頼はTさんの立派な資産になっていると思います。
T ありがとうございます。実は幼稚園のPTA活動を通して、子どもに関わる仕事をしてみたいと思うようになりました。10年後、20年後に保育士さんになるのも楽しそうだなって思ったりしています。そんなことは考えずに、デザインの仕事が減らないように努力したほうがいいのでしょうが…。
田内 仕事って掛け算で増やせるものだと思います。「ドラゴンクエスト」ってゲームがあるじゃないですか。その中に「転職」っていうシステムがあって、途中で職業を替えられるのです。最初に魔法使いを選んだら魔法を覚えられますが、途中から「戦士」や「賢者」に転職できる。とはいえ、もともと魔法を覚えているので、戦士になっても魔法は使えます。つまり、新しい職業に替わっても、前の経験やスキルが引き継がれるということです。私は40歳で文章を書き始めましたが、トレーダーの経験や視点が生かせていると感じています。もし今の仕事から離れても、Tさんの中にデザイン視点でモノを考えるというスキルは残ると思います。
T なんだかすごく励まされます!
田内 20年先について、「不安だから動く」のではなく、「楽しそうだからやってみよう」とポジティブでいられることはTさんの強みだと思います。またお話を伺っていて、周囲に「応援したい」と思われるひたむきさや真面目さをお持ちだと感じます。そのこと自体も、大切な資産ですから。これからも頑張ってください。

田内 学さん
2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

『お金の不安という幻想』
田内 学著 ¥1,650/朝日新聞出版
お金の不安から抜け出すための生存戦略。老後の不安に怯える学生、年収で価値を測る子どもたち。膨らむお金の不安の背景には何があるのか?労働と投資、どちらが報われる?など1万人の声から導き出した不安を希望に変える一冊。
撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年1月号『ママのための「お金の教育」悩み相談室』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品は販売終了している場合がございます。
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