障害を持つ長女の介護経験から【キッズライン】を立ち上げ。創業者・経沢香保子さんが貫いた「子育てと挑戦」の軌跡

結婚・出産を経て、女性が働き続けるのは当たり前の今の時代。内閣総理大臣だって女性だというのに出産や育児、更年期などという理由で、女性が活躍できない、輝けない状況は、まだまだ改善されていません。今回は現状打破を目指し、奮闘する方々にお話をうかがいました。

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経沢香保子さん 53歳
経営者・投資家

女性が輝くには育児支援が必須だから
ベビーシッター文化を広めたい!

経沢さんが「トレンダーズ」を創業したのは’00年。企業のトップが男性ばかりの時代に、女性マーケティングに特化し、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングの先駆けとなりました。「女性の社会進出が進まない中、女性の購買力が重要だということ、また女性に発信力があることを示せたのは意味あることでした」。

一方で、’03年に第一子、’04年に第二子、’08年に第三子を出産。3人の子育てをしながらの会社経営でした。実は、「第一子妊娠中に、子どもに重い障害があることがわかったんです。医師からは生まれてこないか、死産の可能性もあると告げられました。諦める選択もありましたが、せっかく私のところに来てくれたのだから、命ある限りこの子に付き合いたいと、出産を決めました」。

無事出産し、NICUから退院できたのは約半年後ごろ。でも介護が必要で、保育園には入れません。「会社を辞めようと、事業の売却も考えました。でも、なんとか続ける方法はないかと考えた末、ベビーシッターの存在を知ったんです。当時は富裕層向けのサービスしかなく、複数のシッター会社に登録し、高額な料金でシッターさんに来てもらいました。同時に私がいなくても仕事が回るよう、会社の組織も整えていきました。それまでは、強者の論理というか、頑張ればなんでもできると思っていたんです。でも、障害を持つ子どもの親となり、努力してもどうにもならないことが人生では起きるのだと知りました。第二子、第三子は保育園に入れましたが、何人ものシッターさんが家族のように支えてくれました」。

そんな日々を経て’12年、経沢さんは、当事、女性経営者として最年少で上場を果たしたのです。

’14年に社長を退任しましたが、翌年には「キッズライン」を立ち上げました。「この事業を始めたのは、長女の存在が大きかった。長女は4歳まで生きてくれて、楽しい思い出を残してくれました。でも、保育園に入れないし、病児の面倒を見てくれる人もいない。家族だけでは到底難しく、シッターさんが必須でしたが、料金は高額です。当時から、事業が成功した暁には、ベビーシッター文化を日本に広める事業をしたいという思いがずっとあったんです。もし、元気な子だけなら、そこまでは思わなかったかもしれない」。

新会社では、ITを活用し、シッターと利用者が直接マッチングできるシステムを構築。これならシッターの時給は上がり、利用料は低く抑えられます。「Xで『保育園落ちた。日本死ね』の投稿があるなど待機児童問題が深刻な時期で、需要はあると見込んでいましたが、予約はほんの数件」。子育てを人に任せることへの抵抗が根強くあったのです。

そこでビジネスコンテストに挑戦し、優勝を勝ち取ると取材が殺到。認知度が高まり、企業の福利厚生への導入を含め、利用者が急増しました。「最初は、欧米のように気軽にシッターが使えるよう、女子大生や子育て経験者も採用しました。しかし、命を預かる保育事業として安全を最優先と考え、シッターの採用・教育を徹底。有資格者のみの採用に切り替えました。また、補助金の支給を都や国に働きかけ実現し、低料金で誰でもシッターが利用できるようにしました」。

昨年、上場へのステップとして、みんなのマーケットグループの傘下に入り、社長を退任した経沢さん。「命を預かる事業なので、常に気が張っていましたし、発信も控えてきたんです。でも、重責が外れた今、また発信を再開しました。今後も、女性が輝ける社会を実現するため、何ができるかを模索中です」。

飾り気がなくよく笑う経沢さん。次は、女性起業家の上場やM&Aの手伝いをしたい、と。

「キッズライン」社長時代は減らしていた発信をX、note、YouTube等で精力的に再開。
https://www.youtube.com/@KahokoTsunezawa

◯ 編集後記

ライター 秋元恵美

前向きで明るく誠実な人柄。成功の理由がわかりました。社長退任後は肩の荷が下りた様子。家族から「よくがんばったね」と声をかけられたそう。役員には十分な報酬を払う一方、自身の年俸は600万円で、生活費・留学費用は株式投資で賄ったと言います。シッターという新しい文化づくりだからこそ、売上よりも安全対策を最優先したのだと。お会いして、以前にも増して大ファンになりました。

撮影/須藤敬一 取材・文/秋元恵美 ※着用のアイテムは私物です。シャネル ブティックへのお問い合わせはご遠慮ください。※情報は2026年10月号掲載時のものです。

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