「すぐに結果が出ない家事や育児が不安」な営業畑ママに専門家がアドバイス

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「お金ってなんで必要なの?」何気ない子どもの質問に、ドキッとしたことがあるママたちに向けて。社会的金融教育家・田内学さんの連載が復活!今回は、何事も目に見えるフィードバックがないと不安という悩むママの疑問にお答えします。

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元GS、社会的金融教育家・田内 学さんが回答!
ママのための「お金の教育」
悩み相談室

今月の戸惑うママ
Mさん(30代共働き、子どもは0歳10カ月)

2月に長女を出産。育休をあと半年延長するか悩んでいたものの、子どもが1歳になるこの春、職場復帰することを選択。社会人になってからは営業畑を突き進む、自他ともに認める、真面目で責任感が強いママ。

何事も目に見えるフィードバックがないと不安。給与のない育休期間が不安でこの春復帰するのですが…

「お金に対する価値観のタイプ」を把握しておく

田内学さん(以下、田内) 育休を延長するか悩んだ末、4月からの仕事復帰を決めたと伺いました。理由はどんなことだったのでしょう。

Mさん(以下、M) 「会社から支給される給与がゼロ」という状況に耐えられなくなってしまって。育児休業給付金は入るけれど、自分が働いてお金が得られない状況は高校生以来。そんなことないはずなのに、「自分には価値がない…」と、つい思ってしまったんです。そもそも自分で収入をコントロールできないと精神的に不安になるタイプ。だったら仕事して発散して、子どもには一緒の時間に愛情を注いだほうがバランスを取れる、と思って復帰を決めました。

田内 かなりしっかりと自己分析されているんですね。お子さんはこのまま一人と決めているのでしょうか。

M 子どもが生まれて社会の見方がガラリと変わりました。私は30代半ばで出産しましたが、子どもが30歳になる頃に私は何がしてあげられる?私に何かあったら子どもはどうなるの?反対に子どもに何かあって私が働けなくなったらどうすれば?と考えることも。考えすぎ…と分かっているものの、今いる子どもの面倒を見ながら下の子を育てることは、自分にとっては難しいかも、と子どもは一人にしようと思っています。

田内 子育て支援も充実してきていますが、それでもお金に対する不安は強いのでしょうか。

M 知育玩具をたくさん買ったりベビーカーをA型からB型に買い替えたりなど、「こんなにお金がかかるんだ」とは感じています。とはいえ蓄えがないわけではないから、目先のお金の不安はさほど強くありません。それよりも娘が将来何かを選択する時に、お金がないことで問題が起こらないようにしてあげたい気持ちが強いです。もう少し大きくなって性格が見えてきたら、この子は勉強が向いてるとか、運動に向いてるとか、小受と中受どっちにお金を張るべきなのか…とか。

田内 将来のリスクを避けたい、コントロール下に置きたいという気持ちが強いんですね。私もトレーダーだったので、不確実性を避けたいという考え方はよく理解できます。お金に対する考え方は人それぞれですが、自分がどんなタイプか把握しておくことで、多少は不安を和らげることができると思います。実は先日、「お金マインド16タイプ診断」というゲームを作ったんです。理論派か直感派かなど、4軸の組み合わせで「お金の使い方」に対するマインドが分かる診断。ぜひMさんに試してもらえればと思うのですが…。

M (ゲームを試して)…私はマイペース、愛よりもお金が大事、理論派、協力型よりもソロ型、だそうです。確かに愛よりもお金が信頼できると思うし、誰かに頼るのも苦手です…。

田内 どのタイプだからいい悪いという診断ではないので安心してください、どんな診断回答でもいいんです。ただ、16もタイプがあるように、Mさんと成長したお子さんとでお金に対する考え方が違う可能性があることは意識しておくといいかもしれません。Mさんはお子さんの進路や老後を心配してお金を重視しているけれど、お子さんは愛情ある仲間さえいればお金がなくてもいいと考える可能性もあります。古くから伝わる格言として、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」という言い回しがありますよね。学力や稼ぐ力といった分かりやすい能力だけでなく、もう少し幅広く、人との関わり方のような能力を教えてあげることも教育の一環なのではないかと、個人的には考えています。人の心はお金だけで動くわけではないからです。家族だけでなく、職場や友人などとのつながりを通して、互いに助け合いながら成り立っているのが社会。どう愛されるか、仲間を作るかというやり方を教える教育もあると思います。Mさんに限らず、「自分で頑張って稼ぐことで道を切り開いてきた」という経験がある人は、お金を優先して考えてしまうところがあるのかもしれません。でも、仮にもっと人に頼りながら生きるタイプだったら、大切にするものの順番も違っていたのではないでしょうか。世の中にはいろんなタイプの人がいて、自分の子どもとですらお金の価値観が異なるかもしれない。それを意識するだけで、今感じている心配ごとも、少し引いた視点で見られるようになるような気がします。

M すごく腑に落ちました。実は10代後半で、憧れていたモデルの仕事をした経験があって。その後、営業職に就いて、頑張った分だけ結果が出ることに達成感を持つように。そのときの「自分の力で稼いできたこと」が強い成功体験になっていて。周りの協力を得る必要や、お金以外に自分を助けてもらえる存在について、思えば深く考えたことはなかったような気がします。

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具体的な解決法より、不安そのものを
打ち明けるほうが有益なときも

田内 ご自身の頑張りが数字で見えると、心が落ち着くようなところはありますか?

M まさにその通りです。育休中は毎日欠かさず英語のアプリをやっていて「仕事以外にも頑張っていることがある」と思うことで安心していました(笑)。

田内 その考え方はMさんには合っていると思いますよ。金融業界にもそういう人は少なくない。特にトレーダーなんて、どれだけ努力しても結果がマイナスになることがある仕事なので、筋トレをしたり外を走ったりして、頑張りがそのまま成果として見えるものを求めがちです(笑)。実際、それがメンタルの安定につながることも多いんですよね。資格でも語学でもいいのですが、自分の取り組みが少しずつ結果に結びついていると感じられることって、思っている以上に大事なんだと思います。

M 子育ても、通知表がもらえたらもっと頑張れるかも。冗談ですが、全国ママランキングがどこかに掲載されるとか(笑)。育児って、結果が出ないじゃないですか。仮に結婚式で感謝の手紙を読んでもらえて感動するのがゴールだとしても、かなり先が長い。もっと短いフィードバックが欲しい。育児や家事ではフィードバックがないから、結果がすぐ出る仕事に価値を感じてしまうのかもしれません。

田内 子どもの将来を完璧に思い描くことなんて本来は誰にもできないはずなのに、「産んだからには、先々まで考えてあげなくては」と思ってしまうところに、Mさんの誠実さが表れている気が。とはいえ、災害や社会の変化のように、自分ではどうにもできないこともあります。そうした「見えない不安」を何とか形にしたくて、コントロールできるように見えるお金の問題に気持ちが向いてしまうのかもしれません。これはとても自然な反応です。ただ実際には、子どもがどんな道を選ぶかは誰にも分からない。子どもの老後まで人生を背負ってあげることはできません。老後どころか、20歳を過ぎたお子さんに「そのお金の使い方は違うよ」と言うのは現実的ではないですよね。もし自分が親から同じことを言われたら、違和感を覚えるのではないでしょうか。

M 今日ここまで話して、つくづく自分は完璧主義者だと自覚しました。

田内 話してくれたようなお金の不安やお子さんの将来に対する不安は、パートナーには相談できていますか?

M 絶対理解してもらえないと思って、相談していません。実は出産前にもちゃんと論理立ててお金の心配を打ち明けたんですが、「そうなんだ」で終わってしまって…。それ以来、子育て中の同僚など、同じ環境や状況の人じゃないと悩みは共有できない、と思い込んでいたのかも。復帰も決まったので、家事や育児の分担をどうするか、夫とも話し合わないといけないですよね。

田内 そんな実務的なことではなくても、不安そのものを相手に打ち明けてもいい。本当に安心感を生むのは、答えよりも話を聞いてもらうことだったりしませんか?不安な感情をそのまま伝えることで、「そう感じていたんだね」「大変だったね」と、相手の中に共感が生まれる。そこに、実務的な話では得られない距離の近さや支え合いが芽生えると思うんです。

M 私から見れば、田内さんは何もかもが完璧ですが、不安を覚えるようなこともあるんですか?

田内 ありますよ!自分がやっていることが積み上がっているように見えないと、私も不安になります。

M 田内さんでもそんなふうに感じるんですね。そっか、これが共感ですよね!私も一人で抱え込まず、夫に正直な気持ちを打ち明けてみようと思います。

金融教育家の田内学さん
田内 学さん
2001年、東京大学工学部卒業。2003年、同大学院情報理工学系研究科修士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券入社。日本国債、円金利デリバティブ、長期為替などのトレーダーに。2019年に退職後は、子育てのかたわら、金融教育家として講演や執筆活動を行っている。@tauchimnbで経済やお金の情報を発信中。

 


『お金の不安という幻想』
田内 学著 ¥1,650/朝日新聞出版

お金の不安から抜け出すための生存戦略。老後の不安に怯える学生、年収で価値を測る子どもたち。膨らむお金の不安の背景には何があるのか?労働と投資、どちらが報われる?など1万人の声から導き出した不安を希望に変える一冊。

撮影/吉澤健太 イラスト/犬ん子 取材・文/樋口可奈子 編集/中台麻理恵
*VERY2026年2月号『ママのための「お金の教育」悩み相談室』より。
*掲載中の情報は誌面掲載時のもので、変更になっている場合や商品は販売終了している場合がございます。

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